介護保険と医療保険の違いについて

介護保険と医療保険の違いについて

介護保険と医療保険の違いについて

介護保険

介護保険と、医療保険、どちらも日本では公的な保険で医療と介護のニーズを大部分カバーしています。

しかし、介護保険は、原則として要介護認定を受けた65歳以上の人に限定してサービスを受けられることが法律で決められています。

また、疾病で介護が若くして必要になった場合にどうするのか、など、介護保険と医療保険でどちらがカバーできるのか、といった疑問も生じます。

そこで、両者を比較・違いを検討し、どういう状態になったらどちらの保険を優先して使えばいいのか、わかりやすく考え方をご説明します。

また、それ以外にプラスの保障として加入しておくと、民間の保険が役に立つ場面や、民間の介護保険・医療保険の違いとカバーする範囲についてもお伝えします。

高橋朋成

年金アドバイザー / EQプロファイラー / 2級ファイナンシャルプランニング技能士

この記事の監修担当者:株式会社クロックアップ 代表取締役 高橋朋成

20年以上にわたり外資系生保や損保系生保などで、販売現場での営業スタッフの採用や実践を活かした生保販売や育成手法に携わった経験を損保代理店向けに特化してアレンジし2013年に株式会社クロックアップを設立。

業務内容は損保代理店の
専属コンシェルジュとして
① 保険営業職の人材紹介、マッチングサポート
② 損保営業マン向け生保クロスセル研修
③ 代理店M&Aマッチングサポート等
を行っている。

介護保険と医療保険の違い・公的保険では?

介護保険と医療保険は、双方とも公的保険として加入が義務付けられているものです。

また、加入者で保険料を支払い、「保険事故」が発生したら給付がある点で保険の仕組みも基本的には同じです。金額ではなく「単位」(介護保険)「点数」(医療保険)といったユニットによる報酬請求を行う点も同じです。

しかし、保険によるサービスを受けられる人、対象となる「保険事故」・サービス・加入対象年齢・自己負担割合など、双方で違いがあります。

以下、介護保険と医療保険を比較してみましょう。

サービスを受ける人の違い

介護保険の場合、サービスを受ける人は原則として65歳以上の要介護認定を受けた方です。

例外的に、「特定疾病」といって、末期がんや、脳血管疾患や一部の難病のように、加齢と関係しているといわれる病気にり患した40歳以上64歳以下の方も、介護保険のサービスを受けることができます。

ただし、この場合も、要介護認定を受けることがサービスを受ける条件になります

これに対して、医療保険の場合は、医療のサービスを利用できるのは年齢に関係がありません。日本に居住する方ならだれでも医療保険に加入できて、誰でも医療保険による診療を受けることができます。

このように、介護保険と、医療保険にはサービスを受ける人の点で違いがあります。

保険加入の対象年齢・保険者の違い

保険加入年齢は、介護保険の場合40歳以上です。これに対して、健康保険は0歳から亡くなるまで年齢に関係なく加入します

また、公的医療保険が社会保険と国民健康保険とに分かれ、保険者として健康保険組合などの民間運営主体が関与することがあるのに対し、介護保険は市町村・特別区、あるいはこれらの自治体で作る広域組合のみが保険者になります。

健康保険も、介護保険も、40歳以上64歳までの方は健康保険と一緒に徴収される点では同じですが、社会保険加入者の加入健康保険組合等は、介護保険の運営主体ではありません

保険給付の原因となる「保険事故」の違い

保険の給付を受ける原因となる出来事のことを保険事故といいます。

健康保険の場合、保険事故は病気・ケガであるのに対し、介護保険は、保険事故は介護が必要になったことを意味しています。

介護が必要になった状態かどうか認定するのが、「要介護認定」です。

対象となるサービスの違い

医療保険では、医療・看護・検査・薬剤といった医療サービスが保険による公費負担が行われる対象になります。

医療サービスを保険以外の自由診療で受けることはできませんが、たいていのことは公的な医療保険でカバーされています

これに対して、介護保険では、介護保険法・厚生労働省令に定められた範囲の施設・デイサービス・福祉器具の利用などの介護サービスのみが公費負担の行われる対象となります。

それ以外のサービスに、介護保険の給付を行うことは禁止されています。

なお、介護保険の給付の仕組みは、本人に現物であるサービスを原則として給付し、自己負担割合に応じて支払いをしてもらいます。自己負担額以外の事業者への報酬は、国保連から事業者が償還払いを受けるものです。

介護保険における介護サービスには、以下のようなメニューがあります。

訪問サービス

自宅で暮らす要介護者を訪問して、家事(食事・掃除・選択など)の支援、食事や排せつなどの介護、看護・リハビリ・入浴など、自宅でのサービスを提供します。

通所サービス(デイサービス)

自宅で暮らす要介護者にある方について、施設で日中を過ごしてもらい、食事や排せつなどの介護、看護・リハビリ・入浴・レクリエーションなどのサービスを提供します。

短期入所サービス

要介護者・要支援者を施設に数日の短い期間入所させます。施設内で、食事や排せつなどの介護、看護・リハビリ・入浴・レクリエーションなどのサービスを提供します。

その他

福祉器具の貸し出し、住宅改修、居宅管理指導、居宅介護支援などのサービスメニューがあります。

そのため、たとえば、入居型の施設であれば、介護保険の定める施設に入居すると、介護保険でカバーされますが、それ以外の私設ケアホームの入居費などは、介護保険ではカバーされません

また、福祉器具・住宅の改造なども、介護に本人が必要であるものを利用したくても、法律が定める条件に当てはまらないと介護保険では利用できないことがあります。

このことから、健康保険よりも、介護保険のほうが利用できるかどうかについて、利用者・ご家族などの要介護者側で検討をよくしておく必要性があります。

自己負担額の違い

自己負担額は、医療保険の場合、1割~3割負担ですが、これはかかった医療費の総額が分母になります。また、公的医療保険には、高額医療費制度があり、負担が大きい医療費を一定限度までで抑えることができます。

この制度に基づいて発行される、医療保険の保険者から発行される負担限度額認定証を使うと、実際の1割~3割相当の額よりも、医療費を抑えることが可能です。

これに対して、介護保険の場合は、実際にかかった費用が要介護認定の段階、つまり、要支援1・2要介護1~5に段階的に定められた上限額を超えてしまった部分は、全額自己負担になります。

介護保険も医療保険と同様、1割~3割が自己負担の割合ですが、上限額を超えた部分は全額自己負担となるため、上限額を超えた部分について、どのように費用を賄うかが問題になります。

高額介護サービス費用制度により、介護保険も負担限度額認定証が使えて、費用の払い戻しはありますが、所得制限があります。

すでにご紹介した介護保険でカバーされるサービスに着目して考えると、介護保険で賄えるサービスはあらかじめ決められていて、介護を受ける方のニーズに合わない面もありうることが考えられ、自費の負担も考慮しておくのが安心です。

さらに、要介護認定を受ける前に発生するかもしれない費用も考慮して、自己負担に関する将来の計画を考えておく必要があります。

保険料の違い

介護保険と、医療保険を比較すると、保険料は医療保険のほうが高くなります。

0歳から亡くなるまでをカバーする保険であり、利用の頻度も健康保険のほうが多いことが理由として挙げられます。

最も、介護の需要は、超高齢化社会を迎え、増大していることから、介護保険料も右肩上がりで推移しています

介護保険法の改正や、保険者である自治体の条例改正により、より今後保険料が高くなっても不思議はないとされるところです。

併用はできる?

要介護状態では、疾患を原因としている場合、病気に対する医療と、介護と双方が必要になることがあります。

しかし、制度上は介護保険と、健康保険を併用することはできません。

例えば、脳血管疾患でお体が不自由になり、特別養護老人ホームに入所している方について考えるとわかりやすいでしょう。

月々の利用料の中で、脳血管疾患に伴う医療行為と介護は、介護保険により医療費もカバーされています。

ただし、要介護状態になった原因となる疾患以外の病気で医療を受ける場合は、医療保険を使えることがあります。

上記の例でいうと、脳血管疾患以外の例えば白内障の治療や、歯科治療・入所中の入院などは、連携する医療施設で、医療保険を使うことができます。こうして、介護保険・医療保険の関係を調整、使い分けをしています。

しかし、自宅で在宅サービスの看護・リハビリを受ける場合は、医療と介護の境目にある事例なので、どちらが優先するかが問題になります

訪問看護の場合は?

「訪問看護」は、専門的な知識とスキルのある看護職(看護師、保健師等)による医療行為・看護を自宅で受けることができるサービスです。

訪問看護ステーションや、病院から看護師等が派遣されて患者さんの自宅で提供し、健康状態の観察、点滴・注射・服薬管理・療養生活に関する相談などを行います。末期がん等のターミナルケアにも、訪問看護が利用されることが多くみられます。

こうした看護師等による訪問看護サービスで、医療保険が適用になるのか、介護保険が適用になるのかについては、厚生労働省の説明によると、原則として両方を調整するのではなく、要介護状態にあるかどうかによります。

もしも要介護(要支援1~2,要介護1~5)に該当すると、基本的には介護保険が適用になります

優先するのはどちら?

上記から、費用の負担上、優先するのは原則として介護保険になります。

ただし、特定疾病による要介護状態になった場合は、費用の負担は医療保険が優先します。

なお、医師の往診もこうした考え方を基本とします。

訪問リハビリの場合は?

「訪問リハビリ」は、急性期を脱した方の、心身の維持・回復を目的としています。理学療養士や作業療法士、言語聴覚士などの専門職が、患者さんの自宅でサポートします。

歩くことその他の動作の訓練や、筋肉・関節・そしゃく力などの機能を維持・回復することといった自立生活を目的としたリハビリテーションを行います。

訪問リハビリの場合も、介護保険と医療保険のどちらが優先するかは問題になります。

この点、要介護認定を受けていない方は、医療保険、要介護認定を受けている方は、介護保険とされ、考え方は訪問看護と同じとされています。

優先するのはどちら?

上記から、優先するのは要介護認定を受けている限りは訪問リハビリの費用は介護保険からの給付となります。

しかし、これも訪問看護の場合などと同様に、特定疾病の場合は例外として医療保険の適用が考えられます

連携があると安心

要介護者について、介護保険のみで医療がカバーするなら、利用者の実態には合わない面があります。

また、先ほどの特別養護老人ホームの入居者の例のように、介護保険・医療保険双方が使えるケースであるといっても、肝心の医療と介護サービスがうまくかみ合わないと、利用者である高齢者は非常に不便な面があります。

そこで、訪問看護・訪問介護と、施設での介護が連携すると介護報酬を加算することにより、積極的に医療連携を行う側に報酬の加算を行う・同じ日に2以上の施設を含むサービスを利用するのも認められています(同日算定)。

こうした、高齢者にとって、医療保険と介護保険をより使いやすくする動きもみられています。

介護保険と医療保険・民間の保険では?

介護保険と医療保険には、公的保険と民間の保険があります。

今までは、公的保険についてご紹介しましたが、民間の保険にも、介護保険と医療保険があります。

民間の介護保険・医療保険の特徴は?

民間の介護保険・医療保険の大きな特徴は、公的な保険では賄えない高額の介護費用や医療費をカバーできることにあります。

介護関係で、民間の介護保険・医療保険に加入しておくと、プラスの備えになる効果が高いと考えられるのは次のような介護保険・医療保険です。

医療保険

高額医療を超える先進医療・自費診療などの医療行為もカバーできるプラン・がん保険、あるいは貯蓄型の保険

介護保険

高額の介護をカバーできるプラン、あるいは、貯蓄型の保険

介護保険以外にも養老保険など貯蓄型の保険に加入しておくと、介護の資金に充てることができます。

共通点と違い

民間の介護保険も、医療保険も、仕組みは保険事故を想定し、加入者から保険を集めて、事故発生時には給付する、という仕組みです。

ただし、高齢の要介護者がいる場面を想定して考えてみると、民間介護保険と、民間医療保険とを考えると、介護は長期間にわたることも多いところが特徴です。

より民間介護保険、ないし貯蓄型保険からの給付の必要性が、医療保険からのそれよりも高い、と考えることができるかもしれません。

また、終末期のQOLのために準備をしておきたいというのであれば、貯蓄型の保険は比較的に合理的な方法と考えられるでしょう

まとめ

公的介護保険と、公的医療保険制度はほぼ仕組みは同じですが、対象とする保険事故・給付されるサービス・保険料などの違いがあります。

介護は年齢に関係なく必要となりうること、そして長期間にわたる可能性があり、かつ現在の公的介護保険で使える施設・サービスも限られています。

より自分が受けたいサービスを具体化、ファイナンシャルプランナーなど専門家と話し合い、お早めに将来に備えておくことをお勧めします。

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