65歳以上の方で、介護や医療のサービスが必要になった方には次のような保険があります。
- 公的保険:医療保険(健康保険)・介護保険
- 民間保険:医療保険・介護保険
医療保険と介護保険では、公的保険の場合、優先順位が高いのは介護保険です。
「そうすると、病気では健康保険が使えないの?」「介護保険って医療は健康保険と同じサービスが受けられるの?」といった疑問がわきます。
介護保険が優先する、ということは、65歳以上の方が、要介護状態になり、医療に介護保険を使えるようになったときのルールのことです。
それ以外の場合は、健康保険が使えます。
また、介護保険でも、公的医療(健康)保険並みの介護サービスが受けられます。
知らないと少し混乱しそうなこれら保険の優先関係・保険がカバーしている保障の範囲は、元気な時に十分知っておいた方が安心です。
そこで、保険同士の優先関係と、適用範囲についてこの記事ではまとめてお伝えします。
外来リハビリが医療保険から介護保険へ移行した件については、別記事にて詳しく解説しております。気になる方は、ぜひそちらをご覧ください。
介護の原因となった疾患が何かがポイント【公的保険の優先順位】
日本では、40歳以上の方ならだれでも、介護保険に加入します。
40歳から介護保険に加入しますが、すぐにサービスを受けることはできないのが原則です。
一部の難病など、特定疾病といわれる加齢と関連する疾患にかかった40歳以上の方を除いては、原則として65歳以上から、介護保険の給付サービスが受けられます。
特定疾病は16種あり、老化が原因で発症し日常生活や身体に影響を及ぼすものが該当します。
詳しくは、別記事:介護保険の特定疾病とは?選定・診断基準をわかりやすく解説!をご覧ください。
この時に、公的介護保険では、医療保険との適用の優先劣後の関係が問題になります。
法律上、保険の給付を同じ原因で重ねて給付することはできないことがその根拠です。
そして、公的介護保険の場合、基本的には医療保険と併用できず介護保険が優先されます。
ただし、介護保険の適用と同じ原因ではない病気で医療・介護にかかることになった場合は、介護保険ではなく、医療保険が使えます。
例えば、痴ほう症のために要介護認定を受け、家族の介護や、デイケアを利用している要介護2の状態の方が、骨折をしてしまったとしましょう。この場合、骨折についての医療・介護・リハビリは医療保険でサポートされます。
これに対して、痴ほう症に関する医療・介護・リハビリは介護保険でサポートされます。
介護保険優先、医療保険(健康保険)と比べてサービスには差がある?
次に気になるのは、介護保険と、医療保険(健康保険)は、医療サービスの質や、かかる費用にどんな差が生じるのか、という点です。
この点、原則として介護保険が優先であり、介護保険の対象者は、在宅と施設で医療が受けられます。
医師や看護師による居宅療養管理指導・訪問薬剤管理指導などを代表とする訪問医療など、在宅でも、施設でも、医療を受けることができます。
介護保険で受けられるサービスとして、大まかにいうと「医療系のサービス」が訪問サービスと、施設サービスの一部として含まれていますので、この中で医療を受けることができるのです。
- 施設サービス:特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設などの施設に入所して受けるサービス
- 訪問サービス:訪問介護・訪問看護・訪問リハビリなど、自宅に訪問してもらって受けるサービス
さらに、一般的には介護なしで外来を受診することは要介護状態の方では困難になるので、上記のような在宅サービス・訪問サービスの中で医療を提供することになりますが、外来の診療を受けることも、施設の送迎や福祉タクシーを利用するなどの条件の下では可能です。
ただし、入院の場合、介護保険対応施設の入院(介護療養型医療施設)となるなど違いが生じることがあります。
通常の病院よりも、長期療養に向いている病院に入院します。
介護保険は、介護保険の範囲に要介護度に応じた上限があります。
上限額を超えると、自己負担となります。
しかし、介護保険内のサービスで、上限額を超える療養費がかかった場合は、健康保険の高額療養費制度と同様に高額介護費用の助成があります。
したがって、医療サービスの費用の差は、必要と認められる医療の範囲では、医療保険より自己負担が不利にならないような工夫がされています。
さらに、先ほどご紹介した通り、介護の原因となった疾患と、そうでない疾患では、保険の適用関係が異なり、介護の原因とはなっていない疾患の場合は、通常の健康保険・後期高齢者医療制度が使えます。
介護保険と医療保険の振り分けは、緊急の時などは、判断がしにくいことがあります。
たとえば、末期がんの方の容態が急に悪くなったような場合、多くの合併症・あらたにかかる感染症などもあるので、こうした場合の例として考えられます。
判断がつきにくい場合には、患者さんが迅速に医療を受けられるように、給付調整といって、ルールに基づいて、後から医療機関が医療費の調整を受けます。
そのため、介護保険を受けていることにより、緊急医療が受けにくい・不利に扱われる、ということもルールで防いでいます。
民間の介護保険と医療保険は併用可能、お金で介護の出費に備えられる
これに対して、民間保険の場合は医療保険との優先劣後の関係はありません。
併用にも制限はありません。
そして、保障内容は、公的医療保険・介護保険が現物給付であるのに対して、民間の保険は金銭ですので、どちらを使ったらいいか、優先順位を考える必要もありません。
ただ、双方の保険をどう使うかは、双方とも任意の加入ですし、また、保険料の負担も二重となるために、もしもの時に備えては検討しておいた方がよいでしょう。
そこで、そもそもどういう場合に、公的保険で介護ないし医療の需要がカバーできないため、民間の保険に頼る必要があるのか、ご説明します。
民間の介護保険・医療保険に頼りたいのはこんな時
ご家族の負担が重い時・身寄りが少ない場合
認知症の介護などは、在宅で行う場合、ご家族の負担が非常に重くなることがあります。
しかし、介護保険でも、医療保険でも、公的な保険では家事サービス・食事サービスに関する給付はありません。
ご家族の負担が重い、あるいは身寄りが少ないかなく、外部のサービスに頼らないと不安な時、家事サービスも、ちょっとした用事も頼めるヘルパーなどのサービスを保険給付がない以上お金で備えるのは、介護負担を軽くするために必要なことと考えられます。
介護保険が使えない若い方
介護保険が使えない年齢の方でも、介護を受ける必要がある場合は医療保険で備えることが考えられます。
障害がある方の医療費の助成や介護の助成などは公的給付制度でもありますが、大きな病気の時に「一時的な介護があると安心できる」などといった場合もあるでしょう。
そうした場合は、介護保険が原則として65歳以上の給付であることを考えると、医療保険で介護の需要にも備えておくことも考えておくとよいでしょう。
若いころは、貯金の額も少ないことが考えられますので、医療保険で備えるのは経済的な合理性が高いことも多いのです。
なお、民間の保険でも、介護保険の給付には、要介護認定や、これに準じた状態になることを給付の要件にしているものが多いため、介護保険よりも、このケースでは民間の医療保険を活用することが通常です。
自分の介護のニーズにあわせた給付を受けたいとき
給付サービスが非常に充実している日本の介護保険や医療保険。厚生労働省が提供する介護保険サービスの検索システムによると、26種類・54ものサービスが受けられます。
厚生労働省の「公表サービス一覧」
- 居宅介護支援(ケアマネジャー)
- 通所介護 (通称:デイサービス)
- 通所リハビリ
- 地域密着型通所介護
- 療養通所介護
- 認知症対応型通所介護
- 短期入所生活介護 (通称:ショートステイ)
- 短期入所療養介護
- 訪問介護 (通称:ホームヘルプ)
- 訪問入浴
- 訪問看護
- 訪問リハビリ
- 夜間対応型訪問介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具販売
- 小規模多機能型居宅介護
- 看護小規模多機能型居宅介護
- 介護老人福祉施設
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
- 地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護
- 特定施設入居者生活介護
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 認知症対応型共同生活介護
しかし、例えば、施設に入居してサービスを受けるのは、要介護3の方からなどのルールがあります。
身寄りの少ない方・ない方が「早めに施設に入っておきたい」と考えても、介護保険では難しく、高齢者サービス住居などの入居を考えるには、相応の費用が必要になります。
また、住宅を改築する・福祉用具の貸し出しに保険が使える範囲もルールで限られているので、ご自身の体の状態にあったものを導入するには、自己負担になることがある、など使えるサービスの範囲に限界がある場合もあります。
介護保険制度はすべての人が公平に使えるサービスを目指す制度であり、お一人お一人のニーズをすべて満たすことができにくい面がありますので、あとはお金との相談、ということも生じます。
また、将来に向かって、どこまでのサービスがカバーされるか、そのあたりも改正が頻繁な介護保険制度では不透明で不安が残ること、といった問題点が利用者の目線ではあります。
高齢になっても、病気の治療には万全を尽くしておきたい場合
先ほどご紹介しましたが、介護保険の入院は、長期療養型の入院が基本になること、また、がんの治療の場合などは、医療保険で積極的な治療を行うこと、介護保険でクオリティオブライフを向上させること、そのどちらを「軸」として、予算も優先させるか悩む場合もあります。
この点、例えば、高度先進医療を選択肢に加えられるとまた治療・介護のプランが変わってくるということもあるでしょう。
今、がんの医療も日進月歩で新しい治療法がありますし、移植・形成外科の医療などでも非常に画期的な方法が出ており「介護の前に治療を十分に」と考える方も、年齢層が高くなりつつあります。
実際、現在の65歳はまだ高齢者としては非常に若いと考えられますので、むしろ医療保険の高度先進医療特約で備えておくといった考え方をしておくのも非常に合理的です。
一般的には、医療保険を優先して考えて、介護に足りなくなりそうな費用も医療保険の一時金で出しておくようにし、足りない部分を介護保険で必要に応じて備えておく、ということが無難と思われます。
民間の保険はどんなものに加入して備える?無料相談もおすすめ保険選び
介護を視野に入れることを前提に、いくつかの年代別モデルケースを考えながら、安心の保険加入プランについて、検討してみましょう。
若いうちからまさかの事態に十分備えるプラン(20~30代前半)
このケースでは、最も合っているのは、終身型の医療保険に、若いころから加入しておくことです。
若い間は、健康の不安がありませんので、最も幅広く保険商品を選ぶことができます。
月々千円台から、高度先進医療特約にも加入し、備えておくことができます。
特に、女性の場合は、妊娠・出産前に加入しておき、異常分娩などの場合にも備えておくことがおすすめです。
子育て世代(30代後半~50代前半くらい)
子育て世代におすすめなのは、子育てのために出費も多い年代ですので、掛け捨ての保険料が抑えられた医療保険のプランを利用することです。
さらに、インターネットでも加入できる介護保険で、介護負担が生じたときに備えておくことも検討しておきましょう。
40代からの加入なら、数百円で一時金が数十万円となる、積立よりもお得なプランの保険などもあります。
なお、40代くらいから、成人病が気になる、あるいは入れる保険が限られる、といった話題もちらほら出てきます。
こうした場合は、引受緩和型医療保険などの持病があっても入れる保険で、高度先進医療特約など、高額の医療費に可能な限り絞っての加入を行うことも、保険料が抑えられておすすめです。
子育て卒業~介護保険第1号被保険者の世代(50代後半以上)
このころになると、保険を整理する方も多くなりますので、改めて介護のプラン・かける費用を具体的に試算して、メリットのある医療保険・介護保険への加入がおすすめです。
どんな介護を受けたいか、貯金でカバーできるのか、ご家族からの手がどれくらい借りられるか、またいくつまで先進的な医療を受けたいかなど、他の世代よりも具体的に考えられます。
現在では60代からでも加入可能な終身型の医療保険が多くあります。
また、高齢者サービス住宅へ入居一時金を支払入居を目指すような場合、貯金で積み立てることと、保険の一時金給付とで比べると、保険がお得、と思われる場合もみられるようです。
これら、ライフプランと、保険のプラン選びは、専門家に相談するのもおすすめです。
お住いのエリアのほけんの窓口・保険市場などに問い合わせ、FPの相談を受けると、より適切なプラン選びに役立つでしょう。
まとめ
介護保険と医療保険は併用ができませんので、65歳以上の方で要介護認定を受けた方は介護保険で医療を受けることとなります。
民間の介護保険・医療保険にはこうした制限がありません。双方を賢く併用または使い分け、年齢に応じた介護医療プランを選んでおきたいものです。
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