介護保険の給付内容・給付額は、どのように決まるのでしょうか。
介護保険では、介護を受ける本人には、お金を給付してサービスを受けてもらうのではなく、サービスそのものが現物給付されるという方法を取っています。
お金は、本人にサービスを提供した介護サービス事業者に国保連から介護サービス報酬に対する支払い、という形で最終的に支払われます。
国保連=国民健康保険連合会をいいますが、介護保険と国民健康保険のお金の流れ・仕組みはよく似ています。
介護保険の給付額は、簡単にいうとサービスごとに給付額が決まりますが、では具体的に個別のサービスに対する給付額はどのように決まるのでしょうか。
介護保険のサービス・給付額は法令で決められている
介護保険による介護サービスは、介護を必要とする状態に応じて、サービスが決まります。
サービスの選択はどんなサービスでもよいというわけではなく、介護保険で認められたサービス事業者・サービスの中から選択することとなります。
介護サービスを具体的に決定することにより、介護保険からのサービスごとの給付額が計算され、決まる仕組みになっています。
このように、介護保険の給付のあり方は少し複雑ですが、この仕組みは適切な額のサービスを公的な保険により公平に使ってもらう介護保険制度の趣旨に合っています。
ところで、サービスを受ける際に、こうした制度のことも考えて、サービスのコーディネートや、介護される方の状態の管理をする役割をするのが主に要介護認定の際にお世話になるケアマネージャーです。
ケアマネージャーは、介護の専門家で、国試合格(国家試験合格、をよくこのように略します)している有資格者です。
介護保険サービスを受ける際に、利用者にとってとても頼りになる存在です。
介護保険で受けることができる介護サービスの内容・給付の種類
介護保険制度では、給付のあり方は原則として現物給付です。本人に介護サービスを原則として先に提供します。
その後、本人が自己負担割合に応じて、支払いを行い(サービス報酬の1割~3割)、事業者が残りの金額について国保連から支払い(償還払い)を受けます。
また、介護保険制度により給付されるサービスは、2つに分かれています。一つが介護給付、もう一つは予防給付です。
介護保険における要介護認定は、要支援1・2と、要介護1~5にレベルが分かれており、介護を現在必要としているものと認められた方は、要介護1~5に認定・分類されます。
適切な援助をすると、自立生活が営める方・より重い介護に移行しなくても生活できる方には、「要支援」の認定があり、介護保険制度による予防給付が行われます。
介護保険による予防給付では、基本的に自宅に居ながらの介護の補助的な手段が給付されます。介護の予防も、重要な介護保険の役割の一つです。
これに対して、介護給付の中には、介護が現に必要な方への給付であるため、施設への入所など、より長い時間頻繁に介護を行う手が確保できる介護保険サービスが含まれるのです。
それぞれをもう少し詳しく介護保険の給付の種類ごとにサービスの内容をみると、次の通りです。
1.予防給付を行うサービス・在宅、要支援の方向け
「予防給付」は、要介護状態の発生を予防する観点から、要支援の認定が行われた方を対象に給付されます。介護予防も、介護保険制度の役割の一つです。
予防と介護給付サービスの大きな違いは、入居型の施設には入れない点や、予防のためのリハビリを手厚く受けられる点です。
その他のサービスは重なる点が多いのです。
実際には、要支援では、介護サービスを受けられる額に上限があり、額としても大きくはないので、公費負担でカバーされるサービスは「補助的なもの」という結果にとどまります。
ご本人・ご家族、そしてケアマネージャーとの相談で、具体的に利用するサービスを決めます。
そして、ご本人の自立・介護予防に役に立つサービス・事業者をケアマネージャーがコーディネートします。
2.介護給付を行うサービス・施設入所含む要介護の方向け
介護給付は、要介護状態の方を対象として行われる給付です。一人では生活ができない状態であるため、施設に入所通所を行うか・在宅で介護の人手を確保して、生活をサポートしてもらいます。
介護保険における介護給付の代表的なサービス一覧は次のとおりです。
- 居宅介護:入浴介助・訪問看護・デイサービスなど
- 通所介護:デイサービス・ショートステイなど
- 入所介護:老人保健施設・特別養護老人ホーム・グループホームなど
- その他:福祉用具の貸し出し・購入補助・住宅改修など
上限額が要介護のレベルに応じて決められている
要介護認定の段階別に、介護保険の給付には限度額があり、上限を超えると自己負担となるのが原則です。
より具体的には月ごとの限度額があり、そのうち、1~3割を自己負担で賄います。
この上限額のため、または、介護保険サービス利用の条件とされる要介護のレベルとなっていないため、介護保険の対象となっているサービスでも利用できないことがあります。
すでにご紹介したように介護保険のサービスは多彩なものがあります。
しかし、予防給付として使えないもの、要介護のレベルが低いので使えないもの、そして、要介護度に応じた上限の金額を突破するので使えないといった制限があるものが介護保険のサービスには生じてくることに留意しましょう。
どうしても利用したい場合は、介護保険ではカバーされず自己負担となります。また、入所した際の食費や生活費は保険でのカバーはありません。
将来に向けては、民間の介護保険・養老保険の活用も検討したいところです。
要介護認定と金額を決める仕組み
介護保険の制度は、年齢でサービスを受ける方が定められています。
サービスを受けるのはいつからかというと、65歳からの受給開始を原則としています。
年齢で給付の可否が決まる・原則65歳以上、40歳以上64歳以下の特定疾患の方
介護保険制度では、サービスを受ける対象となるのは原則として65歳以上の方(第1号被保険者)です。年齢が来れば無条件にサービスを受けるのではなく、要介護認定が必要です。
一方40歳以上64歳までの方(第2号被保険者)は、サービス・給付を受けることは原則としてできません。
ただし、介護保険法では「特定疾病」の方で、40歳以上64歳までの方は介護サービスを受けられることとしています。
要介護認定は保険者=市町村・特別区で行う
給付の限度額は、要介護のレベルに応じて決まっています。また、要介護のレベルを決める、要介護認定は、保険者である市町村・特別区で行います。
本人が申請すると、公平に給付額を決められるよう、コンピューターでの判定、専門家を判定の主担当者にすることが法令で定められ、判定も適切に管理・監督されてています。
現在の介護保険の支給上限額(なお、実際は、事業者の報酬計算のために「単位」とあらわされています)は、以下の通りです。これに1~3割を乗じて、自己負担額が計算できます。この額まで、要介護段階に応じて、サービスが利用できます。
要支援1 | 50,320円 |
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要支援2 | 105,310円 |
要介護1 | 167,650円 |
要介護2 | 197,050円 |
要介護3 | 270,480円 |
要介護4 | 309,380円 |
要介護5 | 362,170円 |
まとめ
上記でご紹介した、介護保険のサービス給付の財源は、保険者である自治体・都道府県・国の3者で50%を支え、被保険者からの保険料で50%を支えています。それ以外は税金で支えています。
これを、保険者から国保連に支払い、さらに介護事業者の請求に応じ、支払う仕組みになっています。
こうしたみんなが支えて、使う仕組みですので、少々仕組みが複雑です。しかし、サービスの給付額の決め方も、公平に、みんなが使えるように配慮されていることをご理解いただけましたら幸いです。