「介護保険はいつから始まったんだろうか」
「介護保険の歴史と変遷を知りたい!」
そんな疑問や思いをお持ちではありませんか?日本の保険制度は結構特殊なので、いつから始まったのかなど疑問に思うこともありますよね。
そこで本記事では、介護保険の歴史や変遷について詳しく解説していきます。現代では当たり前になっている介護保険の仕組みがいつから・どのようにして出来上がったのか。早速、本記事の内容を確認していきましょう。
介護保険はいつから始まった?

介護保険は、2000年(平成12年)4月に始まりました。1996年(平成8年)11月に国会へ介護保険法案が提出。その後、約1年にわたって審議され、1999年(平成11)年の12月に可決されたことで介護保険がスタートしたのです。
この介護保険が始まった背景は、「高齢など何らかの理由で支援が必要になった場合でも、できるだけ住み慣れた市町村で生活を続けられるような社会に」という願いが元です。実際に、介護保険の介護サポートのおかげでその願いはある程度叶えられています。
さて、現代にも続く介護保険制度の関連のポイントをまとめると、以下の通りです。
項目 | 内容 |
保険者 | 市町村・特別区 |
被保険者 | ・第1号被保険者:65歳以上 ・第2号被保険者:40歳以上65歳未満の医療保険の加入者 |
保険料 | ・第1号被保険者:市町村が徴収する ・第2号被保険者:医療保険者が保険料を徴収し、一括納付する |
利用方法 | ・介護認定審査会の審査判定結果によって要介護認定・要支援認定が行われ、利用できるサービスや負担割合が決まる ・適用条件を満たし、国民健康保険団体連合会に請求することで保険金が支払われる |
民間の介護保険は公的介護保険より歴史が古い
公的な介護保険は、前述の通り2000年(平成12年)4月から始まったのですが、実は民間の介護保険はこれよりも古くから存在しました。
JA共済総合研究所の「民間介護保険の現状」によると、民間の介護保険は1985年(昭和60年)頃から販売されていました。
公的な介護保険は民間に15年ほど遅れをとって、始まった制度だと言えるでしょう。
介護保険の歴史を振り返ってみよう

2000年(平成12年)4月から始まった介護保険ですが、制度が確立するまでには古い歴史があります。
この章では、公的介護保険制度が成立に至るまでの背景や従来の日本が抱えていた問題に触れながら、介護保険の歴史をチェックしまよう。
介護保険設立の背景
介護保険設立の背景として大きいのは急速に進んだ高齢化です。1990年代以降、日本は諸外国と比較して人口に対する65歳以上の人の割合が増加しています。
厚生労働省老健局によると1990年の総人口は1憶2,361万人でしたが、65歳以上の人口は全体の約12%でした。これは、65歳以上の人口:20~64歳の人口=1人:5.1人であることを意味します。
そして、20年後の2010年には総人口が1憶2,806万人になり、65歳以上の高齢者は全体の約23%にも達します。65歳以上の人口:20~64歳の人口=1人:2.6人となり、若い世代に対して介護保険の被保険者である高齢者がかなり増えていることが分かります。
以上のデータから、要介護者がさらに増えることが予想できます。また、医療技術の発達が目覚ましいことがから全体的に寿命が延び、介護期間が長期化することも容易に考えられるでしょう。
こうした問題を解決するために、従来は別の制度が存在しました。しかし、財政が圧迫されてとん挫する事態になったのです(詳細は後述)。
国の制度によってすべての課題を解消するべく、生まれたのが公的介護保険制度です。
老人医療無料化は頓挫した…
先に少し触れましたが、現代の公的介護保険制度ができあがる前に、高齢者の方に向けた福祉施策として老人医療無料化などが存在しました。
老人医療無料化とは、1960年代に日本共産党によって始まった制度です。その名の通り、高齢者であれば医療費が全額無料になるシステムでした。岩手県の一部地域で始まった取り組みでしたが、その後、東北地方、全国へと徐々に広がっていきます。
しかし、1973年に始まった老人医療無料化は財政負担により1982年に終了します。1990年代にはゴールドプラン・新ゴールドプランなどの高齢者福祉施策がはじまったものの、財源や人材などの課題は解消されませんでした。
参考:ゴールドプラン・新ゴールドプランとは
ゴールドプラン・新ゴールドプランとは、健康な生活を安心して遅れる環境を整えるために政府が作った制度です。
具体的な内容としては、ホームヘルパーやデイサービス施設・在宅介護支援センターなどの目標値を設定しました。その他、市町村における体制整備や健康教室の開催目標の設定なども行われました。
従来の制度の課題をふまえて介護保険制度を開始した
日本が従来抱えていた課題は、以下の3つです。
- 行政が定めた医療福祉サービスしか受けられなかった
- 受けるサービスを自分で選べなかった
- 中高所得者の金銭的負担が大きかった
上記をふまえて、下記のようなかたちで介護保険制度は始まったのです。
- 指定されたものであれば、福祉以外のサービスも受けられる
- 利用者が自由に福祉サービスを選べる
- 所得に関係なく基本的に1割の負担で制度を利用できる(後に改正)
以上が公的介護保険制度ができるまでの歴史です。制度施行後も数回にわたり、内容が編集されているので続けて確認していきましょう。
介護保険の変遷|これまでに5回以上の改正

介護保険はこれまで、およそ3年ごとに制度の見直しが行われてきました。2021年(令和2年)までに実施された改正は全部で5回にも及びます。
- 1回目の改正:2005年(平成17年)
- 2回目の改正:2008年(平成20年)
- 3回目の改正:2011年(平成23年)
- 4回目の改正:2014年(平成26年)
- 5回目の改正:2017年(平成29年)
この章では、これまでに行われた介護保険の改正内容について解説します。
なお、改正と施行には1年のずれが生じることを念頭に置いてください。例えば、公的介護保険制度の改正が2005年に決まった場合、施行は2006年4月になります。
それでは、2000年(平成12年)から始まった公的介護保険制度の改正内容を確認していきましょう。
2005年(平成17年)|1回目の改正
公的介護保険制度の1回目の改正は2005年(平成17年)に決まり、翌年の2006年(平成18年)4月に施行されました。
この改正では、介護保険の対象となる施設給付が見直され、予防給付が新設されることとなりました。
施設給付の見直しでは、介護保険施設などの利用によって発生する食費や居住費が保険の対象外になりました。そのため、介護保険施設などを利用する場合は、食費や居住費を全額自己負担しなければいけません。
また、要支援者に対する給付を「予防給付」とするようになったのも、2005年(平成17年)の改正からです。あわせて、地域包括支援センター(介護予防支援事業所)で要支援者のケアマネジメントを行うことになったり、地域支援事業を実施するようになったりしました。
2008年(平成20年)|2回目の改正
公的介護保険の2回目の改正が決まったのは2008年(平成20年)で、介護事業・サービスの運営を適正化するために業務管理体制の整備などが義務付けられます。
介護事業者本部への立ち入り検査も可能になり、不正事案の再発防止策が強化されました。
2011年(平成23年)|3回目の改正
2011年(平成23年)になると、単身高齢者の増加が顕著になります。これに伴って介護サービスを提供する会社では、人材確保が急務となります。
こうした背景から、市町村の主体的な介護事業への取り組みを推進したり、医療と介護の連携を強化したりしやすいようになど、公的介護保険制度の改正が行われました。
具体的な取り組みの例としては、次のようなものがあります。
- 敵巡回・随時対応型訪問介護看護などの創設
- 市町村判断による介護予防・常生活支援総合事業の実施
- 地域密着型サービスの公募・選考の導入
- サービス付高齢者向け住宅の供給促進
- 介護福祉士、介護職員等によるたんの吸引実施 など
2014年(平成26年)|4回目の改正
2014年(平成26年)には、介護保険事業計画の作成に関する内容が改定されたり、放射線技能法が見直されたりしました。これにより、効率的な地域包括ケアシステムの構築や高品質な医療提供体制の構築が実現したのです。
ちなみに、翌年2015年(平成26年)には、特別養護老人ホームの重点化や予防給付の見直しなどが行われます。
2017年(平成29年)|5回目の改正
5回目の改正となる2017年(平成29年)には、公的介護保険制度の持続可能性を確保するための改正が行われます。
これに加えて、要介護状態の重度化防止や高齢者の自立サポートなどを目的とした取り組み・サービスも追加されました。具体的には、ケアマネジャーやリハビリ職の連携・支援導入などを行うことで、要介護状態の重度化を防止しようとしています。
なお、2020年も公的介護保険制度の改正が行われています。低所得の高齢者の自己負担額の引き上げや介護サービスの月額利用上限金額のアップなどが盛り込まれており、2021年4月から施行されました。
介護保険がいつから始まったのか、まとめ
日本における公的介護保険は、2000年(平成12年)4月から始まった制度です。これまで複数回、改正を重ねてきているのが特徴の1つでもあります。
日本は、将来的にさらなる高齢者の増加が見込まれており、医療技術の進歩によって平均寿命も延びることが予想されます。そのため、今後も公的介護保険制度の改正に注意が必要です。制度の内容をきちんと把握して、介護保険をうまく活用できるようにしておきましょう。
また、公的介護保険だけでなく民間の介護保険に加入して将来の介護に備える人も増えています。老後の備えをお考えの方は、これを機会にぜひ民間の介護保険も検討してみましょう。
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