医療技術は年々進化することで、入院一択だった頃とは違い、通院しながら治療を受けることができるようになってきました。
それに伴い医療保険の保障内容にも変化し、今では通院保障をアピールする商品が増えています。
しかし、入院や手術の保障と違い、通院保障について理解している人はそれほど多くありません。
通院保障は単に「通院」すれば給付されるのではなく、請求にあたって条件が設けられているケースがあります。そのため、ここでは通院保障をテーマに解説します。
医療保険や通院保障の加入・見直しを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
通院保障の内容
まずは通院保障について解説します。今やがんに罹患しても、通院をメインとした治療を選択することもあるほど、治療のスタイルは昔と比べると様変わりしています。
そのため、通院保障が充実した医療保険が増え、入院・手術の保障に加えて通院保障に加入することも一般的となっています。
通院保障は給付金額や通院回数が保障のポイントです。以下で詳しく解説します。
給付金額
通院保障は主に医療保険の保障内容の1つで、通院治療を受ける際に給付金を受け取ることができるものです。病気やケガの治療を目的として病院に通院した際に通院給付金が支払われます。
通院保障の金額は、たいてい「通院1日につき5,000円」といった形で給付されることが多く、医療保険の入院日額を基準にしています。
一般的には入院日額の6割が通院保障の金額となっており、3,000円から6,000円程度です。
通院日数限度
治療が長引くことに伴い、通院日数が長くなった場合でも、その全ての通院に対して給付金を受け取れるわけではありません。
通院保障には給付限度日数が設けられ、通算約1,000日ほどを限度としていることが多くなっています。
特約
医療保険は、主に入院と手術を給付対象としています。
そのため、通院保障は本来の医療保険には付加されていないことが多く、オプションという形で追加して加入します。これを特約といい、通院保障特約という形で通院への備えを持つことなります。
医療保険における通院保障はなぜ必要なのか
これまでは入院・手術をメインとした医療保険が主流でしたが、なぜ通院保障が注目されるようになったのでしょうか。ここで医療保険における通院保障が必要となる理由を解説します。
入院日数の短期化
入院日数が短くなっているという点が通院保障も必要性をさらに高めている要因の1つです。平成29年の厚生労働省の患者調査によると、平均入院日数は29.3日となっています。
平成2年時点での平均入院日数が44.9日だったことから考えると、入院日数はここ2、30年の間に2週間程度短くなったことになります。
入院日数が短期化すると、これまでは医療保険の入院保障部分から給付されていた金額が減り、医療保険の内容が時代に合わなくなってきたため、時代の変遷に合わせて通院保障に注力する保険会社が増えました。
「せっかく医療保険に加入していたのに、入院時にほとんど給付金を受け取ることができなかった」という状況を避けるためにも、医療保険に加入し、通院保障を付加することは重要です。
医療の高度化
通院保障の必要性を考える上で、医療そのものが高度化していることも大切なポイントです。医療技術が高度によって医療費が上昇したことに伴い、患者1人当たりの医療費も増えることになります。
また、本来であれば入院しなければ受けられなかった治療が、通院や在宅でも受けられるようになってきているという点も、医療の高度化が原因で起こった変化の1つです。
このような変化が起こることで従来の入院・手術を対象としていた医療保険ではカバーできない費用が増え、医療費への支出が膨らんでしまうことを避けるためにも通院保障に加入することが必要です。
1人当たりの年間外来回数を性別・年代別に紹介
以下、平成29年の1人あたりの年間通院回数の推計結果を性別・年代別にまとめました。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
0~9歳 | 14.75 | 13.2 |
10~19歳 | 6.35 | 6.15 |
20~29歳 | 3.55 | 6.2 |
30~39歳 | 4.7 | 7.85 |
40~49歳 | 6.35 | 8.51 |
50~59歳 | 9.5 | 11.6 |
60~69歳 | 14.25 | 15.8 |
70~79歳 | 23.75 | 25.7 |
80~89歳 | 30.5 | 29.45 |
90歳~ | 27.5 | 25.4 |
表を見ると、少なくても4ヶ月に1回程、多い年代では1ヶ月に2回以上通院しているのが分かります。
近年では、入院日数が減っていく代わりに通院日数が増加している傾向があるため、通院保障に入っておくことをおすすめします。
通院保障に加入する際の注意点
主に現役世代を中心に、仕事と治療の両立を目的として、通院治療を選ぶ人が増えています。また入院そのものの平均日数が年々短期化していることを踏まえ、通院保障の必要性は今後ますます高まっています。
医療保険に加入する際にぜひ付加したい通院保障ですが、一方で加入する際に注意すべき点がいくつかあるため、以下で解説します。
入院を伴う通院
先述のように、医療保険における通院保障は「入院を伴う通院」に限られることが一般的です。
ごく一部の保険商品では、入院前の通院も保障の対象となることがあるものの、基本的には退院した翌日から120日、もしくは180日以内の通院が対象です。
がん保険の通院保障であれば、入院を伴わない通院でも保障されることが多く、例えば放射線治療や抗がん剤、ホルモン剤治療を行った場合に給付金を受け取ることができます。
この場合は入院の必要がなく、所定の治療方法を受けたことが条件となり、給付金の金額はたいてい1か月か2か月ごとに期間で区切られています。
治療のための通院
通院保障に加入する際に気を付けたいポイントの1つに、治療のための通院でなければ給付対象ではない、という点があります。
たとえばがんで入院し、退院後は通院しながら抗がん剤治療を受けるといったケースは通院保障の対象です。
しかし、単に薬をもらうだけの通院や経過観察を目的とした通院は「治療」を行っていないため通院保障の対象からは外れてしまいます。
付加できる保険は2つ
通院保障は、生命保険や傷害保険に付加することはできず、一般的には医療保険かがん保険にしか付加することはできません。
そのため通院保障単体で加入したい場合でも、医療保険かがん保険のどちらかには加入すする必要があるため注意しましょう。
当サイトでは、医療保険とがん保険の正しい選び方を解説した記事も用意しております。あなたにとってどの保険を選ぶのがベストなのか、年代別などでわかりやすく解説してあるのでぜひご覧になってください。
医療保険の選び方はこちら。
がん保険の選び方はこちら。
医療保険と一緒に加入しておきたい保険
病気やケガの治療を目的とした通院に際して給付金を受け取ることができる通院保障ですが、通院保障を充実させるだけでは保障は十分とは言えません。
医療保険と合わせて加入することでリスクを総合的にカバーできる3つの代表的な保険について、以下で詳しく解説します。
がん保険
これまで、がんの治療は入院や手術による治療が一般的でした。しかし、最近では通院治療が主流となり、通院保障を重視したいと思う人はがんへの備えも非常に重要です。
さらにがんの治療は一般的な病気やケガの治療よりも長引く傾向にあります。
入院、通院を合わせた治療費への備えとしてがん保険に加入する人もたくさんいます。
がん保険は終身型であることが多く、比較的割安な保険料で加入できる点も特徴です。
医療保険を販売している保険会社であれば、たいていがん保険も販売しており、それら2つの保険をまとめて加入することで、万が一の際の給付金請求の負担も軽くなります。
就業不能保険
長期の入院に備えて医療保険に加入する場合、就業不能保険への加入もおすすめです。就業不能保険とは長期間の入院や在宅療養が原因で「働けない状態」になった場合に備える保険です。
収入の減少にも対応することができる保険として、主に保障中核層やファミリー世帯から人気です。
治療費の不安は医療保険で、働けなくなった場合の経済的なリスクは就業不能保険に加入することで回避できます。
最近では、病気やケガによる長期間の入院の他に、精神疾患が原因の就業不能状態も給付対象となる保険があるため、気になる人はチェックしてみましょう。
生命保険
死亡時に保険金が支払われる、いわゆる生命保険への加入も大切です。通院保障を含む医療保険はあくまでも入院や手術が給付対象であり、万が一の死亡時には対応していません。
子供が小さい場合や、家族に葬儀代だけでも残したいという場合は生命保険への加入がおすすめです。
医療保険と同様に定期型や終身型があり、保障額の大きさも自分で設定することができます。結婚や出産、マイホーム購入といったライフイベントを経るごとに、万が一の必要保障額も変化します。
それぞれの節目には保険金額を見直すことで、無駄のない保障を持つことができます。医療保険と生命保険、それぞれの保障額のバランスを考えながら加入しましょう。
まとめ
入院による治療だけでなく、近年では通院しながら治療を受ける人が増え、医療保険の特約として通院保障に加入することも一般的となっています。
通院保障は医療のトレンドを反映している保障である一方、原則として入院後の通院が保障の対象となる点には気を付けなければなりません。
また、経過観察や検査目的の通院は「治療」ではないため、通院保障の範囲から外れてしまいます。
仕事や家庭との両立を目指す上でも、通院治療は非常に重要です。保障内容を理解し、適切な保障を選びましょう。