かつては、世帯ごとに子供や家族が親の介護を担っていました。しかし、高齢化や核家族化が急速に進んだことを受け、介護を社会全体の問題と捉え、支えていくために2000年に公的介護保険制度が創設されました。
公的介護保険は40歳以上を対象としていますが、40歳以上64歳以下は特定疾病が原因で介護状態に該当した場合にしか介護サービスの対象ではありません。では、脳梗塞を発症した場合はどうなのでしょうか。
そこで、本記事では脳梗塞を発症した場合は公的介護保険制度の対象になるのかどうかを解説した上で、脳梗塞を発症した場合に利用できる各種サービス等をご紹介します。
年齢を問わず若い世代であっても発症リスクがあり、重い場合は寝たきりになる可能性もあるのが脳梗塞の特長です。発症時には適切なケアが受けられるよう、公的介護保険への理解を深めましょう。
脳梗塞で要介護認定を受けた...保険は使える?
高齢化がますます進む日本では、脳梗塞を発症する患者数は今後さらに増加すると見込まれています。後遺症が残ることもあり、自分自身や家族が発症した際に慌てることのないよう、脳梗塞発症時の公的介護保険の申請や介護サービスの利用については正しく理解しておく必要があります。
ここでは、まず脳梗塞について解説した上で、実際に脳梗塞を発症して公的介護保険を利用するケースを解説します。
脳梗塞とは脳卒中の一種
脳は血液によって運ばれる栄養や酸素を必要としています。しかし、血管の詰まりや破れが原因で脳への血液量が減ると、麻痺などさまざまな障害が出ます。これが脳卒中です。
さらに脳卒中の中でも、脳内の血管が詰まったりすることで血液量が減少し、細胞に障害が起こることを脳梗塞、脳内で出血することで細胞に障害が起こることを脳出血と言います。なお、脳卒中にはくも膜下出血や一過性脳虚血発作などもあります。
脳梗塞は公的介護保険の対象
先述のように、脳梗塞は脳卒中の一種であり、日本人の死亡原因の上位にランクインするなど、誰もが発症リスクを抱えている病気です。主に高血圧や糖尿病などが発症原因と言われていますが、この脳梗塞を発症した場合、公的介護保険によって各種介護サービスを利用できるのでしょうか。
例えば脳梗塞を発症して半身麻痺となるなど、後遺症が原因で生活に著しい影響が出る場合は公的介護保険の利用を申請し、要介護(もしくは要支援)認定を受けます。
この際、介護度は病気の重さではなく「介護の手間」によって判定されるという点は覚えておきましょう。介護の手間とは、具体的には「時間」で換算され、自立した人なら0分、一部介助なら何分と項目ごとに決められています。
この介護にかかる時間から機械的に介護度の一次判定が算出され、さらにここに主治医による意見書などが加味されて算出されたのが要介護(もしくは要支援)度合いです。
要介護(もしくは要支援)認定されると、公的介護保険における各種介護サービスを利用できます。ただし、要支援と要介護では利用できるサービスの内容に差があるほか、公的介護保険はサービスの現物支給である点には注意しましょう。
なお、脳梗塞は公的介護保険における16種類の特定疾病のうちの脳血管疾患に含まれます。つまり、40歳~64歳でも公的介護保険を利用することができます。16種類の特定疾患については後ほど詳しく解説します。
特定疾病なら64歳以下でも公的介護保険の対象
「公的介護保険に加入しているから万が一の介護状態の際にも大丈夫」と考える方がいる一方、介護原因と年齢次第では公的介護保険の対象外となることもあるため、場合によっては公的介護保険を利用できないこともあるでしょう。
特に40歳から64歳は、16種類の特定疾病を原因とした介護状態でなければ公的介護保険の対象ではないため、特定疾病の詳細は確認しておく必要があります。
公的介護保険の概要
公的介護保険制度の運営主体は市町村で、40歳以上が保険料を支払い、介護が必要になった場合に費用の一部を負担することでさまざまなサービスが利用できます。
第1号被保険者
公的介護保険の加入者のうち、65歳以上を第1号被保険者と言います。保険料は原則年金から徴収され、原因を問わず要介護状態もしくは要支援状態に該当した場合に介護サービスを利用可能です。
第2号被保険者
40歳から65歳未満は公的介護保険の第2号被保険者と呼ばれ、40歳になった月から介護保険料が徴収されます。第2号被保険者が介護サービスを受けるには、老化に起因する16種類の特定疾病が原因で介護状態になった場合に限定されているため、例えば自動車事故などによって介護状態になったとしても公的介護保険は利用できません。
16種類の特定疾病とは
公的介護保険における特定疾病は、以下の16種類を指します。
- がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断した場合のみ)
- 関節リウマチ
- 筋委縮性側索硬化症
- 後縦靭帯骨化症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核編成症およびパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管側弯症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
このうち、脳梗塞は脳血管疾患に含まれます。そのため、64歳以下であっても脳梗塞を発症した場合は、特定疾病と認定され公的介護保険を利用可能です。(診断基準については、別記事:介護保険の特定疾病とは?選定・診断基準をわかりやすく解説!にて解説しています)
それでは、仮に脳梗塞を発症した場合、どのような後遺症が発症すると考えられるのでしょうか。脳梗塞の後遺症は、日常生活に支障をきたしてしまうものがほとんどと言われています。
例えば運動機能や感覚機能に麻痺が生じ、歩行能力が低下するなどの問題が生じます。さらに深刻な後遺症としては言語障害が考えられます。言語障害によって言葉を理解できず、うまく伝えられないため意思疎通が非常に難しくなるかもしれません。
また、同時に認知機能にも影響があり、高次脳機能障害と呼ばれるような記憶障害や空間認知障害が見られます。脳梗塞を発症した場合は家族の介護負担が非常に重くなるため、公的介護保険による介護サービスの積極的な利用が推奨されています。
脳梗塞を発症した際に利用できる介護保険サービス
脳梗塞によって日常生活にも大きな影響が生じる際には、公的介護保険を使ってさまざまな介護サービスを利用したいものです。公的介護保険が提供する介護サービスにはいくつかの種類があり、施設サービス・居宅サービス・福祉用具の購入とレンタルサービスなどが一般的です。
施設サービス
施設に入所して生活を送ることができるのが施設サービスです。公的介護保険の施設サービスに指定されている介護施設は、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)・介護老人保健施設・介護療養型医療施設の3つに大別できます。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は原則として要介護3以上で入居でき、食事や入浴などの日常生活の支援を受け取ることができます。介護老人保健施設は在宅復帰を目指している方を対象に、医療やリハビリを提供する施設です。
介護療養型医療施設は長期療養が必要な方が入居でき、介護や医療におけるサポートが充実しています。
居宅サービス
自宅にて生活を続けながら介護サービスを利用したい場合は居宅サービスがおすすめです。居宅サービスは、生活空間に訪問してもらう訪問サービス、自宅から介護サービスを提供する施設等へ通いながら利用する通所サービス、一時的に宿泊する短期入所サービスがあります。
福祉用具の購入とレンタル
介護を必要とする人の自立を促進するために、公的介護保険には、福祉用具を提供するサービスもあります。介護保険が適用された価格で福祉用具が提供されるため、車いすや介護ベッドなど、介護時に不可欠な用具の購入費用を抑えることができるという特長があります。
車いすなどは洗浄・消毒することで他の利用者とも共有できるためレンタルが可能です。腰掛便座や入浴時の補助用具など共有が難しい用具は安価に購入することができます。ただし、レンタル対象品目は要介護度によって異なるため詳細は事前に確認しましょう。
住宅改修費用
自宅の段差をなくしたり、手すりをつけるなど、安全な日常の実現のために必要な住宅改修費用のうち、最大20万円が公的介護保険によって支給されます。
なお、利用対象となる工事は限定されており、必ず施工前に事前申請しなければなりません。暮らしやすい自宅を手に入れるために、ぜひ利用したい介護サービスと言えます。
まとめ
40歳以上は公的介護保険の対象ですが、40歳~64歳は16種類の特定疾病を原因とする介護状態でなければ制度を利用することはできません。
ただ、年齢を問わず発症するリスクのある脳梗塞は、この特定疾病に含まれるため、65歳未満でも公的介護保険の対象である点はぜひ覚えておきましょう。
公的介護保険には居宅サービスをはじめ、利用者の自立を促し、家族の負担を軽減するためのさまざまなサービスが用意されています。介護度に応じて利用できるサービスは異なるため、事前に確認の上、積極的に各種介護サービスを利用しましょう。
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