加齢だけでなく、病気やケガを理由にたくさんの人がリハビリを利用しています。 外来リハビリはこれまで医療保険の対象でしたが、平成31年4月から、一部のリハビリは介護保険の対象になったことをご存知でしょうか?
本記事では外来リハビリの概要を踏まえ、外来リハビリの一部が医療保険で終了し、介護保険に移行した経緯や介護保険による外来リハビリサービスについて詳しく解説します。
外来リハビリを利用する際に慌てることのないよう、制度の改正内容や今後の対応を正しく理解しましょう。
外来リハビリ(リハビリテーション)とは
リハビリ(リハビリテーション)の語源は「自分らしく生きること」「これまで通りの社会生活を取り戻すこと」です。
そのため、この目的を達成するために実施される全ての活動がリハビリと呼ばれます。
具体的には疾患やけが、高齢化や障がいにより、必要な身体機能が低下してしまった人に対し、運動をするための身体機能の改善、維持のために治療を施します。
外来リハビリの役割と特徴
外来リハビリとは、自宅で生活を送りながらも通院が可能な患者に対して提供されるリハビリのことです。
また、外来リハビリは専門知識が必要なため、作業療養士や言語聴覚士、理学療法士といった有資格者がリハビリテーションスタッフとして担当します。
場合によっては医師や家族、ボランティアとも連携を取りながら、時間をかけて実施されるのも外来リハビリの特徴です。
外来リハビリの利用には時間・日数の期限がある
これまでは、医療保険における外来リハビリを利用する場合、発症した疾患や経過日数によって、利用できるリハビリの時間や日数に期限がありました。
この制限日数を標準的算定日数といい、発症した疾患によって、以下のように異なります。
対象疾患 | 標準的算定日数 | |
---|---|---|
心大血管疾患 リハビリテーション |
急性心筋梗塞、狭心症、 開心術後、大血管疾患、等 |
150日 |
脳血管疾患等 リハビリテーション |
脳梗塞、脳腫瘍、脊髄損傷、 パーキンソン病、高次脳機能障害、等 |
180日 |
廃用症候群 リハビリテーション |
急性疾患等に伴う安静による廃用症候群 | 120日 |
運動器 リハビリテーション |
上・下肢の複合損傷、脊髄損傷による四肢麻痺、 運動器の悪性腫瘍、等 |
150日 |
呼吸器 リハビリテーション |
肺炎・無気肺、入腫瘍、肺塞栓、 慢性閉塞性肺疾患であって重症度分類Ⅱ以上の状態、等 |
90日 |
そのため、月に限られた時間しか外来リハビリを受けることができない制限が存在していたのです。
医療保険と介護保険のリハビリの違い
医療保険におけるリハビリと、介護保険におけるリハビリでは報酬体系などが異なるため、双方を単純に比較することは難しいです。
しかし、外来リハビリの利用者視点から考えると、従来の医療保険の外来リハビリのほうが手厚いという声もあります。
医療保険におけるリハビリと介護保険におけるリハビリの違いを以下で解説します。
医療保険でのリハビリ
傷病を発症直後の外来リハビリは、医療保険に含まれます。
外来(通院)や入院など病院で行われるリハビリは医療保険が適用され、リハビリを受ける日数制限が設けられている点が特徴です。
病院には理学療法士をはじめ、有資格者のリハビリテーションスタッフが多数勤務しているため充実した内容のリハビリが受けられるというメリットがあります。
一方で、標準的算定日数が設定されているため、長期間にわたるリハビリが難しいというデメリットも。
介護保険でのリハビリ
リハビリ利用時に介護保険が適用されるには介護認定を受けている必要があります。
もしくは、医療保険での外来リハビリなどを受けられなくなった人がその後介護認定を受けて利用する場合も。
介護保険のリハビリには、自宅から所定の施設に通って利用する通所型のリハビリと、自宅で行う訪問型のリハビリがあります。
他にも施設に短期間入所してリハビリを受けることもでき、利用者の状況に応じて、適切な場所でリハビリを受けることが可能です。
医療保険と違い、介護保険でのリハビリは病気や発症からの期間に制限がありません。
リハビリを必要としている場合は、等しくリハビリサービスを受けることができます。
そのため、長期のリハビリは介護保険のほうが向いていると言えるでしょう。
しかし、介護保険におけるリハビリは、医療保険での外来リハビリと比べると、有資格者のリハビリテーションスタッフが少ないというデメリットがあるのです。
医療保険と介護保険のリハビリは併用可能?
なお、医療保険と介護保険のリハビリは厚生労働省の規定により併用することができません。
リハビリを利用したい場合は、介護保険におけるサービスとして利用することが優先です。
しかし、民間の保険を活用することで併用が可能になる場合もあります。
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外来リハビリ移行の経緯と対象について
平成31年3月をもって、要介護認定者の医療保険の外来リハビリを終了し、介護保険サービス内のリハビリに完全移行する案内がありました。
ここでは移行経緯と改定内容について解説します。
介護保険に移行した経緯
平成31年4月からは外来リハビリの利用条件が変更され、従来の外来リハビリを終了、介護保険に移行し、介護保険における介護サービスとして外来リハビリを行うようにと、厚生労働省から通知がありました。
もともと、医療保険と介護保険の両方から維持期・生活期の外来リハビリサービスの提供がされており、提供する目的もかぶっていました。
そのため、介護保険給付に移行すべきであるとかなり前から言われていたのです。
国は、以前から要介護者等へのリハビリを医療保険給付から介護保険給付に移行するための政策を進めており、平成31年4月をもって完了したことになります。
この政策は、医療保険と介護保険のリハビリの円滑な移行を推進する観点から、医療保険と介護保険のリハビリを1つの医療機関で実施することを目的として実施されました。
介護保険への移行対象者
医療保険における外来リハビリが、介護保険のリハビリサービスに移行されると解説してきましたが、すべての外来リハビリが移行されるわけではありません。
まず前提として、治療期間は急性期、回復期、維持期・生活期の3段階に分かれています。
仮に何らかの病気を発症した場合、発症直後の診断と治療が必要な期間を急性期と呼びます。 その後、入院や外来を利用しながら容態の安定化を図るこの時期が回復期。
急性期や回復期は心身機能の改善を目的としており、早期かつ集中的なリハビリが実施されます。
回復期のあとは維持期・生活期と呼ばれ、心身機能や生活機能の維持・向上、自立生活の促進を目的としたリハビリが実施されます。
介護保険における外来リハビリはこの維持期・生活期を対象としており、急性期や回復期のリハビリは従来通り医療保険の対象です。
さらに対象となる疾患別リハビリテーションは以下の3種類。
- 脳血管疾患リハビリテーション
- 廃用症候群リハビリテーション
- 運動器リハビリテーション
また、移行対象となるのは、要介護認定をされている人。
そのため、介護保険の加入年齢に達していない方や要介護認定を受けていない方は、維持期・生活期も医療保険における外来リハビリを利用します。
外来リハビリ(医療保険) | リハビリ(介護保険) | |
---|---|---|
40歳未満 | 〇 | ✕ |
要介護認定をされていない40歳以上 | 〇 | ✕ |
要介護認定をされている40歳以上 | ✕ | 〇 |
例外基準となる場合
維持期・生活期の外来リハビリが介護保険に移行しましたが、中には例外基準もあります。
例えば医師が「医療保険における外来リハビリが必要」と判断した場合や、「外傷性の肩関節腱板損傷」「高次脳機能障害」といった傷病の場合は、医療保険における外来リハビリを利用することが可能。
このような例外基準も設定されているため、維持期・生活期における全ての外来リハビリが介護保険に移行するのではなく、個別の症状や状態次第では従来通り医療保険の外来リハビリを利用できる可能性がある点は覚えておく必要があります。
移行期間は月7単位まで算定可能に
維持期・生活期における外来リハビリが、医療保険から介護保険に移行したことを受けて、これまで医療保険の外来リハビリを受けてきた施設を利用することができなくなる場合もあります。
この場合、別の施設で介護保険におけるリハビリを受けなければならないため、申請などの手続きをするための準備期間が必要ですよね
国は、医療保険から介護保険へスムーズに移行できるように、移行期間を設けました。
移行期間中に、外来リハビリ利用者、医療機関、提供事業者やケアマネージャーなど、関連する人たちが行うべきことについて対応を示しています。
利用者が移行期間中にしっかりと手続きを進めた場合は、翌々月までは一カ月に7単位まで算定することが可能。
移行期間中に医療機関は、各リハビリ提供機関にリハビリテーション継続の指示をする必要があることが示されています。
また、リハビリテーション提供機関も、医療機関・ケアマネージャー・介護保険のリハビリ担当者と連携し、患者のケアプランを再検討をすることを促しています。
移行期間をしっかりと設けたため、医療保険の外来リハビリを介護保険サービスへ完全移行することが実現しました。
介護保険におけるリハビリのサービス内容は?
介護保険におけるリハビリは、通所型もしくは訪問型です。
それぞれの特徴を理解し、介護保険におけるリハビリを利用する際の参考にしましょう。
通所リハビリ
介護保険における通所リハビリは、要支援・要介護認定者に専門的なリハビリサービスを所定の施設で提供します。
具体的な施設は、介護老人保健施設、病院、診療所です。
心身機能の回復を図りながら日常生活の自立をサポートするために理学療法や作業療法などの治療が日帰りで実施されます。
通所リハビリを利用する人は年々増えており、要支援1から要介護5までさまざまな介護レベルの人が利用可能。
利用者の負担額は、施設規模や所要時間によって設定され、食費やおむつ代などは別途自己負担が発生する可能性があります。
訪問リハビリ
通所リハビリを提供している施設に通うことができない場合や、住み慣れた自宅でのリハビリを希望する場合は、訪問リハビリを利用します。
理学療法士や作業療法士が自宅を訪問し、歩行練習やトイレ動作、入浴、外出練習など、日常生活に直結する動きを積極的に取り入れ、参加するためのサポートや働きかけを行います。
通所リハビリと違い、要介護者等が実際に暮らす自宅にてリハビリを行うため、より過ごしやすい自宅を実現するために、リハビリを通して家族の介助方法や自宅の環境設定などのアドバイスを受けることが可能です。
また、福祉用具の提案もしてもらえるなど、要介護者の心身の状態に合わせ、自宅で長く暮らせるよう、居宅介護のサポートしてくれるのが訪問リハビリの特徴と言えます。
記事まとめ
要介護者等の維持期・生活期におけるリハビリが、医療保険から介護保険に完全移行しました。
介護保険への移行開始に伴い、これまでとは別の施設でのリハビリを余儀なくされることもあり、さまざまな傷病を理由に外来リハビリを利用する際には注意が必要です。
平成31年4月の制度改正によって、外来リハビリを取り巻く環境が大きく変わりました。
現在外来リハビリを利用している人はもちろんのこと、さまざまな理由でリハビリが必要になることを考え、この機会に医療保険・介護保険における外来リハビリへの理解を深めましょう。
公的制度以外に民間の保険に加入することで出費を抑えて、より充実した介護サービスを利用することができる可能性があります。
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