「医療保険は一度使うと保険料が高くなる」、「医療保険は一度使うと更新できなくなる」という話を聞いたことがありませんか?
万が一、ケガや病気で入院・手術をした場合に備えて医療保険に加入しているのに、一度使うとデメリットがあるなら使いどころを迷ってしまいますよね。
そこで本記事では、その噂の真偽について明らかにしていきます。
医療保険を一度使った場合の保障自体や保険料、保証期間の変化についても解説していくので、医療保険について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
医療保険を一度使うと?保障自体の変化
ここでは、具体的に医療保険を使った後の保障の変化について説明していきたいと思います。
医療保険は複数の主保険と複数の特約の集合体です。医療保険を一度使っても保険自体は無くならないのですが、このなかのパーツである主保険や特約によっては、消滅するものや保障が減るものがあるのです。
ここでは、医療保険を構成する主保険や特約のうち以下の5つについて解説していきます。
- 入院給付金(主契約)
- 手術給付金(主契約)
- 入院に関する特約
- 給付金が出るタイプの特約
- 先進医療特約
①入院給付金は原則何度でも受け取れる!ただし180日ルールには注意が必要
医療保険、医療関係特約ともに、同じ病気を原因として再入院した場合は、一般的に前回の入院とあわせて「継続した1回の入院」として扱われます。
入院給付金を受け取れるのは、前後の入院を合わせて1入院の支払限度日数までです。
ただし、入院給付金には「180日ルール」が設けられていることには注意が必要。
例えば、60日型で、一度40日間入院給付金を受け取ってしまった場合を考えます。
その後180日以内に同じ病気で再入院した場合、1入院とみなされ残りの20日までしか入院給付金が支払われないことになります。
一方で、前回入院の退院日の翌日から一般的に180日を経過して再入院した場合は、別入院(新たな入院)として扱われます。
②手術給付金も原則何度でも受け取れる!ただし60日ルールには注意が必要
こちらも主契約である手術付給付金は2回目以降も同様に受け取れます。
ただし、手術給付金には保険会社によって、給付回数に以下のようなルールが定められている場合もあるので注意が必要です。
- 施術開始日から60日に1回を給付限度とする
- 1日に複数回の手術を受けた場合は、1回分のみ給付する
- 放射線治療は60日に1回を限度とする
短期で手術が必要になった際は、保険会社との契約を見返しておく必要があります。
③入院に関する特約は原則主契約と同様
入院に関する特約には、以下のようなものがあります。
- 女性疾病入院特約
- がん入院特約
- 三大疾病入院特約
どの特約も該当する疾病で入院することになった際は、入院給付金に一定の金額を上乗せするというものです。
これらの特約は原則入院給付金に準ずることとなります。つまりこれらの特約を使ったとしても、2回目以降も入院給付金に合わせて保障されることになります。
もちろん、保険会社によっては入院給付金と特約の支払い限度日数が異なっている場合や、女性疾病入院特約が一時金として支払われるタイプで通算支払限度回数が存在するなどもあるので、確認は必要です。
④給付金特約は支給回数の限度に注意
特約による給付金の種類とそれぞれの支払い回数制限は以下の通りです。
給付金特約 | 支払い回数制限 |
---|---|
がん診断給付金 | 契約によって異なります。1回限りの給付だったり、1年~数年に1回なら給付だったりと、契約内容によってバラバラです。 |
先進医療一時給付金 | 同一疾病による診療で1回限りです。 |
三大疾病給付金 | 入院給付金については支払限度はありませんが、入院一時金は1回限りになっています。 |
ただし、上記はあくまでも一般的な場合の説明となり、支給上限回数や条件は契約によって変わります。しっかり確認しておくことが大切です。
⑤先進医療特約は上限に達するまで利用可能
先進医療とは公的医療保険を適用することはできないが、厚生労働省が認めた高度な医療技術を使った治療のこと。
保険適用の治療は自己負担割合が定まっていたり(原則、年齢や収入によって1〜3割)、高額療養費制度で上限額(収入や年齢によるがおおむね10万円以下)を超えた分は戻ってきたりしますが、先進医療はそうはいきません。
先進医療では、一度に数百万かかることもある治療でも全額自己負担が原則となっています。
ただし、特約に入っていればこれにかかる治療費を保障してもらうことができます。
先進医療特約には通算2,000万円までといった上限がある場合がほとんどが、その上限に達するまでは回数の制限はありません。
つまり先進医療特約は1度使ってもまた使うことができるということになります。
医療保険を一度使うと?保険料や保証期間の変化
それでは、医療保険を一度使った場合、2回目以降は保険料や保証期間に差が出てくるのでしょうか?
ここでは、以下の2つのうわさについて真偽を解説していきます。
- 医療保険を一度使うと保険料が高くなる
- 医療保険は一度使うと更新ができなくなる
「医療保険を一度使うと支払い保険料が高くなる」というのは嘘
結論から言えば、医療保険を一度使うと保険料が高くなるというのはうそです。
これはよくある勘違いが原因なのですが、保険を使って保険料が上がるのは医療保険ではなく自動車保険(車両保険)になります。医療保険を利用して入院給付金などを請求したとしても、保険料の支払い額が上がることはありません。
解説を加えておくと、医療保険の保険料は被保険者の年齢や健康状態などをもとに決定されます。
保険の使用頻度は全く関係ないので、安心してお使いください。
車両保険と混同しないように
自動車保険(車両保険)には、等級が設定されています。等級とは、契約者の事故歴などをもとに決まる分類のことです。一部の自動車保険を除き、ほとんどの損害保険会社では1から20までの等級が設けられています。
自動車保険の保険料は、この等級をもとに決定されます。前述の通り、等級は事故歴などをもとに決められるため、一度保障を使うと次回の契約更新の際に保険料が上がってしまうわけです。
ちなみに、一度事故を起こして保険金を請求すると、等級が3つ下がるのが一般的です。等級が1つ落ちるだけならあまり気にならないかもしれませんが、3つも下がってしまうことを考えて自動車保険の保障を利用しない人もいます。
この自動車保険と医療保険の保険料は仕組みが違うので、混同しないように注意しましょう。
「医療保険は一度使うと更新できなくなる」というのは嘘
あらかじめ保険期間が決められた定期型の医療保険を利用している場合、保障を継続するためには契約更新が必要になります。
その際、ケガ・病気で入院・通院などをした場合に医療保険を一度使ったことがあったとしても、保険料の支払いさえすれば次回の契約更新は可能です。
また、保険金を請求したことが直接医療保険の更新時の保険料に影響することはありません。
医療保険を使うことによって更新時に通常よりも保険料が高くなることはありませんが、定期型の医療保険は更新のタイミングで保険会社から支払いを求められる金額が上がるリスクがあることは覚えておきましょう。
もしまだ給付金の請求が済んでいなかったら…?3年以内の請求がカギ
もし、あなたが過去に医療保険を意図的に使わなかったことがある場合、一度その日付を確認してみてください。
医療保険では、一般的に医療保険の保険金を請求できる状態になった日から3年以内であれば、給付金の請求をすることが可能です。
事実、医療保険を販売している保険会社のホームページには、次のような記載があります。
○SOMPOひまわり生命の場合
給付金の請求の期限は、請求権者が給付金を請求できるようになった日から3年間と約款で定めています
引用元:SOMPOひまわり生命公式サイト
○メットライフ生命の場合
支払事由が生じた日の翌日から3年以内であれば、保険金・給付金等の請求書類をお取寄せのうえご請求いただけます
引用元:メットライフ生命FAQ
○第一生命の場合
請求する権利は、権利を行使できるときから3年間請求がない場合には消滅します
引用元:第一生命FAQ
ただし、生命保険会社や医療保険によっては上限が異なる可能性があるため、必ず約款の内容を確認するようにしましょう。自分で約款を見ても判断できない場合は、生命保険会社に直接問い合わせることをおすすめします。
記事まとめ
本記事では、医療保険を一度使った場合の保障自体や保険料、保障期間の変化について解説しました。
重要なことをまとめると以下の通りです。
- 入院給付金や手術給付金は原則何度でも受け取れるが、期間によるルールには注意が必要
- 「医療保険は一度使うと保険料が高くなる」というのは嘘
- 「医療保険は一度使うと更新できなくなる」というのは嘘
- 保険料の請求は3年以内が原則
医療保険は一度使ったからといって、直接保険料には影響しません。保険金を請求した後でも加入条件を満たして入れば、問題なく更新手続きが可能です。
過去に請求していない医療保険がある場合は、一般的な商品であれば3年以内なら請求できるのでこの機会に生命保険会社に相談してみると良いでしょう。