がん保険には、一般的に「免責期間」が設けられていることが多く、責任開始日は免責期間が明けた日からとなります。
「せっかくだから、責任開始日が早いがん保険に加入したい。」と考える方もいると思いますが、確かに加入してすぐに保障を付けられると安心ですよね。
しかし、責任開始日が早いがん保険には、すぐに保障が得られるというメリットだけでなく、注意すべきデメリットも存在するのです。
今回は、責任開始日が早いがん保険とはどういった保険なのか、メリットやデメリット、加入する際の注意点などについて解説していきます。
責任開始日が早いがん保険とは
多くのがん保険では、「免責期間」としてがん保障の適用されない期間が設けられており、この期間にがんと診断されても保障を受けることができません。
免責期間は、一般的に90日間(3か月間)となっていることが多いため、責任開始日は早いタイミングでも91日目からとなります。
一般的な保険の責任開始日
一般的な免責期間の設けられていない保険では、以下の3つの条件がそろったタイミングが責任開始日となります。
- 保険契約の申し込み
- 告知
- 1回目の保険料払込
これらのうちいずれか遅い日が責任開始日となりますが、がん保険ではそこからさらに免責期間がカウントされるのです。
「がん保険の責任開始日は早い方がいい」と思いますが、なぜ免責期間が設けられているのでしょうか?
免責期間が設けられている理由
がん保険の責任開始日を早い段階に設定できないのは、「加入者間の公平性を保つため」とされています。
もう少しわかりやすくいうと、すでにがんに罹患している方が加入してすぐに給付金を請求することを防止するためです。
というのも、通常がんに罹患した早い段階では自覚症状はほとんどなく見過ごしてしまいがちですが、中にはしこりや出血といったように症状が出ることがあります。
そういった方が「がんかもしれない」と不安になり急いでがん保険に加入し、その後診察を受けてがんと診断されたら、すぐに給付金が受け取れてしまいますよね。
しかし、がん保険に加入している方の中には「がんに罹患した場合に備えて、早い段階で加入しておこう。」と考えている方が多いです。
そのような健康体の加入者と、違和感があって急いで加入した方を公平に扱うのは不平等と考えられるからです。
免責期間中にがんと診断されると契約は無効に
がん保険の免責期間中にがんと診断された場合、がん保険自体が無効になってしまい保障を受けることができません。
つまり、診断給付金や入院給付金といったものが受け取れないということです。「免責」とは、保険会社が給付金の支払いを免じられる期間のことだからです。
ますます責任開始日が早いがん保険へ加入したい気持ちになる方も多いかもしれませんね。
責任開始日前でも保険料は支払わなければならない
がん保険に加入したとはいえ、責任開始日まで保障されないのであれば、「保険料は支払わなくていいのでは?」と思う方もいるでしょう。
しかし、保険料はきちんと支払わなければなりません。
保険会社は、支払われた保険料を将来発生する給付金の支払いのために準備しておく必要があり、いずれご自身が受け取るかもしれない給付金の原資となっているのです。
保険会社の利益になっているというわけではありませんので、決められた日に着実に支払うようにしましょう。
責任開始日が早いがん保険のメリット・デメリット
「免責期間がなく責任開始日が早いがん保険に加入したい!」と考える方もいると思いますが、責任開始日が早いというメリットがある一方で、デメリットがあるので注意が必要です。
では、責任開始日が早いがん保険に加入することのメリットとデメリットについて、詳しく解説していきます。
責任開始日が早いがん保険に加入するメリット
責任開始日が早いがん保険に加入するメリットには、主に以下の2点が挙げられます。
- 加入後すぐに保障を受けることができる
- 保険料が割安
加入後すぐに保障を受けることができる
責任開始日が早いがん保険であれば、免責期間が設けられていないため、加入条件がそろって契約が成立すればそれ以降はいつでもがん保障を受けることができます。
90日間(3か月)といった免責期間を待つ必要がなく、早い段階で保障が開始される点がもっとも大きなメリットといえます。
保険料が割安
責任開始日が早いがん保険は診断給付金が受け取れないため、免責期間が設けられているがん保険よりも保険料が割安となることが多いです。
診断給付金はがん治療の早い段階で受け取れる一時金なので、治療費に活用できるなど有効活用できるものですが、診断給付金が受け取れなくても、早い段階からの保障を得たい方にはメリットがあるといえます。
責任開始日が早いがん保険に加入するデメリット
責任開始日が早いがん保険に加入するデメリットとして、主に以下の3点が挙げられます。
- 診断給付金が受け取れない
- 通院保障が付いていない
- 上皮内新生物は補償対象外または特約で付ける
診断給付金が受け取れない
メリットのところでも解説しましたが、責任開始日が早いがん保険では診断給付金を受け取ることができません。
診断給付金は、50万円から200万円の間で契約されることが多く、使い道が自由なので入院費や手術費などはもちろんのこと、通院の際の交通費や休業による収入減少を補填することなどに利用できます。
がんと診断を受けて精神的にダメージを受けたときに、このような給付金を受け取ることができると、経済面での心配事を減らすことができますが、免責期間がなく責任開始日が早いがん保険では受け取ることができないのです。
通院保障が付いていない
責任開始日が早いがん保険には、通院保障が付いていないため、通院時の治療費などをカバーすることができません。
近年のがん治療の状況として、入院による治療から通院による治療をメインとする流れとなっており、今後もがん保険における通院保障が重要になってきます。
そのため、責任開始日が早いがん保険のように通院保障が薄い商品は、十分な補償を受けられない可能性があります。
上皮内新生物は保障対象外または特約で付ける
上皮内新生物とは、がんが粘膜の表面にある上皮内にとどまっており、その奥の基底膜を破って浸潤していない状態のものをいいます。
通常、手術で切除すれば再発や転移の可能性はほとんどないとされているため、がん保険によっては保障対象外になることがあり、保障される場合でも減額保障になるケースがあります。
責任開始日が早いがん保険では、上皮内新生物と診断されたときは保障対象外となるか、保障を付けたい場合は特約で付ける必要があります。
特約で付ける場合は、その分保険料が高額になるためデメリットといえます。
免責期間に関する注意点
責任開始日が早いがん保険のメリットとデメリットについて確認しましたが、契約を検討する際には以下のふたつの点に注意しましょう。
- 責任開始日は書類で正確に確認する
- がん保険を切り替える際に空白期間を作らない
契約してからトラブルにならないように、ひとつずつ確認していきましょう。
責任開始日は書類で正確に確認する
がん保険の責任開始日は免責期間が明けてからになりますが、ご自身でカレンダーを見ながら90日を数えて「この日が責任開始日だ」と判断するのは控えましょう。
がん保険を契約する際に「契約のしおり(約款)」が交付されますが、そこに責任開始日や免責期間についての記述があるはずなので必ず確認してください。
また、具体的な日付については、保険会社に確認するとより間違いがなく安心です。
がん保険を切り替える際に空白期間を作らない
現在加入中のがん保険の保障を見直したときなど、新しいがん保険に切り替えることがありますが、保障の空白期間を作らないように十分注意しましょう。
加入中のがん保険を解約するのは、新規加入するがん保険の責任開始日以降にしてください。このタイミングよりも早い段階で解約してしまうと、保障期間のない空白の期間ができてしまうのです。
せっかくがん保険に加入してがん保障に備えていても、その空白期間にもしがんに罹患していると診断されると、給付金を受け取ることができなくなってしまいます。
まとめ
責任開始日が早いがん保険には、「加入後すぐに保障が得られる」、「保険料が割安」といったメリットがあります。
一方で、「診断給付金が受け取れない」、「通院保障が付いていない」、「上皮内新生物は補償対象外または特約で付ける」といったデメリットもあります。
責任開始日が早い点はうれしいですが、保障が手薄にならないように、保障内容もしっかりチェックしたうえで契約を検討しましょう。
もし保障内容でわからないことがあった場合は、FPといった保険の専門家の無料保険相談を利用するのもおすすめです。