人工授精や体外受精などの不妊治療は高額な医療費がかかるケースがあります。
「公的医療保険制度や民間の医療保険の保障対象になるのだろうか」と不安を抱えている方も多いでしょう。
この記事では、不妊治療にかかる費用の目安や公的医療保険制度の取り組み内容、民間の医療保険について解説します。
「不妊治療に備えたい」と考えている方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
不妊治療について
不妊治療は、妊娠や出産を希望しているにもかかわらず、妊娠の兆候が見られない夫婦・カップルに対して行う治療です。
不妊の原因を探る検査や排卵日の予測、人工授精・体外受精などを行い、妊娠の可能性を高めようとする治療のことを指します。
ここでは、不妊治療の治療内容とかかる費用の目安について解説します。
治療内容
不妊治療は、一般的に以下のステップで治療を進めていきます。
- 検査
- タイミング法
- 人工授精
- 体外受精
まず不妊の原因を探る検査を行い、男性側の精子と女性側の卵子のどちらに不妊の原因があるのか確かめるのが一般的です。
原因を特定できたら、排卵日を予測して性交のタイミングを合わせる「タイミング法」による治療を進めます。
「タイミング法」で数ヶ月間治療をしても上手くいかない場合は、妊娠しやすいタイミングで子宮に精子を注入する「人工授精」の治療を行います。
それでも上手くいかない場合に、最終的には女性の卵巣から卵子を取り出して(採卵)、体外で受精させてから子宮に戻す「体外受精」を行う流れです。
かかる費用とは
各ステップでの治療にかかるおおよその費用は以下の通りです。
- 検査:数百円〜1万円前後
- タイミング法:約5,000円
- 人工授精:1万円〜3万円
- 体外受精:10万円〜25万円
上記の費用はあくまでも目安の金額であるため、費用を知りたい場合は治療する医療機関に問い合わせましょう。
また、上記の費用のほかにも、自分でサプリメントを服用したり、ヨガを始めたりする場合にはさらに費用がかかります。
公的医療保険制度の取り組み内容
従来、人工授精や体外受精による不妊治療は公的医療保険の適用対象外でしたが、令和4年4月から保険適用の対象となりました。
そのため、医療機関の窓口で支払う医療費の自己負担割合は3割で済むようになっています。
医療保険の適用対象になるまでは40万円以上かかっていた体外受精も、令和4年4月からは10万円ほどの自己負担から治療を受けられるようになりました。
支払った医療費の還付が受けられるケースもある
公的医療保険制度では、1ヶ月の医療費の自己負担額が一定の金額を超えた場合に、超えた部分が還付される「高額療養費制度」も設けられています。
高額療養費制度の自己負担上限額は年齢や所得水準によって異なります。
例えば1ヶ月の医療費自己負担の上限額が10万円で、15万円の医療費を負担すると5万円が還付される仕組みです。
公的医療保険が適用されても、不妊治療には10万円以上の費用がかかるケースは少なくありません。
高額療養費制度を活用し、自己負担額を抑えて治療しましょう。
不妊治療は民間医療保険の適用対象?
医療費の負担に備える方法として、民間の医療保険に加入するという方法があります。
ケガや病気で入院・手術、通院をした場合に給付金が支払われる医療保険ですが、不妊治療も給付金の対象になるのでしょうか。
ここでは、不妊治療が民間医療保険の対象になるか、加入のメリット・デメリット、加入時の注意点を解説します。
民間保険の支払い対象なのか
令和4年4月に不妊治療が公的医療保険の適用対象になったことを受け、民間の医療保険でも不妊治療が保険金・給付金の支払い対象になるケースが増えてきています。
基本の保障内容では不妊治療が対象にならない場合でも、特約を契約することで不妊治療に備えることが可能です。
例えば人工授精や体外受精などを行った場合、女性側に対して手術給付金が支払われるケースがあります。
10万円以上の費用がかかる体外受精の費用をカバーできるため、治療費の負担を和らげることが可能です。
ただし、生命保険会社によって給付金の支払い条件や給付回数が異なります。
不妊治療に備えて民間医療保険を契約する場合は、あらかじめ給付金の支払い条件を確かめておきましょう。
加入のメリット・デメリット
民間の医療保険に加入するメリットとしては、治療費の負担を軽減できる点が挙げられます。
まとまった費用がかかる不妊治療でも、安心して治療に専念することができます。
特に体外受精や顕微授精などは10万円以上の高額な費用がかかるため、治療を躊躇している方も少なくないでしょう。
民間の医療保険で手術給付金が給付されれば、治療に踏み切ることができます。
一方で民間の医療保険で不妊治療に備えるデメリットとして、保険料の負担が大きくなるという点が挙げられます。
不妊治療のために特約を上乗せすると、その分毎月の保険料が高くなるため注意が必要です。
不妊治療に備えて民間医療保険を契約する際は、メリットとデメリットを比べた上で加入するか判断しましょう。
加入時の注意が必要なこと
不妊治療に備えて民間医療保険に加入する場合、いつから保障が開始されるのか確認しておきましょう。
中には契約開始後すぐに保障されない商品があり、不妊治療を受けても給付金が支払われないケースがあるためです。
例えば、「保障開始日から2年を経過する前の治療は保障の対象外」という商品があります。
給付金受け取りのトラブルを避けるためにも、保障の適用が始まる時期を確かめることが大切です。
また、すでに不妊治療を始めている場合、加入できる医療保険が限られてきます。
医療保険への加入自体ができないケースもあるため、不妊治療を検討している場合は早めに医療保険に加入することをおすすめします。
記事まとめ
従来、人工授精や体外受精などの不妊治療は公的医療保険制度の対象外でしたが、令和4年4月から保障対象になりました。
自己負担額が一定額を超えた場合に還付を受けられる「高額療養費制度」も設けられているため、自己負担を抑えて不妊治療に取り掛かることができます。
また、民間の医療保険も特約などで不妊治療の保障対象になるケースが増えてきています。
加入するメリット・デメリットを比較し、注意点などを確認した上で民間の医療保険への契約を検討しましょう。