40歳から加入が義務付けられている介護保険。
毎月の給料から天引きされているため、給与明細を見て初めて気がついた方もいるかもしれません。
そんな介護保険の保険料率は一定ではなく、毎年定期的に見直しが実施されています。
介護保険の保険料ですが、年齢区分によって計算方法や納付方法が異なるのです。
介護保険料率の変化の推移や、計算方法や仕組みに関する疑問について、今回は分かりやすく解説していきます。
毎年改定される介護保険料率、令和4年度は?
協会けんぽの発表によると、今年、2022年(令和4年)3月分からの介護保険料率は1.64%です。
年々増加傾向にあった保険料率ですが、昨年2021年(令和3年)3月分時点の1.80%から引き下げられました。
この点についても触れながら、過去の数値を用いて、介護保険の料率の傾向をみていきたいと思います。
現在と過去の介護保険料率を比較
それでは、過去の介護保険料率を見ていきましょう。
- 2022年3月(令和4年):1.64%
- 2021年3月(令和3年):1.80%
- 2020年3月(令和2年):1.79%
- 2019年3月(令和元年):1.73%
- ︙
- 2009年3月(平成21年):1.19%
2022年(令和4年)の介護保険料率は前年と比較して0.16%の減少でした。
2022年(令和4年)の介護保険料率が、3年前の数値よりも低い数値であるということがわかります。
このことから、今回の介護保険料率の改定では、大幅に引き下げられたということが見てとれますね。
協会けんぽは2022年(令和4年)の介護保険料率に関して、次のように示しています。
令和4年度は、令和3年度末に見込まれる剰余分(227億円)も含め、単年度で収支が均衡するよう 1.64%(4月納付分から変更)とする。
2021年まで上昇傾向にあった介護保険料率が減少した要因には、以上のような背景があったのです。
ただ、約10年前の2009年度の料率が1.19%だったことを考慮すると、この10年間で0.4%に及ぶ大幅な変更があったのです。
介護保険料が、今後上昇する可能性も大いに考えることができます。
ちなみに、2022年度3月改定分が最新ですが、毎年改定されることを念頭に、必要であれば協会けんぽのホームページでお知らせを確認したり、新聞記事等を参照しましょう。
(出典:全国健康保険協会 協会けんぽの介護保険料率について https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/1995-298/)
介護保険料率が上がる理由
わずかな介護保険料率の変更であるとはいえ、介護保険料の値上げは長期的に見ると保険料負担がさらに重くなるため、抵抗を感じる人も少なくありません。
そもそも。介護保険の料率が定期的に変更される理由の1つに日本社会の高齢化があります。
介護保険料は、単年度で収支が均衡するようにと健康保険法で決められています。
そのため、介護保険料率を変更することによって、その不足を補う必要があるのです。
高齢化に伴って介護保険サービスの利用者が増えていることもあり、少しでも料率改定によって、収支を安定させる狙いがあります。
介護保険料の計算方法や納付の基本的な仕組み
毎年、介護保険料率は変更されていますが、被保険者の年齢区分に応じて納付方法や保険料の計算方法も異なります。
そのため続いては、介護保険料が決まる仕組みについて解説しますね。
標準報酬月額・標準賞与額によって決まる
介護保険料を決定する際にポイントとなるのが、標準報酬月額・標準賞与額と呼ばれるものです。
標準報酬月額・標準賞与額は、毎月の保険料(健康保険や介護保険、厚生年金保険)を計算するための基準となる金額のこと。
介護保険料は、標準報酬月額・標準賞与額に協会けんぽが定めた保険料率を掛けて計算されます。
標準報酬月額・標準賞与額はそれぞれ、以下のように設定されているのです。
標準報酬月額
被保険者が事業主から受ける毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分する
標準賞与額
税金を引く前の賞与総額から1000円未満を切り捨てた額で決まる
この計算方法によって、介護保険料だけでなく、健康保険料や厚生年金保険料がいくらなのかも決定します。
そのため、標準報酬月額・標準賞与額は、普段から把握しておくと良いでしょう。
なお、介護保険料は健康保険料や厚生年金保険料と同じく、被保険者負担と事業主負担は半分ずつです。
第一号被保険者(65歳以上)は年金から天引き
65歳以上が該当する介護保険第一号被保険者の保険料は、都道府県の各自治体ごとに異なります。
居住している自治体の介護サービスに必要な給付額から算出されますが、一律にした場合、負担が大きすぎるケースが出てしまうのです。
そのため、給与ごとに分けて、それぞれに所定の保険料率を掛ける方法が取られています。
基本的に、第一号被保険者は年金から天引きされる「特別徴収」にて保険料を納付。
ただし、年金年額が18万円よりも少ない場合、特別徴収ではなく、納付書にて納付します。
第二号被保険者(40歳から64歳以下)は給与から天引き
40歳から64歳以下は、介護保険の第二号被保険者と呼ばれます。
第二号被保険者のうち、給与所得者は健康保険料と一緒に給与から天引きされる形で介護保険料を納付。
先述の標準報酬月額表は都道府県によっても異なり、さらに健康保険組合でも異なるため、介護保険料は人によって違います。
個人事業主などの自営業者の場合、国民健康保険料に上乗せして介護保険料を納付することになるのです。
国民健康保険料の納付金額書類とは別に納付書が届くため、忘れず納付するようにしましょう。
記事まとめ
40歳以上は介護保険料を納付する必要があるものの、介護保険料率について深く考えたことがある人は、決して多くないでしょう。
介護保険の保険料率は年々上昇しており、高齢化に伴う介護保険サービスを受けるための支出額の増加で、さらなる料率改定が予想されます。
被保険者区分によって納付方法が異なり、さらに標準報酬月額も保険料に関わってくるため、介護保険料は千差万別。
介護保険料の納付が始まったときに慌てることのないよう、介護保険料率の推移は普段から確認しておくことが大切です。