日本には、国民皆保険制度(公的医療保険)があります。
このため、医療機関を受診する際に健康保険証を窓口に提示するだけで、医療費の自己負担額が軽減されます。
自己負担する金額は、被保険者の年齢や所得によって異なることをご存じでしょうか。
本記事では、公的医療保険における自己負担割合について解説します。
記事の後半では、自分で負担しなければいけない医療費を抑えるための方法も紹介するので、役立てください。
公的医療保険は年齢・所得を基準に自己負担割合が決められている
公的医療保険とは、日本国民全員が加入している国の医療保険です。
医療機関を受診した際に、公的医療保険の健康保険証を提示することで医療費の自己負担額が少なくなります。
自己負担割合は年齢や所得によって異なるので、以下で確認してみましょう。
区分 | 自己負担割合 |
---|---|
6歳以上~70歳未満 | 3割 |
70歳~74歳 | 2割 ※現役並み所得者:3割 |
75歳以上 | 1割 ※現役並み所得者:3割 |
6歳未満 | 2割 |
6歳以上70歳未満の自己負担割合
公的料保険の被保険者が6歳以上70歳未満である場合は、所得にかかわらず、医療費の負担割合は3割になります。
例えば、医療機関を受診して1,000円の医療費がかかった際、支払う金額は300円です。
70歳以上75歳未満の自己負担割合
70歳以上75歳未満になると、原則医療費の自己負担割合が少なくなります。
70歳未満の自己負担割合は3割でしたが、70歳以上になると2割になる仕組みです。
健康保険とあわせて、健康保険高齢受給者証を医療機関へ提示することで医療費の自己負担割合が軽減されます。
ただし、公的医療保険の被保険者が70歳以上75歳未満であっても、年収がおよそ370万円以上ある場合は現役並み所得があると判断されるため、自己負担割合は3割のまま変わりません。
75歳以上の自己負担割合
公的医療保険の被保険者が75歳以上になると、後期高齢者医療制度に移行されます。
新たに交付される後期高齢者医療被保険者証と健康保険証をあわせて医療機関へ提示することで、医療費の自己負担割合は1割になる仕組みです。
ただし、年収がおよそ370万円以上ある場合は現役並み所得があると判断されるため、自己負担割合は3割のまま変わりません。
6歳未満の自己負担割合
公的医療保険の被保険者が6歳未満で、義務教育就学前である場合、医療費の自己負担割合は2割となります。
医療費の自己負担額が高額になった場合は「高額療養費制度」の対象になる可能性あり
公的医療保険が適用される治療であれば、医療費を全額自己負担しなくてすみます。
しかし、いくら負担割合が定められているといっても、体の調子が悪かったり、収入が落ちたりなどすると、家計に占める医療費の負担が大きくなってしまうこともあるでしょう。
こうした状況を回避するために用意されているのが、「高額療養費制度」です。
高額療養費制度とは、1カ月のうちに自己負担した医療費について後から払い戻しを受けられる制度です。
払い戻される金額は公的医療保険の被保険者の年齢や年収を元に、月単位の上限額が決められています。
こちらは次項の表で確認してみましょう。
自己負担した医療費の一部を払い戻してもらえる高額療養費制度ですが、治療にかかったすべての費用が対象になるわけではありません。
例えば、入院時にかかる差額ベッド代や食事費用など、保険診療外の費用は適用外になるため注意してください。
なお、入院時の食事費用は別の制度(入院時食事療養費制度)が設けられているのであわせて確認してみましょう。
出典:入院時食事療養費|全国健康保険協会 協会けんぽ, 入院時食事療養費・入院時生活療養費|東京都福祉保健局
参考:高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)|全国健康保険協会 協会けんぽ
70歳未満における高額療養費制度の上限額
70歳未満における高額療養費制度の上限額は、下表のとおりです。
所得区分 | 月単位の上限額(円) | 多数該当 |
---|---|---|
標準報酬月額83万円以上、 報酬月額81万円以上の方 |
252,600円+(医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
標準報酬月額53万〜79万円、 報酬月額51万5千円以上〜81万円未満 |
167,400円+(医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
標準報酬月額28万〜50万円、 報酬月額27万円以上〜51万5千円未満 |
80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
標準報酬月額26万円以下、 報酬月額27万円未満 |
57,600円 | 44,400円 |
被保険者が市区町村民税 の非課税者 |
35,400円 | 24,600円 |
表中の「多数該当」とは、療養を受けた月を含めた以前の1年間に、3カ月以上の高額療養費の支給を受けた場合が該当します。
4カ月目から多数該当となり、自己負担しなければいけない金額がさらに減額される仕組みです。
70歳以上における高額療養費制度の上限額
70歳以上における高額療養費制度の上限額は、下表のとおりです。
所得区分 | 月単位の上限額(円) | 多数該当 |
---|---|---|
現役並み所得者Ⅲ (標準報酬月額83万円以上で高齢受給者証の負担割合が3割) |
252,600円+(総医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
現役並み所得者Ⅱ (標準報酬月額53万〜79万円で高齢受給者証の負担割合が3割) |
167,400円+(総医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
現役並み所得者Ⅰ (標準報酬月額28万〜50万円で高齢受給者証の負担割合が3割) |
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
一般所得者 | 外来(個人):18,000円、 外来・入院(世帯):57,600円 |
- |
低所得者 | 8,000円 | 住民税非課税者:24,600円、 世帯収入から必要経費・控除額を差し引いた場合に所得がない方:15,000円 |
自己負担割合を抑えたいなら、民間の医療保険への加入がおすすめ
公的医療保険の被保険者であれば、医療費を全額負担する必要がありません。月の自己負担額が多くなっても、高額療養費制度を利用することで医療費を抑えることができます。
しかし、病気やケガの治療にかかる費用すべてに対して公的医療保険が適用されるわけではありません。
先に少し触れましたが、次のような費用は公的医療保険・高額療養費制度の対象外となります。
- 入院中にかかる住居費
- 入院中にかかる食事代
- 入院中にかかる日用品代
- 差額ベッド代
- 先進医療にかかる費用
- 美容整形手術、自由診療
- 正常分娩の出産費用 など
こうした費用は公的医療保険が適用されないため、自分たちでまかなわなければいけません。
貯蓄が十分にあれば問題ありませんが、病気やケガはいつなるか誰がなるか分からないものです。
このリスクに備える方法として、民間の保険会社が販売する医療保険への加入があります。
民間の医療保険へ加入するメリット
民間の医療保険は公的医療保険と比べて、保障の範囲が幅広いです。特約で保障内容をカスタマイズすることも可能で、より広いリスクに対応することができます。
毎月自動で保険料が引き落とされるため、自分で将来のために貯金することが苦手な人でも安心です。
年齢的に貯金が十分にできていないタイミングで、ケガ・病気になっても民間の医療保険に加入しておけば治療に必要な金額を受け取ることができます。
また、医療保険料には年末調整や確定申告の際に、生命保険料控除が適用されます。
生命保険料控除とは、医療保険に対して支払った保険料の一部が控除される制度です(医療保険は介護保険料控除に分類される)。
結果的に、住民税や所得税の節税につながるため、家計に対する費用の負担割合を減らすことが可能です。
民間の医療保険へ加入するデメリット
民間の医療保険にはさまざまなメリットがありますが、デメリットも存在します。
まず、医療保険に加入するためには、毎月保険料を支払う必要があります。
自分や家族がケガや病気をしなくても保険料はかかってくるため、万が一に備えるための費用ではありますが、人によっては無駄に感じてしまうかもしれません。
また、被保険者の健康状態によっては、希望する医療保険に加入できない可能性があります。
これは医療保険に加入する際、健康状態に関する告知を行う必要があるからです。
過去に大病を患っていたり、健康診断で医師から何らかの指摘を受けていたりなどすると、加入を断られることがあるため注意しましょう。
ただし、告知内容が限定された引受基準緩和型医療保険や無選択型医療保険に加入する選択肢もあります。
まとめ
公的医療保険の被保険者は、年齢や所得に応じて医療費の負担割合が異なります。
基本となる負担割合は3割ですが、被保険者の状況によって異なることを覚えておきましょう。
公的医療保険の保障だけでは家計に占める医療費の負担が大きい、という場合もめずらしくありません。
こうした場合は、民間の保険会社が販売する医療保険への加入を検討してみましょう。
すでに加入している場合は、この機会に保険を見直すことをおすすめします。
保険のぷろでは医療保険をはじめとする保険の見直し・見積もりをサポートしています。
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