精神疾患と診断された場合は医療保険の保障対象?給付金や条件について解説

精神疾患は他人事ではありません、病の一種です。早めに医療保険の準備を!

精神疾患と診断された場合は医療保険の保障対象?給付金や条件について解説

医療保険

大きなストレスがかかりやすい現代社会において、うつ病などの精神疾患を抱えるリスクは誰にでもあります。

精神疾患は長期的な治療になるケースが多く、収入が減少してしまう可能性があるため、医療保険などで備えておくことが大切です。

この記事では、精神疾患の基本的な特徴や治療にかかる費用や公的医療保険制度の保障内容、民間医療保険への加入について解説していきます。

精神疾患にかかるリスクに備えたい方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

高橋朋成

年金アドバイザー / EQプロファイラー / 2級ファイナンシャルプランニング技能士

この記事の監修担当者:株式会社クロックアップ 代表取締役 高橋朋成

20年以上にわたり外資系生保や損保系生保などで、販売現場での営業スタッフの採用や実践を活かした生保販売や育成手法に携わった経験を損保代理店向けに特化してアレンジし2013年に株式会社クロックアップを設立。

業務内容は損保代理店の
専属コンシェルジュとして
① 保険営業職の人材紹介、マッチングサポート
② 損保営業マン向け生保クロスセル研修
③ 代理店M&Aマッチングサポート等
を行っている。

精神疾患とは

精神疾患とは

精神疾患とは、気分の落ち込みや極度な不安、幻聴・幻覚など、心身に影響が出る疾患のことを指します。

発症の原因は分かっていないケースがほとんどであり、医学的にまだまだ解明が進んでいない病気です。

ここでは、精神疾患の病気の種類や治療に必要な費用について解説します。

どんな病気がある?

どんな病気がある?

精神疾患の種類として、主に以下のような病気が挙げられます。

主な
精神疾患
一般的な症状
うつ病 気分の落ち込みや不眠、体のだるさ、食欲不振などの症状が見られる。
双極性障害 気分が激しく落ち込む「抑うつ状態」と、気分が極度に高揚して精力的に活動するようになる「躁状態」を繰り返す症状が見られる。
統合失調症 幻覚・妄想などの陽性症状や、意欲・集中力の低下などの陰性症状が見られる。
適応障害 進学・就職などによる環境の大きな変化に馴染めないストレスから、抑うつ・不安感などの症状が見られる。
てんかん 何らかの原因によって脳の一部が過剰に興奮することで、けいれんや意識の喪失などの発作が起きるといった症状が見られる。

ただし、人によって上記の症状とは異なるケースがあります。

治療に必要な費用

治療に必要な費用

精神疾患によって心療内科や精神科に通院する場合であっても、極端に医療費が高額になるわけではありません。

公的医療保険制度の適用が受けられるため、医療機関の窓口で支払う医療費は初診で3,000円前後、2回目以降で2,000〜3,000円ほどとなります。

また、精神疾患で入院する場合の自己負担額は約20〜30万円です。

加えて食事代や入院時の差額ベッド代などもかかるため、30万円以上かかるケースもあります。

公的医療保険制度で受け取れる助成金等

公的医療保険制度で受け取れる助成金等

公的医療保険制度では、精神疾患になった場合に受け取れる助成金などがあります。

ここでは、以下の制度について解説していきます。

紹介する公的医療保険制度

  • 自立支援医療(精神通院医療費の公費負担)
  • 高額療養費制度
  • 重度心身障がい者医療費助成制度
  • 傷病手当金
  • 労災(療養保障給付)

それぞれの内容を確認しておきましょう。

自立支援医療(精神通院医療費の公費負担)

自立支援医療(精神通院医療費の公費負担)

自立支援医療(精神通院医療費の公費負担)は、精神疾患の治療にかかる費用の自己負担を軽減する保障制度です。

通常の公的医療保険では医療費の自己負担割合が3割ですが、自立支援医療の制度では原則1割の自己負担となります。

さらに世帯所得に応じた月額負担上限額を超えた部分は公費で負担されるため、上限額以上の医療費を支払う必要がありません。

自立支援医療の対象となる精神疾患は以下の通りです。

自立支援医療の対象となる精神疾患

  • 病状性を含む器質性精神障害
  • 精神作用物質使用による精神及び行動の障害
  • 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
  • 気分障害
  • てんかん
  • 神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害
  • 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群
  • 成人の人格及び行動の障害
  • 精神遅滞
  • 心理的発達の障害
  • 小児期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害

上記の精神疾患に該当する場合は市区町村の障害福祉課などに申請を行い、医療費の負担を軽減しましょう。

高額療養費制度

高額療養費制度

高額療養費制度は、1ヶ月の間に医療機関や薬局などで支払った医療費が一定額を超えた場合、超えた部分が還付される制度です。

年齢や所得に応じて上限額が設定され、上限額を超える医療費を支払った場合に申請をすると、払い戻しを受けられる仕組みです。

例えば、自己負担額の上限が10万円の方が1ヶ月で20万円の医療費を支払った場合、自己負担額を超えた10万円が払い戻されます。

1ヶ月あたりの医療費負担が過度に大きくならないような仕組みが設けられているため、安心して精神疾患の治療に専念することができます。

重度心身障がい者医療費助成制度

重度心身障がい者医療費助成制度

重度心身障がい者医療費助成制度は、障害のある方が医療機関を受診した場合の自己負担額が助成される制度です。

都道府県と市区町村が実施している制度であり、社会保険や国民健康保険などに加入していることが条件になります。

助成の対象になるのは、公的医療保険の適用となる医療費・薬剤費などです。

一方で、入院時の食事代や差額ベッド代などの公的医療保険の適用対象外になる費用は、助成の対象にならないため注意が必要です。

傷病手当金

傷病手当金

傷病手当金はケガや病気によって仕事を休むこととなり、勤務先からの給与が十分に支払われないときに手当を受け取れる制度です。

うつ病などの精神疾患による休業も傷病手当金の対象になります。

傷病手当金が支給されるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 業務外の事由による病気やケガで仕事を休業していること
  • 仕事に就くことができないこと
  • 連続した3日間の休職日があること
  • 勤務先から給与が支払われない、または傷病手当金額以下に減額されていること

傷病手当金は連続3日間休んだ後の4日目の休業から支給の対象となり、支給開始日から最長1年6ヶ月まで支給されます。

精神疾患により長期間仕事ができない場合であっても、手当を受け取りながら治療に専念することができます。

ただし、国民健康保険の被保険者は傷病手当金制度を利用できないため注意が必要です。

労災(療養補償給付)

労災(療養補償給付)

労災保険の療養補償給付は、業務中に発生したケガや病気の治療にかかる費用を補償する制度です。

うつ病などの精神疾患の場合も、業務を原因として発症したと認定されれば給付の対象となります。

療養補償給付では、労災保険指定の医療保険で自己負担なく治療を受けることが可能です。

また、労災保険指定ではない医療機関で治療を受けた場合でも、窓口で費用を全額支払った後にその額を請求すれば現金が支給されます。

ただし、精神疾患が業務を原因として発症したことを証明することは難しく、労災認定されない場合もあります。

精神疾患による労災認定の手続きを進めたい場合は、専門家の社労士などに相談しましょう。

民間の医療保険は適用されるのか

民間の医療保険は適用されるのか

ここまで解説してきた通り、精神疾患を発症した場合は公的医療保険制度でさまざまな給付を受けることができます。

しかし公的医療保険制度だけでカバーできない部分については、民間の医療保険の活用が必要です。

ここでは、精神疾患に対して民間の医療保険で備える必要性や、精神疾患と診断されてからでも加入できる保険について解説します。

精神疾患に備える必要性

精神疾患に備える必要性

精神疾患を通院治療する場合、前述した「自立支援医療(精神通院医療費の公費負担)」によって十分な保障を受けられます。

しかし精神疾患が重症化すると入院するケースが多く、治療費の負担が大きくなってしまう可能性があります。

厚生労働省の「病院報告」によると、令和3年の精神病床の平均在院日数は275.1日でした。

全病床の平均が27.5日であるため、精神病床の在院日数が非常に長いことが分かります。

入院日数が長くなると、期間中の収入減少のリスクだけでなく、差額ベッド代や食費などの負担が大きくなる可能性が高くなります。

入院が長引くケースに備え、民間の医療保険を活用することが重要です。

出典:厚生労働省・病院報告

医療保険で備えられる

医療保険で備えられる

民間の生命保険会社が提供している医療保険は、うつ病などの精神疾患も保障の対象となります。

入院・通院にかかる費用に対して保険金が支払われるため、安心して治療に専念できます。

ただし、下記のいずれかに該当する場合は精神疾患を発症しても保険金が支払われません。

  • 告知義務違反に該当する場合
  • 保険の責任開始日よりも前に発症した場合
  • 定められた給付回数の上限に達している場合

医療保険を契約して精神疾患に備えたい場合は、上記に該当していないか確認しておきましょう。

発症・診断されてからでも加入できる保険とは

発症・診断されてからでも加入できる保険とは

すでに精神疾患を発症しており、診断を受けている場合は通常の医療保険に入れない可能性が高くなります。

精神疾患が悪化して入院になる可能性が高いだけでなく、生活習慣病のリスクも健康な人と比べて高まるためです。

しかし「引受基準緩和型」の医療保険であれば、精神疾患があっても入れる可能性があります。

引受基準緩和型とは、3〜5つ程度の簡単な告知項目に該当しなければ精神疾患のある人でも入れる医療保険です。

通常の医療保険に加入できない状態の人でも入りやすく、すでに抱えている疾患が悪化した場合でも保障されるケースがあります。

ただし通常の医療保険に比べて保険料が割高に設定されていることが多いため、家計への負担を考えることが重要です。

また、引受基準緩和型だからといって誰でも加入できるわけではない点にも注意しましょう。

まとめ:精神疾患は誰でもなる可能性がある

まとめ:精神疾患は誰でもなる可能性がある

大きなストレスを抱えやすい現代社会において、メンタルへの影響は大きく、精神疾患は誰でも発症する可能性がある病気です。

まずは公的医療保険制度で保障される内容をしっかりと把握することが大切です。

また、精神疾患は入院日数が長期化しやすいことが特徴の病気です。

入院期間中の食費や差額ベッド代に備えるためにも、民間医療保険の活用も視野に入れておくことをおすすめします。

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