介護保険
介護保険における科学的介護(LIFE)って?概要と利用手順を解説

介護保険におけるlifeとは?概要と利用手順を解説

介護保険におけるlifeとは?概要と利用手順を解説

介護保険制度は介護を必要としている人とその家族を社会全体で支えていく仕組みもの。

しかし、現状は各事業所ごと、利用者ごとにサービス内容が計画され、事業所間での情報の連携が難しくなっています。

介護サービスやケアの質の向上を目的として、2021年4月から厚労省が新たなデータベースを構築しており、このデータベースは科学的介護システム「LIFE」と呼ばれます。

本記事では介護保険制度の概要を含め、この科学的介護システムlifeについて解説します。

介護現場のサービス向上を目的とした新しい取り組みへの理解を深めるとともに、事業者においては科学的介護システムlifeのより積極的な活用が求められています。

※本記事は厚生労働省のホームページを参考に作成しております。

高橋朋成

年金アドバイザー / EQプロファイラー / 2級ファイナンシャルプランニング技能士

この記事の監修担当者:株式会社クロックアップ 代表取締役 高橋朋成

20年以上にわたり外資系生保や損保系生保などで、販売現場での営業スタッフの採用や実践を活かした生保販売や育成手法に携わった経験を損保代理店向けに特化してアレンジし2013年に株式会社クロックアップを設立。

業務内容は損保代理店の
専属コンシェルジュとして
① 保険営業職の人材紹介、マッチングサポート
② 損保営業マン向け生保クロスセル研修
③ 代理店M&Aマッチングサポート等
を行っている。

介護保険についておさらい

介護保険についておさらい

日本には介護を必要とする人々に適切な介護サービスを適用する介護保険制度があります。

介護保険は利用者の尊厳を大切にしながら自立支援を行っており、介護保険の費用は40歳以上が支払う保険料と税金で賄われています。

介護保険制度は65歳以上の高齢者、もしくは40~64歳で厚生労働省が定めた特定の疾病患者が利用でき、それぞれ介護保険の第1号被保険者第2号被保険者と呼ばれます。

介護保険制度によって受けることができるサービスは、居住介護支援や施設サービス、福祉用具に関するサービスなどがあります。

これらのサービスを受けるためには、原則1割の保険料負担が必要で、前年度の所得次第では自己負担率が2割もしくは3割に引き上げられます

介護保険サービスを利用するためには要支援もしくは要介護の認定を受けなければなりません。

そのためには居住する市町村の介護保険担当窓口に問い合わせた上で申請し、日常生活の様子や身体機能がチェックされます。

要支援1・2は予防給付を受けることができ、身体機能の低下を防ぐ目的で訪問介護やデイサービスといったケアを受けることができます。

高齢化がますます進む日本では介護保険制度の利用者も多く、利用者のニーズに応じたきめ細やかな介護サービスが求められています。

科学的介護システムlifeの活用について

科学的介護システムlifeの活用について

厚労省では以前から介護保険制度において各種情報収集システムを運用していましたが、2021年4月より、システムのさらなる一体的な運用を始めるとともに、科学的介護の理解と浸透を図るために科学的介護システムlifeの活用を開始しました。

この科学的介護システムlifeの指針や利用メリットについて、以下で詳しく解説します。

科学的介護システムlifeの指針

厚労省がこれまで管理・運用してきた「通所リハビリテーションデータ収集システム(visit)」と「高齢者の状態やケアの内容等データ収集システム(chase)」が2021年4月1日より、「科学的介護情報システム(life)」として一本化されました。

さらにこの科学的介護システムlifeを利用した厚労省へのデータの提出とそのフィードバックを活用したPDCAサイクルによる介護ケアの質の向上を目的として、2021年度の介護報酬改定で科学的介護システムlifeの活用を算定要件とした加算が新たに設けられました。

つまり、科学的介護システムlifeとは介護保険における新たなデータベースであり、利用者の状態やサービスの内容などの情報を広く集めるchaseと、リハビリ情報に特化したvisitを一本化し、分かりやすさの観点から統一名称に改められます。

なお、lifeとはLong-term care Information system For Evidenceの頭文字が由来となっています。

科学的介護システムlifeができた経緯

先述のように、介護保険制度は利用者の日常生活の世話だけでなく、本人の尊厳を大切にしながら自立した日常生活を送るための支援制度です。

この理念の実現のためには、医療分野と同様に介護分野でも情報やエビデンスを蓄積し、分析して活用されていることが重要です。

そのため2019年に厚労省が「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」を設置し、介護保険に関するサービスや日々のケアの状態を収集・活用するデータベースの構築について議論が始まりました。

この検討会後の2020年5月からchaseの運用がスタートし、全ての介護事業所で利用可能に。

同時にモデル事業所として約650もの事業者が情報を登録し、情報の分析やフィードバック情報の検討を実施。

chaseの運用を経て、2021年4月からchaseとvisitが統合して科学的介護システムlifeに一本化され、全ての介護事業所が利用可能となりました。

科学的介護システムlife利用するメリット

介護の現場では、利用者ごとにさまざまなケアが行われるものの、介護レベルごとの適切なケアを実現するには未だに多くの課題があります。

また、他の事業所のケア内容や取り組みを知る機会も非常に限られており、サービスやケアの実態と介護保険・介護サービス利用者の状態の情報を分析しなければ、ケアの充実度や利用者への影響を相対的に把握することはできません。

今回の改正で一元化されたさまざまな情報を収集することができるようになり、さらに国内の介護事業者が全て対象となるため、介護に関わるいわゆるビッグデータを収集することができるというメリットが生まれます

このような情報やデータを活用することでサービス内容の向上を目的とした分析が可能となります。

科学的介護システムlifeを活用するもう1つのメリットは、介護保険報酬が加算されるという点です。

加算をきっかけに科学的介護システムlifeを活用することによってより効果的なサービスの展開につなげたいという狙いがあります。

科学的介護システムlifeを活用することによる介護保険報酬の加算についてはのちほど詳しく解説します。

LIFEの利用で介護保険報酬が加算される

lifeの利用で介護保険報酬が加算される

2021年4月から本格的な運用が始まったlifeの活用をさらに促進するために、事業者には新たなインセンティブが設けられました。

新たな取り組みは「科学的介護推進体制加算」と呼ばれ、科学的介護システムlifeを活用することで介護保険報酬に加算が発生するという内容です。

この加算が対象となるのは施設系サービスだけでなく、居宅介護支援を含め通所・居住・多機能系のサービスなど多岐にわたります。

加算単位は月に40~60単位で、いずれのサービスも利用者1人ごとに算定・加算されます。

しかし、全てのケースに加算が発生するわけではなく、規定の要件を満たす場合に限定されます。

加算要件は2つに大別することができ、1つ目の要件は全利用者の健康状態に関するデータを科学的介護システムlifeへ送るという内容です。

2つ目の加算要件は科学的介護システムlifeから受け取るフィードバックを現場で十分に活用しなければならないという点です。

介護ケアのあり方を今一度見直してケアプラン内容や各種サービス計画を検証するなど、現場でPDCAサイクルの運用が求められます。

それぞれの加算要件について以下で詳しく解説します。

加算要件1:詳細な情報提供

科学的介護システムlifeを利用することによって介護報酬に加算が発生しますが、加算のためにはさまざまな情報やデータを提供しなくてはなりません。

情報項目としては栄養の状態や口腔機能・嚥下の状態、認知症の進行具合などがあります。

これらの情報を提供する期日は、介護サービスを提供した月の翌月10日までと決められており、事業者はすみやかに必要な項目を入力した上で情報を回付する必要があります。

情報の回付には科学的介護システムlifeのサイトから直接入力し、情報提供を行います。

なお、情報を提供すべき月に適切な入力や処理ができない場合は直ちに届け出る必要があり、この場合は利用者全員の加算が算定されないため注意しましょう

加算要件2:PDCAサイクルの実施

介護報酬の加算のための要件の2つ目は化学的介護システムlifeからのフィードバックなどを十分に活用し、事業所の中でPDCAサイクルを回していかなければならないという点です。

事業者は利用者の自立支援や介護度合いの重度化を防ぐためのケアサービス計画を作成し、さらにその項目を検証して適宜見直すことが求められます。

介護保険におけるPDCAサイクルとは具体的に以下の内容を指します。

Plan(計画)

利用者の健康状態などに関する情報から、適切なケアを行うための「サービス計画」を作成する。

Do(実行)

サービス提供時には、作成した「サービス計画」に基づいて、利用者の自立や重度化を防ぐことを目的としたケアを行う。

Check(評価)

科学的介護システムlifeに提出する情報を活用し、ケアマネをはじめとした現場のさまざまな職種が一緒に介護サービスの内容やケアの充実度合いを検証する。

Action(改善)

Check(評価)の時点で検証した結果に基づき、それぞれの利用者の「サービス計画」の各項目を必要に応じて見直し、事業者全体がクオリティーの高いサービスを提供するよう努める。

事業者は常に上記のサイクルを意識し、提供するケアの内容をより良いものにしていく継続的な努力が求められます。

介護保険におけるlifeを利用するための手引き

介護保険におけるlifeを利用するための手引き

科学的介護システムlifeの運用が始まり、国内のすべての介護事業者が利用の対象とされています。

しかし、システムの利用には申請や登録しなければならず、科学的介護システムlifeの活用には事前にいくつかの作業が必要です。

介護情報システムであるlifeの申請方法や使い方の手順は以下の通りです。

①利用申請とサイトログイン

科学的介護システムlifeの利用には、まずlifeの専用WEBサイトから申請します。

申請元の事業所宛にログインIDやパスワードといった、利用に必要な情報が記載されたはがきが厚労省から届くため、はがきに書かれた項目をもとにサイトにアクセスしてログインします。

なお、通常は毎月25日までに利用申請があったものについては、翌月上旬にははがきが送付されることになっています。余裕を持って申請しましょう。

②ユーザ登録

科学的介護システムlifeのサイトにログインした上でユーザー登録を行います。

介護施設や事業所の管理者情報を「管理ユーザ」として登録し、続いて実際に科学的介護システムlifeへの入力作業を担当する職員情報を「操作職員」として登録します。

③介護保険サービスの利用者登録

ユーザの個人情報登録が完了したあとは、実際に事業所で介護保険サービスを受ける利用者の基本情報の登録が必要です。

登録方法には2種類あり、CSV取り込みによる登録と、入力フォームからの登録があります。

CSV取り込みによる方法の場合、ケア記録データを一度CSV様式に変換してダウンロードし、この情報をパソコンを通じて科学的介護システムlifeに取り込みます。

入力フォームからの登録の場合はサイト上での手入力が必要です。

④様式登録

科学的介護システムlifeにおける「様式登録」とは、サービス計画書などの各種様式の情報、つまり実施したサービス内容や介護保険利用者の状態に関するデータを登録することを指します。

様式登録についても先述の介護保険サービスの利用者登録と同様、2種類の登録方法が用意されています。

なお、不具合が起こった際にはヘルプデスクを利用できるほか、厚労省のlife q&aに過去の問い合わせ事例がまとめられているため参照することが可能です。

まとめ

介護保険によってさまざまなサービスを利用できる一方、生活支援や福祉といった側面が強いため、事業者にとってはどのようなサービスを提供するのかという点が重要となります。

現状は利用者本人の価値観に加え、ケアを担当する人材や環境に重点を置いた介護サービスが多く、サービスの「根拠」部分のエビデンスが不足しているのが実情です。

今回の改正で通所リハビリテーションデータ収集システム(visit)」と「高齢者の状態やケアの内容等データ収集システム(chase)」が一体となり、科学的介護システムlifeが新設されました。

膨大な介護データを元に今後より良いサービス計画を作り、ケアを実践していくために非常に重要なツールです。

高齢化社会がますます進行し、介護保険や介護そのものへのニーズも多様化しています。

科学的な側面から介護保険・介護サービスがさらに充実したものになるよう、科学的介護システムlifeの概要を理解し、積極的な活用が求められています。