介護保険制度の運営者と利用者双方の目線で考える課題と問題点

介護保険制度の運営者と利用者双方の目線で考える課題と問題点

介護保険制度の運営者と利用者双方の目線で考える課題と問題点

介護保険

この記事では、高齢者介護についての問題点を運営者から見える問題点、利用者から見える問題点と2面から整理し、介護保険・関連する制度の問題点・課題を解説します。

民間介護保険の活用や、ライフプランを設計する際のヒントになれば幸いです。

高橋朋成

年金アドバイザー / EQプロファイラー / 2級ファイナンシャルプランニング技能士

この記事の監修担当者:株式会社クロックアップ 代表取締役 高橋朋成

20年以上にわたり外資系生保や損保系生保などで、販売現場での営業スタッフの採用や実践を活かした生保販売や育成手法に携わった経験を損保代理店向けに特化してアレンジし2013年に株式会社クロックアップを設立。

業務内容は損保代理店の
専属コンシェルジュとして
① 保険営業職の人材紹介、マッチングサポート
② 損保営業マン向け生保クロスセル研修
③ 代理店M&Aマッチングサポート等
を行っている。

介護保険の財源不足、人手不足の問題点とは?

介護保険の財源不足、人手不足の問題点とは?

介護保険は、平成8年からスタートした制度で、ドイツの介護保険制度を下敷きにして作られた制度です。

キーワードはみんな、といわれるように、「みんなで支えて、みんなで年を取ったらサービスを利用できる制度」として介護保険制度が設計され、40歳以上になると全員で保険料を支払い、65歳になると全員が介護サービスを利用できることとされています。

ところが、最近は、少子高齢化が急速に進行し、大きな介護保険制度の問題点として、給付の増加に伴う財源の不足、そして人手不足の2つが指摘されています。

国民みんなの制度、介護保険制度の見直しは頻繁

財源と人手不足を解決するために、介護保険制度の問題点の指摘・見直し論議は再三再四行われています。

実際に近年では介護保険法の改正は頻繁になっており、3年に1度は大きな改正が行われています。

2018年改正では、利用者の自己負担増(最大3割負担)が行われています。

高齢者が増えて、介護保険による給付のニーズが増える一方で、財源を確保するのが難しい、というのは日本の社会保障制度全体の問題点であり、また、民間企業で指摘される人手不足と同様、介護の担い手も不足しています。

その結果、介護のニーズを満たすだけの人手を確保できず、介護の質、家族の負担などに影響を与えています。

ところで、先進国は全体に、少子高齢化の問題点を多かれ少なかれ抱えていますが、他の先進国ではどのように介護保険あるいはそれに相当する介護サービスを行っているのでしょう。

他の国は介護の財源や、人手の確保をどうしているのか、また、問題点の解決策を知ることは非常に興味深いことので、以下で解説します。

先進国の公的介護サービスはどのように運営されているのか?社会保険か、行政サービスか?

先進国の公的介護サービスはどのように運営されているのか?社会保険か、行政サービスか?

日本の公的介護保険・公的介護サービスは、社会保険・社会保障の一部として構成されています。

主たる財源は保険料で、日本の毎月徴収される介護保険料が主な財源となります(50%)。

ただし、残りのうちのさらに50%は国庫金からの支出であり、全体の25%が税金から賄われるものです。

財源を、保険料とするかどうか、そして社会保障制度の一部かどうかにより整理すると、先進国の公的介護制度はおおむね次の通りです。

介護保険型・・・ドイツ・オランダ

日本と同じような介護保険制度を持つのは、日本のお手本となったドイツや、オランダです。国民皆保険型の介護保険制度を持っています。

日本と異なり、これらの国では、介護保険サービスを受けるのに年齢の区別はないことが特徴です。子ども・障碍者で介護が必要な方も、介護保険のサービスを受けることができます。

いずれの国も、 医療制度が社会保険制度で営まれているので、保険料徴収や運営についても介護保険と医療保険制度とが関連し、連携して行われています。

行政サービス型・・・スウェーデンなどの北欧諸国・イギリス

これに対して、スウェーデン・イギリスは、税金による行政サービスとして公的介護が提供されて、介護保険の制度はありません。

スウェーデンでは、かつて運営主体が医療は県レベ ル、介護は市町村レベルと分断されていました。

また、医療と福祉で自己負担に格差があったことで、自己負担額の安い入院をする方が増えてしまい、介護制度の再編を迫られました。

また、イギリスでは、保守党政権下に、公共支出抑制 とサービス利用者の選択拡大を目的に、民間の サービス事業者の参入が促進されました。

今でも、民間サービス業者の質の向上と、撤退リスクのバランスが議論されています。

個人給付金型・・・フランス

また、フランスは、日本の介護保険制度と異なり、個人に対する給付金で介護のニーズを満たしています。サービスの現物給付ではないところに特徴があります。

日本の民間の保険会社から給付される介護保険と同じような形の現金給付が行われ、財源は、税金です。

民間型・・・アメリカ

アメリカは、そもそも公的介護保険・公共サービスとしての介護サービスがなく、国民の大多数が民間の保険に入って介護のお金を賄い、介護サービスも民間のサービスで賄っています。

アメリカは、先進諸国の中では少子高齢化が緩やかであり、福祉の制度も基本的には非常に規模が小さく、公的介護も一部にしかないので、財源と人手不足の問題に直面していないものです。

少子高齢化が進む先進諸国、どこも問題点・課題あり。日本の解決策は?

少子高齢化が進む先進諸国、どこも問題点・課題あり。日本の解決策は?

財源不足と、人手不足をどう解消するか他の先進国の例を考えてみると、財源に関して、ポイントは、税なのかあるいは介護保険料か、という違いです。

日本の場合、保険料に加え、足りない財源はそもそも税金で補うこととしていて、50%は税金から賄われているのが今の介護サービスです。

また、もしも一時金などの給付を受けたい場合は、民間の保険会社の保険に加入して、現物給付の不足分を補う金銭給付を受ける人が増えている傾向にあります。

財源は、介護保険料の徴収ではなく、税方式の国があります。税収が増えると財源不足は解消されやすいです。

その一方、税金で負担すると国全体の財政を圧迫する可能性がある点、また将来に税収が増えるとは限らない点は、ヨーロッパ諸国の先例があり、問題点として指摘できるでしょう。

また、介護保険制度ではなく、スウェーデン・フランスのような、高い税金にしいておいて、サービスを賄った方がよいという意見は、日本では少数であろうと思われます。

人手、という面では、ヨーロッパ諸国では、ケアワーカーが福祉のシステムの一部として位置づけられていますが、ケアワーカーの地位向上や待遇改善、数の確保が繰り返し問題になってきました。

これに対して、アメリカは移民が安い労働力で介護を支えています。

日本では、介護士は国家資格制である一方で、賃金待遇面からの地位向上も課題になっています

さらに、フィリピン・インドネシアなどのケアワーカーで、国内の介護従事者の不足を補い、解決策としようとしています。

今後若年人口はますます減るばかりですが、日本では、海外からの移民労働力の活用と、そもそもの介護需要を押さえること、その両面から取り組みが見られています。

特に、認知症は、人手が多くかかりがちです。

認知症の予防の取り組みや、軽度の認知症は自立させて生活させるように支援を行うことの方が重要視されるのは人手不足防止の観点から意味のあることと考えられます。

こうして、各国の制度の比較・問題点を考えると、日本は諸外国の制度・ありようも参考にしつつ、介護の需要を健全に抑制する、そして、介護保険財源の確保に努めるという、合理的な取り組みをしていると理解できます。

その一方、公的介護制度はどこの制度を見ても、完ぺきとは言えず、課題・問題点を抱える制度ばかりです。

日本も利用者で目線みると、のちに詳しく問題点を説明しますが、介護ニーズをすべて満たすだけのサービスは供給されていない、と考えられています。

財源・人手の確保の問題をすぐに解決して変えられるとは考えにくい状況があります。

そこで、個人でも介護保険だけに頼らず、どのように備えるかが課題になります。

個人で今後の介護に備えるのにはどうしたらいいのか?

個人で今後の介護に備えるのにはどうしたらいいのか?

財源不足は、どの国でも繰り返し問題になっていますが、介護需要を満たすには、基本的にお金が必要です。

そして、介護保険からの公的な給付は、不足してしまう可能性があります。

不足分は公的な保険に頼るのではなく、自分で民間の介護保険に入る、あるいは、いざとなったら頼れる先をつくる、予防を怠らないなどしておくと、介護に実際にかかる費用を押さえられることが考えられます。

介護にかかるお金を減らす、備えるお金をふやすといった自衛策は、将来に対する安心感を生みます。

また、介護保険の要支援制度は、予防給付と呼ばれ、財源や人手不足緩和の観点から、予防政策・予防給付が現在より重視されるようになってきています。

そこで、個人としても、健康寿命を延ばし、元気でいるための活動をするというのも有効です。そうしておくことにより、お金で備える以上の備えもできる場合があります。

つまり、個人の備えとしては、以下の2点を検討しておくことが必要です。

  • 介護のお金を確保し、介護保険を補う手段
  • 高齢になっても心身ともに健康でいるための具体策

利用者から見える介護保険の問題点・一人暮らし、虐待、介護難民の増加にどう対応する?

利用者から見える介護保険の問題点・一人暮らし、虐待、介護難民の増加にどう対応する?

個人が将来の介護に備えるには、今の介護保険の利用者・利害関係人からの意見・問題点の指摘が参考になります。

高齢者になるとどういうリスクがあるかはよく見えないので、こうした問題点の指摘も踏まえて、将来に備えることが賢明です。

医療者側・介護従事者・家族からの問題点と課題の指摘-利用者と家族・身近な関係者

約10年ほど前の資料ですが、全国保険医連合会がまとめた「介護保険制度の問題点」によると介護保険の問題点は、以下のようにまとめられています。

数は多くないとはいえ、時折介護に関する新聞記事の報道などでも繰り返し取り上げられている問題点を含んでいます。

  1. その人らしい高齢期を認めない「在宅誘導」と虐待
  2. 多くの高齢者は、保険料負担に耐えられない
  3. 介護報酬引き上げが保険料引き上げに連動
  4. 区分支給限度額と利用料負担が必要な介護を制限する
  5. トラブル続出?行政責任の放棄と営利企業参入
  6. 介護保険給付範囲の問題 -家族の負担は減らない
  7. 基盤整備の遅れ
  8. 在宅での一人暮らしの老人、老人のみの世帯、重度認知症の増加と生活・介護の深刻化 ー老老介護問題
  9. 介護報酬全体の低さ

この10年の間に、地域介護事業が進められ、また、施設などの基盤整備はぐっと進んでいます。

しかし、例えば、施設内での高齢者の虐待問題・保険料の負担に耐えられなくなるなどの金銭的な問題・特に認知症の患者さんのご家族に多い介護疲れの問題など、状況によってですが、これらのリスクを抱えることは十分に考えられます。

さらに、例えば介護給付が家族の負担となる家事には給付がない、住宅改造の要件が狭すぎるなどの給付の不足・質の不足に関する声は要支援・要介護のご家族を持った方からよく聞かれるところです。

核家族化の進行で、老老介護問題も深刻なものがあります。

収入に見合った民間介護保険・地域社会とのかかわりのすすめ

収入に見合った民間介護保険・地域社会とのかかわりのすすめ

このように、すべてを介護保険に頼ることはできない、介護保険には課題や問題点も多いとなると、まず備えるべきはお金ですが、介護ニーズを満たす備えを用意するのが難しい場合は保険に頼ることを考えましょう。

この点、民間介護保険の活用が有効な手段となります

現在インターネットでも加入でき、月々数百円から給付を受けることができる介護保険、あるいは共済などの掛け金が低めに抑えられている介護保険が人気になっていますので、加入は気軽に行うことができます。

また、若いころに保険料を払い込むこと、逆に子育てがひと段落着いたらまとめて介護保険料を支払い、保障を受けるようにすることなどを目指した介護保険のファイナンシャルプランニングも盛んです。

より踏み込んだ介護保険商品の検討を必要としますが、よく検討すると大きな安心感が得られることがあります。

それと、健康で長生きする・認知症を予防するという観点から、長期的なライフプランニングをしておくことも有益です。

定年退職後に活動できることや生きがいを持っておくべきことなどは以前から言われていることです。

介護を受けることを想定した場合、健康・認知症予防にもこれらのことが役立つので、より具体的にしておくことが必要ではないでしょうか。

身寄りがない、あるいは、頼れる人が近くにいない不安は、地域社会での暮らしに目を向けることも必要です。

地域には包括ケアセンターなどの介護拠点がありますが、健康なうちに地域参加をしておくことにより、頼れる先・相談先を見つけておくことも必要でしょう。

成年後見人の指定などを行っておき、重要な取引、特に一人暮らしの方などの方の老人ホームへの入居や、家の処分などの際に備えることも状況によっては必要になると考えられます。

FP、司法書士・行政書士、地域の役所、相談機関など、老後に使える頼れる先を確保する観点からも、お住いの地域を観察してライフプランを検討してみませんか。

まとめ

この記事で解説した通り、介護保険には、財源と人手の問題点があります。

また、介護を受ける本人の立場、家族の立場、医療関係者などの身近な専門家の目線からみた、介護保険制度の問題点も多く指摘されます。

これらの問題点に対しては、一人一人の状況に応じて、民間保険や地域社会との結びつきの見直しにより、自分のできることを今考えておくことが必要ととらえることができるでしょう。

この記事を参考に、介護を想定した、ファイナンシャルプランニングと、ライフプランニングに取り組んでみてください。

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