企業に勤める会社員は、12月に年末調整を行って所得税の過不足を精算します。
年末調整のときに適用される控除を申告すれば税金の負担を軽減できますが、がん保険の保険料は控除の対象になるのでしょうか。
この記事では、がん保険の年末調整について以下のポイントを解説します。
- がん保険は年末調整で控除の対象となるか
- 適用される生命保険料控除の額は?
- 年末調整・確定申告の流れ
ぜひ本記事を参考にして年末調整で控除を適用し、税金の負担を軽減しましょう。
がん保険は年末調整で控除の対象となる
結論から言うと、がん保険で支払った保険料は年末調整で控除の対象となります。
ここでは、年末調整の基本的な内容と適用される控除について解説します。
年末調整とは
年末調整は簡単に言うと、正しい税額を計算して過不足を精算する手続きのことです。
会社員はフリーランスや個人事業主とは違い、原則として確定申告をしません。
企業がおおよその税額を計算し、毎月の給与や賞与から所得税・住民税を天引きしています。
しかし、天引きされた税額は概算で徴収されているため、正確な税額と異なるケースがあります。
12月に1年間の正しい税額を計算し、還付や追加徴収によって過不足を精算する手続きが年末調整です。
がん保険は生命保険料控除が適用される
年末調整をする際、各種の所得控除が適用されることで税金の負担が軽減できます。
がん保険も生命保険料控除の対象となっているため、年末調整で申告することで控除が適用可能です。
生命保険料控除とは、1年間で支払った保険料に応じて保険料負担者の所得税・住民税が軽減される仕組みです。
名前は「生命保険料控除」ですが、医療保険やがん保険も控除の対象となっています。
また、生命保険料控除が適用されるのは保険料を支払っている人であるため、家族の分の保険料を支払っている場合も控除の対象となる可能性があります。
年末調整でしっかりと申告して、がん保険の生命保険料控除を活用しましょう。
がん保険で適用される生命保険料控除の額はいくら?
がん保険で適用される生命保険料控除額は、年間で支払った保険料に応じて変動します。
年末調整をする前に受けられる控除額を把握しておきましょう。
加入時期によって対象区分・控除額が異なる
生命保険料控除は平成22年度に税制改正によって、制度の内容が変更されました。
そのため、生命保険を契約した時期によって対象区分や控除額の計算方法が異なります。
がん保険の対象区分は、契約時期によって以下のような区分となります。
- 平成23年(2011年)12月31日以前に契約したがん保険:旧契約
- 平成24年(2012年)1月1日以降に契約したがん保険:新契約
がん保険の保険料は旧契約の場合は一般生命保険料控除、新契約の場合は介護保険料控除に分類されます。
控除額の計算方法に違いがあるため、事前にご自身が加入しているがん保険の契約時期をしっかりと確認しておきましょう。
旧契約の場合
旧契約のがん保険の場合は一般生命保険料控除に分類され、以下の表の計算式で所得税の控除額が計算されます。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,000円超 50,000円以下 | 支払保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円超 100,000円以下 | 支払保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
また、住民税の控除額は以下の表の計算式で算出されます。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
15,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
15,000円超 40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+7,500円 |
40,000円超 70,000円以下 | 支払保険料等×1/4+17,500円 |
70,000円超 | 一律35,000円 |
例えば年間の支払保険料が30,000円の場合、所得税は「30,000円×1/2+12,500円=27,500円」、住民税は「30,000円×1/2+7,500円=22,500円」となります。
新契約の場合
新契約のがん保険の場合は介護保険料控除に分類され、以下の表の計算式で所得税の控除額が計算されます。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超 40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
また、住民税の控除額は以下の表の計算式で算出されます。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
12,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
12,000円超 32,000円以下 | 支払保険料等×1/2+6,000円 |
32,000円超 56,000円以下 | 支払保険料等×1/4+14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
例えば年間の支払保険料が50,000円の場合、所得税は「50,000円×1/4+20,000円=32,500円」、住民税は「50,000円×1/4+14,000円=26,500円」となります。
年末調整・確定申告の手続きの流れ
がん保険の控除を受けるためには会社員は年末調整、自営業者は確定申告の手続きを進めることになります。
会社員の方は12月頃になると年末調整の手続きが始まるため、あらかじめ必要な書類を準備しておきましょう。
ここでは、がん保険で生命保険料控除を受けるために必要な書類や、年末調整・確定申告の手続き方法について解説します。
必要な書類
年末調整でがん保険の生命保険料控除を受けるためには、以下の2つの書類が必要となります。
- 保険料控除証明書
- 給与所得者の保険料控除申告書
「保険料控除証明書」はがん保険の保険料支払いを証明する書類で、10月〜12月頃に生命保険会社から郵送されます。
また、「給与所得者の保険料控除申告書」は会社から専用の書類を受け取ります。
郵送された保険料控除証明書をしっかりと保管し、給与所得者の保険料控除申告書とともに提出しましょう。
年末調整
年末調整でがん保険の生命保険料控除を受けるためには、以下の流れで手続きを申請します。
- 会社から受け取った「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入する
- 生命保険会社から郵送された「保険料控除証明書」を添付する
- 勤務先の担当者に提出する
給与所得者の保険料控除申告書の記入方法については、書き方に分からない点がないように事前に確認しておきましょう。
確定申告
自営業者やフリーランスの場合は年末調整がなく、確定申告によって生命保険料控除の申告を行います。
原則として2月16日から3月15日までの間に、税務署への確定申告書の提出が必要です。
確定申告の場合も年末調整と基本は同じで、保険料控除証明書と確定申告書を提出します。
ただしe-TAXで電子申告をする場合には、記載内容を入力して送信することで保険料控除証明書の提出を省略できます。
保険料控除証明書を提出しない場合でも申告期限から5年間は保管しておく必要があるため、紛失しないように管理しておきましょう。
不明な点は相談窓口で確認しよう
がん保険の生命保険料控除を適用しようとする場合、不明な点や疑問などを感じる場合があるでしょう。
年末調整や確定申告について不明点がある場合は、国税庁のホームページを確認したり、電話相談センターに相談したりすることをおすすめします。
ホームページのチャットでは、国税に関する質問を土日や夜間でも相談することができます。
また、医療費控除や年末調整等のよくある質問について、一般的な回答を調べることも可能です。
がん保険の年末調整・確定申告で分からない点があるときは、手続きを始める前にしっかりと調べておきましょう。
まとめ
がん保険は生命保険料控除の対象となるため、年末調整によって税金の負担を軽減できます。
加入時期によって控除額の計算方法も異なるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
また、生命保険料控除の手続きをする際には、生命保険会社から郵送される「保険料控除証明書」が必要となります。
紛失しないようにしっかりと保管し、年末調整や確定申告の手続きに向けて準備しておきましょう。