公的医療保険による訪問看護には利用回数に制限が設けられています。
利用できる回数や保険の種類による違いなどを把握し、最大限にサービスを活用することが大切です。
この記事では、医療保険の訪問看護に回数制限がある理由や保険の種類による違い、医療保険の選び方などを解説します。
ぜひ本記事を参考にして、訪問看護サービスを最大限に活用しましょう。
訪問看護の回数制限がある理由
公的医療保険を利用して訪問看護サービスを受ける場合、利用回数に制限が設けられます。
回数制限がある理由として主に以下の2点が挙げられます。
- 医療費抑制
- 医療の適切な利用・医師の判断
それぞれ確認していきましょう。
医療費抑制
公的医療保険は国民で保険料を出し合い、医療サービスを受ける際にかかる医療費の自己負担額を軽減させるための仕組みです。
自己負担額は原則として医療費の1〜3割となり、残りの7〜9割は普段支払っている保険料などで賄われています。
もし訪問看護の利用に回数制限を設けなかった場合、頻繁に利用するケースが増えてしまい、医療費が膨れ上がってしまう恐れがあります。
保険料だけでは賄いきれず、公的医療保険制度が持続できなくなるかもしれません。
こうした事態を招かないために、公的医療保険では訪問看護の利用回数に上限を設けて過度な利用を防いでいます。
医療の適切な利用・医師の判断
医療サービスが適切に利用されるために、公的医療保険では医師が訪問看護の必要性を認めた場合しかサービスを受けることはできません。
本当に訪問看護サービスが必要な人に医療が行き届くように、訪問看護の回数制限が設けられています。
なお、公的医療保険による訪問看護の利用回数制限は週に3回までですが、主治医が訪問看護の必要性を判断した場合は上限を超えて利用することができます。
訪問看護の回数制限!保険による違いを解説
訪問看護の利用回数制限は、医療保険と介護保険で異なっています。
ここでは医療保険と介護保険の利用回数制限をそれぞれ解説します。
医療保険の場合
医療保険で訪問看護サービスを受ける場合、週に3回までサービスを利用することができます。
1回あたりの利用時間数は30〜90分までと定められています。
ただし厚生労働省が定める疾病等に該当する患者の方は、週に4回以上の利用が可能です。
また、厚生労働大臣が定める長時間の訪問を要する者に該当する方は、週に1回のみ90分を超える時間でのサービス利用ができます。
医師から「特別訪問看護指示書」が交付されている場合は、月に1度最長14日連続で訪問看護を利用することもできます。
介護保険利用の場合
介護保険には、訪問看護サービスの利用回数に制限がありません。
ただし1回の利用時間数は、定められた以下の4つの区分から選ぶ必要があります。
- 20分未満
- 30分未満
- 30分以上60分未満
- 60分以上90分未満
必要に応じて適切な時間の訪問看護サービスを利用しましょう。
なお、介護保険には要介護度・要支援度に応じて支給限度額が定められています。
訪問看護以外の介護サービスも利用しながら支給限度額内に収めたい場合は、週に1〜2回程度しか利用できない可能性があります。
医療保険を最大限に活用する方法
医療保険による訪問看護を最大限に活用するためのポイントを解説します。
医師への相談や保険会社の商品を活用し、訪問看護サービスを受けましょう。
医師への相談!
医療保険による訪問看護サービスは、医師が必要と判断した場合にのみ利用することができます。
在宅医療が必要な状態と感じた場合は、まず主治医に相談しましょう。
訪問看護を利用する際、介護保険・医療保険・自費の3つの選択肢があります。
いずれの場合も主治医による「訪問看護指示書」が必要です。
自分の状態を医師に相談し、訪問看護が必要かどうかの判断を確認しましょう。
自費によるサービス利用を検討
公的医療保険や介護保険には利用回数や時間数に上限が設けられているため、満足に在宅医療を受けられない可能性があります。
さらに要介護・要支援認定や医師による必要性の判断などが必要となり、条件を満たさない場合は訪問看護を受けることができません。
自費で訪問看護を利用する場合は利用回数・時間に制限はなく、要介護度・要支援度や病気の状況に関わらず利用することができます。
公的医療保険や公的介護保険の対象とならない場合は、自費でのサービス利用も検討してみましょう。
保険会社のサービスを活用
民間の保険会社が提供する介護保険の利用もおすすめです。
公的制度の上限を超える部分の自己負担額を軽減させることができます。
介護保険は、要介護状態になった場合に一時金を受け取れたり、年金が支給されたりする保険商品です。
介護にかかる自己負担額を抑えることができ、訪問看護を受ける際にも活用できます。
なお、民間の保険会社で販売されている医療保険の場合は、自宅で療養する訪問看護が給付の対象外になる場合があるため注意が必要です。
回数制限が適用されない場合でも注意が必要
訪問看護について回数制限がない場合でも、以下の3点に注意が必要です。
- 自己負担額
- 訪問看護の時間帯
- 公的保険の併用不可
医療保険・介護保険で訪問看護を利用する前に注意点を確認しておきましょう。
自己負担額
公的医療保険や公的介護保険は、サービス利用時の自己負担を軽減させることができます。
医療保険の場合は年齢によって1〜3割、介護保険の場合は所得によって1〜2割の自己負担割合です。
しかし自己負担額を軽減できるとはいえ、繰り返し利用すれば負担は大きくなっていきます。
特に介護保険の場合は支給限度額が設けられており、上限を超えた分は自己負担となります。
「回数に制限がないから」と利用を繰り返していると、自己負担が大きくなる点に注意が必要です。
民間の保険商品を活用し、自己負担を軽減させる工夫をしましょう。
訪問看護の時間帯
訪問看護は、サービスが提供される基本的な時間帯を「午前8時から午後6時まで」と定めています。
この時間から外れた時間帯にサービスを受ける場合は、基本料金に加算されてしまうため注意が必要です。
時間外のサービス利用で加算される金額は以下の通りです。
夜間(午後6時〜午後10時)・早朝(午前6時〜午前8時) | 基本単位+25% |
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深夜(午後10時〜午前6時) | 基本単位+50% |
訪問看護サービスを利用する際は、回数制限だけでなく時間帯にも注意しておきましょう。
公的保険の併用不可
訪問看護は公的医療保険や公的介護保険によってサービスを受けることができますが、2つの公的制度を併用することはできません。
介護保険の要介護・要支援に該当する場合は、介護保険の訪問看護を優先して利用するように定められているため注意が必要です。
ただし、自費の訪問看護の場合は医療保険または介護保険の訪問看護と併用可能です。
訪問看護の必要性に応じた医療保険の選び方
訪問看護の利用を踏まえた医療保険の選び方として、以下の2つのポイントが挙げられます。
- 訪問看護がカバーされる保険に加入
- 保険料と保障内容のバランスを考える
それぞれのポイントを押さえ、最適な医療保険に加入しましょう。
訪問看護がカバーされる保険に加入
訪問看護の自己負担を軽減させるために医療保険に入る場合は、訪問看護が保障される商品を選びましょう。
保険会社によって保障対象となる範囲が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
例えば医療保険の通院保険金は、入院・手術後の通院を対象とした保険金です。
入院の原因となる病気・ケガの治療が目的の往診は保障対象となっても、訪問看護は保障されないケースが少なくありません。
事前に保障範囲を確認し、訪問看護にかかる費用をカバーできる保険を選びましょう。
保険料と保障内容のバランスを考える
医療保険に加入する際、どの程度の保障を準備するか考えなければなりません。
保険料と保障内容のバランスを踏まえた上で、保険プランを設計することが重要です。
医療保険の保険料は、年齢や保障内容の充実度に応じて変動します。
保障を手厚くすれば安心感を得られる一方で、保険料の負担が大きくなってしまいます。
万が一のリスクに備えて保障を手厚くすることも重要ですが、高額な保険料で普段の生活を圧迫してしまっては元も子もありません。
必要最低限の保障内容を準備し、無理のない保険料でプランを設計しましょう。
記事のまとめ
医療保険による訪問看護には、医療費の抑制や医療の適切な利用などが理由で利用回数の上限が設定されています。
医師への相談や民間の医療保険などを活用し、訪問看護サービスを最大限に利用しましょう。
また、訪問看護のために民間の医療保険を選ぶ際には、訪問看護がカバーされることの確認や保険料・保障内容のバランスを考えることが重要です。
本記事でご紹介したポイントを参考に、訪問看護に最適な医療保険を選びましょう。