介護保険のサービスを利用する際、居住費や食費などの負担がかかります。
そうした中で「負担限度額認定証」という制度があり、介護にかかる費用の負担を抑えることが可能です。
この記事では、介護保険の負担限度額認定証について以下のポイントを解説します。
- 負担限度額認定制度の対象者
- 利用者負担段階と負担限度額
- 負担限度額認定証の申請方法
- 介護保険の負担限度額認定証のポイント
ぜひ本記事を参考に、介護保険サービスにかかる費用の負担を軽減しましょう。
介護保険の負担限度額認定証とは
負担限度額認定証とは、負担限度額認定制度の要件を満たす対象者に交付される証明書のこと。
通常、介護保険施設を利用した際にかかる食費や居住費は自己負担となります。
しかし、一定の要件に該当する場合は「負担限度額認定制度」の対象となり、自己負担額が減額されるのです。
居住する自治体に申請するか、入居している施設を通じて申請することで負担限度額認定証が発行されます。
次に、負担限度額認定証が交付される対象者の要件について解説していきます。
負担限度額認定制度の対象者になる条件
介護保険の負担限度額認定証をもらうためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
- 所得の要件
- 預貯金等の要件
上記の要件をそれぞれ確認していきましょう。
所得の要件
負担限度額認定証の交付要件には、所得の要件として、本人を含めた世帯全員が住民税非課税世帯であることが挙げられます。
住民税は収入を得た人に課税される税金で、一定の収入以下の人は住民税が課されません。
つまり、介護保険の負担限度額認定証および認定制度は、世帯全員の収入が一定以下であるという条件があるのです。
そのため、住民税が課税されている世帯は負担限度額認定証が交付されないことに注意しましょう。
さらに、対象者の資産と所得に応じて基準が設けられており、段階ごとに分類されます。
その分類に応じた金額が支給される仕組みです。
第1段階 | 世帯全員が住民税非課税で生活保護・老齢福祉年金の受給者 |
---|---|
第2段階 | 世帯全員が住民税非課税で合計所得金額と課税年金収入額と 非課税年金収入額の合計が年額80万円以下の人 |
第3段階 1 | 世帯全員が住民税非課税で合計所得金額と課税年金収入額と 非課税年金収入額の合計が年額80万円超120万円以下の人 |
第3段階 2 | 世帯全員が住民税非課税で合計所得金額と課税年金収入額と 非課税年金収入額の合計が年額120万円超の人 |
第4段階 | 上記以外の人 |
預貯金等の要件
負担限度額認定証が交付されるためには、所得以外にも預貯金等の要件も満たす必要があります。
厚生労働省は、2021年8月から介護保険における負担限度額認定制度に関して改正しており、以下の表が最新版です。
単身 | 夫婦 | |
---|---|---|
第1段階 | 1,000万円以下 | 2,000万円以下 |
第2段階 | 650万円以下 | 1,650万円以下 |
第3段階 1 | 550万円以下 | 1,550万円以下 |
第3段階 2 | 500万円以下 | 1,500万円以下 |
この場合の預貯金には銀行に預けている預貯金だけでなく、株式・債券などの有価証券や金・銀などの貴金属、投資信託なども含まれます。
、所得の要件と預貯金の要件を両方満たさないと介護保険の負担限度額認定証の交付を受けられません。
利用者負担段階ごとの負担限度額
所得と預貯金等の条件で分類された段階によって、介護保険施設に支払う限度額は異なります。
まずは減免対象になるサービス施設を確認しましょう。
サービス利用可能施設
どんな施設、どんな介護保険サービスでも負担限度額認定証で減免措置ができるわけではありません。
そこで、介護保険の負担限度額認定証の対象施設について解説します。
負担が軽減される対象施設は以下の通りです。
施設サービス | 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老健)、 介護療養型医療施設 |
---|---|
ショートステイ | 短期入所療養介護、短期入所生活介護 |
そのほか | 地域密着型介護老人福祉施設 |
民間の有料老人ホームは介護保険の負担限度額認定証の適用外
そもそも介護施設と言っても公的な施設と民間の施設に分けられます。
それぞれの特徴は以下の通りです。
公的施設 | 民間施設 | |
---|---|---|
例 | 介護老人福祉施設、介護老人保健施設、 介護療養型医療施設、等 |
有料老人ホーム、グループホーム、 サービス付き高齢者向け住宅、等 |
メリット | 利用料金が安い、負担限度額認定証の優遇あり | サービスが充実している |
デメリット | 人気のため、なかなか入居できない | 利用料金は高め |
このうち民間の施設は、介護保険の負担限度額認定証の対象外です。
介護施設選びの際には十分注意しましょう。
サービス提供施設ごとの負担限度額
介護保険の負担限度額認定証の対象者は、介護施設での居住費および食費の負担が軽減されます。
こちらも2021年8月に厚労省による改正で、食費の負担限度額が見直されました。
所得に応じて決められた段階ごとの居住費および食費の負担限度額最新版は、以下の表の通りです。
利用者の段階 | 居住費の限度額(1日あたり) | 食費の限度額(1日あたり) |
---|---|---|
第1段階 | ユニット型個室:820円 ユニット型個室的多床室:490円 従来型個室:490円(320円) 多床室:0円 |
ショートステイ以外の特定介護サービス:300円 ショートステイ:300円 |
第2段階 | ユニット型個室:820円 ユニット型多床室:490円 従来型個室:490円(420円) 多床室:370円 |
ショートステイ以外の特定介護サービス:390円 ショートステイ:600円 |
第3段階 1 | ユニット型個室:1,310円 ユニット型多床室:1,310円 従来型個室:1,310円(820円) 多床室:370円 |
ショートステイ以外の特定介護サービス:650円 ショートステイ:1,000円 |
第3段階 2 | ユニット型個室:1,310円 ユニット型多床室:1,310円 従来型個室:1,310円(820円) 多床室:370円 |
ショートステイ以外の特定介護サービス:1,360円 ショートステイ:1,300円 |
第4段階 | ユニット型個室:2,006円 ユニット型多床室:1,668円 従来型個室1,668円(1,171円) 多床室:377円(855円) |
1,445円 |
※()内は特別養護老人ホームに入所または短期入所生活介護を利用した場合の金額
上記の限度額を介護費用が上回った場合は、介護保険から支払われる仕組みです。
介護保険の負担限度額認定証の申請方法
介護保険の負担限度額認定証の対象になる場合、申請手続きが必要となります。
ここでは、介護保険の負担限度額認定証の申請に必要な書類と手順について解説します。
提出する書類
負担限度額認定証の交付を申請するためには、一般的に以下の書類が必要となります。
- 介護保険負担限度額認定証申請書
- 預貯金の通帳や有価証券の残高が分かる書類のコピー
- マイナンバー確認書類
- 本人確認書類
介護保険負担限度額認定証申請書は、自治体のホームページからダウンロードするか書類の郵送を依頼することで入手可能です。
自治体によって必要な書類が異なるケースもあるので、あらかじめ自治体の窓口で確認しておきましょう。
申請の手順
介護保険の負担限度額認定証の申請に必要な書類を用意できたら、自治体の介護保険課の担当窓口に提出します。
直接窓口へ書類を持ち込むか郵送するかのいずれかを選びましょう。
また、介護保険施設を利用中の場合は施設の担当者が代理で申請してくれる場合もあります。
自分で申請するのが困難な場合は、施設の担当者に代理申請を頼めないかを確認してみましょう。
負担限度額認定証の申請後はおよそ1週間程度で結果が通知されます。
しかし、提出書類に不備等があると結果が出るまでに時間がかかってしまうため、書類を提出する前にしっかりと確認しておきましょう。
負担限度額認定証を申請するときの注意点
介護保険の負担限度額認定証を申請する際、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 有効期間は1年間、継続したい場合は更新が必要
- 配偶者の所得も合計される
- 不明な点は自治体に相談
それぞれのポイントについて解説していきます。
有効期間は1年間、継続したい場合は更新が必要
介護保険の負担限度額認定証の有効期間は、8月1日から翌年の7月31日の1年間です。
自治体によって対応は異なりますが、一般的には5〜6月頃に更新案内の書類が届きます。
毎年更新が必要となるため、忘れずに更新手続きをしましょう。
また、所得や預貯金等の状況に変化があれば、更新時に利用者負担の段階が変化することもあります。
更新後の通知をよく確認し、利用者負担の段階に変更がないかをチェックしておきましょう。
配偶者の所得も合計、事実婚状態も同様
すでにご紹介した通り、介護保険の負担限度額認定証を受けるためには「世帯全員が住民税非課税」という要件を満たす必要があります。
夫婦で世帯分離をしている場合も、配偶者の所得を合計される点に注意が必要です。
婚姻届を出していない事実婚の状態であっても同様であり、本人と配偶者を含む全員が住民税非課税でなければ、負担限度額認定証の交付対象外。
ただし、一部の例外に該当する場合があり、その際には配偶者の所得は合算されません。
不明な点は自治体に相談
ここまで介護保険の負担限度額認定証について解説してきましたが、まだ分からない点がある人もいるでしょう。
不明点・疑問点がある場合は、自治体の介護保険担当窓口に相談することをおすすめします。
自治体によって介護保険に関する対応が違ったり、負担限度額認定証の申請に必要な書類が異なったりする場合があります。
お住まいの自治体でどういった対応を取るのかを確認するためには、担当窓口での情報が間違いありません。
負担限度額認定証について少しでも分からない点がある方は、お住まいの自治体の介護保険担当窓口に相談してみましょう。
まとめ
介護保険の負担限度額認定証とは、所得や預貯金が少ない人に対して介護保険施設での食費や居住費の負担を軽減する仕組みです。
申請には介護保険負担限度額認定証申請書や本人確認書類などが必要となります。自治体の介護保険担当窓口に確認しながら、申請手続きを進めましょう。
ただし、介護には多額の資金がかかるため、公的な支援では余裕のある生活が難しい可能性もあります。そのため、民間の介護保険に加入して対策しておくことも大切です。
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