先進医療特約は、高度な医療技術を用いる先進医療で治療を行なった際の医療費を保障する特約です。
高額な治療費になりやすい先進医療に対して備えられる点が魅力ですが、「本当に必要なのだろうか」という点をお悩みの方も多いでしょう。
この記事では、医療保険の先進医療特約について以下のポイントを解説します。
- そもそも先進医療とは
- 先進医療特約の保険料や給付内容について
- 医療保険に先進医療特約をつける必要性
- 先進医療特約をつける際の注意点
ぜひ本記事を参考にして、先進医療に加入すべきかどうか判断しましょう。
そもそも先進医療とは
先進医療とは、厚生労働省が承認した高度な医療技術を用いる医療行為のことです。
令和5年2月1日現在で86種類が先進医療として承認されており、代表的な治療法としては「がんの陽子線治療・重粒子線治療」などが挙げられます。
先進医療は公的医療保険制度の対象とはなっておらず、治療を受ける際にかかる技術料は全額を自己負担しなければなりません。
ただし、先進医療にかかる費用のうち、診察代や入院費、投薬代などの通常の医療行為と共通する部分については、公的医療保険によって自己負担割合が1〜3割となります。
また、高度な技術を要する先進医療は技術ごとに一定の基準が設定されています。
どこの医療機関でも治療を受けられるわけではないため注意が必要です。
先進医療特約について
医療保険やがん保険の「先進医療特約」は、先進医療を受けた際に給付金が支給される特約です。
基本保障だけでは先進医療の技術料は保障の対象外になっているため、特約を付加しなければなりません。
ここでは、医療保険やがん保険の先進医療特約の保険料や対象条件、給付内容について解説していきます。
医療保険料
先進医療特約にかかる医療保険料は保険会社によって異なるものの、一般的には月に数百円程度です。
主契約の保険料に数百円を上乗せすることで先進医療特約を付加できるため、そこまで大きな負担にはならないと言えるでしょう。
ただし特約はあくまでも主契約の医療保険に上乗せする保障であるため、先進医療特約だけを契約することはできません。
主契約の保険料と合算すると保険料の負担が大きくなる可能性もあるため、家計とのバランスを考えることが大切です。
対象条件
先進医療特約の給付を受ける際は、以下の条件を満たしていなければなりません。
- 治療の時点で先進医療の認可を受けていること
- 商品が定める保障範囲に該当していること
厚生労働省は先進医療について適宜見直しを行っており、該当していた技術が削除されるケースもあります。
治療を受けた時点で先進医療の認可を受けていない場合は、給付金が受け取れないため注意が必要です。
また、商品が定める保障範囲に該当していない場合も給付金を受け取れません。
例えば、がん保険に付加している先進医療特約の場合、がん治療に関連した先進医療のみ保障の対象になっている可能性があります。
あらかじめ「先進医療の認可を受けている治療方法か」「医療保険・がん保険が定める保障範囲に該当しているか」という点を確認しておくことが重要です。
給付内容
先進医療特約は、一般的に先進医療の技術にかかる費用と同額が給付されます。
例えば、がんの陽子線治療・重粒子線治療に300万円の技術料がかかった場合は、医療保険から300万円の給付金を受け取れる仕組みです。
ただし通算1,000万円〜2,000万円の上限額が定められており、上限を超えた部分は支給されません。
医療保険に先進医療特約を付加する際には、通算の上限額も確かめておきましょう。
医療保険に先進医療特約をつける必要性
医療保険やがん保険に先進医療特約をつけるべきか悩んでいる方も多いでしょう。
手頃な保険料でリスクに備えられるとはいえ、継続して支払っていくと家計への負担になる可能性もあります。
さまざまな要素を考えた上で総合的に判断することが大切です。
ここでは、医療保険に先進医療特約をつける必要性について解説します。
高額な自己負担額
先進医療の技術料は非常に高額になるケースが多いです。
負担する金額が大きくなる傾向にあるため、先進医療特約を活用してリスクに備えておく必要性が高いと考えられます。
中央社会保険医療協議会の「令和4年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」では、先進医療の技術料の総額と年間の実施件数が報告されています。
例えば「陽子線治療」の先進医療総額は3,482,033,800円で、年間実施件数は1,293件でした。
1件あたりの平均額では2,692,988円となり、高額な技術料がかかっていることが分かります。
月々数百円の保険料で高額な治療費に備えられることを考えると、加入の必要性は高いと言えるでしょう。
公的医療保険には先進医療の保障がない
通常、医療機関で支払った医療費は公的医療保険の保障対象となり、医療費総額の1〜3割を自己負担するだけで済みます。
しかし先進医療の技術料は公的医療保険の対象外となっており、全額を自己負担しなければなりません。
例えば、先ほどご紹介した陽子線治療は平均で200万円以上の技術料がかかっており、そのすべてを自分で負担する必要があります。
民間医療保険の先進医療特約を付加していれば、技術料と同額の給付金が支払われるため、技術料が高額であっても支払うことが可能です。
「公的医療保険の対象外である先進医療に対して備えられる」という観点からも、先進医療特約の必要性は高いと言えます。
民間医療保険に先進医療特約をつける際の注意点
医療保険やがん保険に先進医療特約をつける際、以下の4つの点に注意が必要です。
- 上限額
- 保障範囲
- 更新型or終身型
- 医療機関への直接払い
医療保険を契約する前に、それぞれの注意点をよく確認しておきましょう。
上限額
先進医療特約は、先進医療にかかる技術料と同額が給付される特約です。
しかし通算での上限額が定められており、上限に達すると特約は消滅してしまうため事前に確認しておきましょう。
一般的な医療保険では上限額を「1,000万円」「2,000万円」などと定めています。
一度の先進医療では上限に達しなくても、複数回受けていれば上限額を超えてしまう可能性もあります。
手厚い保障を受けたい場合は、通算の上限額が大きい先進医療特約を選びましょう。
保障範囲
先進医療特約の保障対象となる先進医療は、定期的に見直されています。
厚生労働省が先進医療の認定を外した場合は保障の対象とならないため、事前に確認しておきましょう。
また、がん保険に先進医療特約を付加する場合、がん治療に関わる先進医療しか保障されないケースがあります。
保険会社によって保障範囲が異なるため、契約時に確かめておくことが重要です。
なお、医療保険に先進医療特約を付加する場合は、基本的にすべての先進医療が対象となります。
更新型 or 終身型
医療保険・がん保険の先進医療特約には、更新型と終身型の2種類があります。
2つのタイプの特徴を理解し、自分に合った特約を選ぶことが大切です。
更新型は定期的に保障内容が保険料が見直されるタイプです。
状況に応じて保障内容や保険料を見直しできる一方で、更新のタイミングで保険料が上がる可能性もあります。
終身型は保障内容や保険料が一生涯変わらないタイプです。
契約した時点での保険料がずっと継続するため、保険料による支出を把握しやすいことが特徴です。
それぞれのタイプの特徴を踏まえ、どちらのタイプを選ぶか検討しましょう。
なお、「主契約の医療保険が終身型で先進医療特約は定期型」という保険商品もあります。
加入する際には、契約内容をきちんと確かめておきましょう。
医療機関への直接払い
先進医療特約では先進医療の技術料と同額の給付金が受け取れますが、一旦自分で医療機関に医療費を支払った後に給付されるケースもあります。
先に高額な医療費をすべて負担しなければならない可能性があるため、保険会社から直接医療機関に支払うサービスがないか確認しておきましょう。
ただし保険会社からの直接払いには、「保険会社指定の医療機関のみ対応」「特定の医療技術のみ対応」といったケースも少なくありません。
事前に「直接払いに対応している医療機関はどこか」「どの医療技術なら対応してくれるのか」という点もチェックしておきましょう。
記事のまとめ
医療保険やがん保険の先進医療特約は、高度な技術を要する先進医療を受ける際の技術料を保障してくれる特約です。
月数百円程度の保険料で高額な技術料に備えられるため、大きな負担をかけずにリスクに備えることができます。
万が一の際、先進医療特約を契約していれば治療の選択肢は広がります。
本記事でご紹介した注意点などを参考に、ご自身の先進医療への備えを充実させてみてはいかがでしょうか。