日本の公的医療保険制度では、現金給付と現物給付の2種類の給付が設けられています。
現金給付は出産や死亡のときに支給されますが、所定の申請を行わないと支給されません。
仕組みや請求手続きを正しく理解した上で現金を受け取り、経済的な負担を軽減させましょう。
本記事では、医療保険の現金給付の仕組みや現物給付との違い、民間医療保険における現金給付の種類などを解説します。
現金給付の対象外になるケースや受け取り方法もご紹介しますので、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
公的医療保険制度の現金給付とは?仕組みを解説
日本の公的医療保険制度では、現物給付と現金給付の2種類が給付されます。
現物給付は医療そのものを給付する仕組みのことで、医療機関の窓口で保険証を提示すると一定金額の自己負担のみで医療行為を受けることができます。
一方で現金給付とは、その名の通り現金が支給される給付のことです。
出産時や死亡時、医療費が一定額を超えた場合などに支給されます。
現金給付の種類
公的医療保険制度の現金給付には、主に以下のような種類があります。
- 出産手当金
- 出産育児一時金
- 傷病手当金
- 高額療養費
- 埋葬料
- 家族埋葬料
なお、出産手当金や傷病手当金などの一部の現金給付は会社員等の健康保険加入者を対象としています。
自営業者などが加入する国民健康保険では任意給付となっているため注意が必要です。
現物給付とは何が違うの?
現金が支給される現金給付と医療サービスそのものが支給される現物給付では、自由度や柔軟性に違いがあります。
現物給付の場合、診察や検査、薬剤、手術、入院などの治療に必要な医療行為に限定されます。
現金給付では支給された現金の使い道は限定されずに比較的自由に使える点が、現物給付と異なる点です。
また、現金給付は支給される人が限られる場合があるという点も現物給付とは異なります。
現物給付は原則としてすべての日本国民が給付されますが、現金給付のうち出産手当金や傷病手当金などは健康保険に加入している会社員等に限られます。
給付内容の自由度や支給の対象となる範囲が現金と現物の給付の違いと言えます。
民間医療保険の現金給付の種類と条件
公的医療保険制度をカバーする役割を持つ民間医療保険では、主に以下のような給付金を受け取ることができます。
- 入院給付金
- 手術給付金
- 通院給付金
- 先進医療給付金
それぞれの内容について解説していきます。
入院給付金
入院給付金とは、ケガや病気の治療のために入院をしたときに支給されるお金のことです。
「入院1日あたり◯円」といった金額を契約時に決めておき、入院日数に応じて現金を受け取ることができます。
公的医療保険制度では治療に必要な医療行為は保障されるものの、入院中の差額ベッド代や食費、お見舞いに来る家族の交通費などは保障されません。
そういった費用は民間医療保険の入院給付金でカバーすることをおすすめします。
なお、医療保険によって1入院ごとの支払い限度日数が60日・180日などと決められています。
限度日数を超えた分は現金を受け取れないため注意が必要です。
手術給付金
手術給付金は、ケガや病気の治療のために手術をしたときに支給されるお金のことです。
一般的に、入院給付金日額に10倍・20倍などの倍率をかけて計算された金額が支給されます。
以下のいずれかに該当する場合、手術給付金が支給されます。
- 公的医療保険の対象である約1,000種類の手術
- 保険会社指定の88種類の手術
上記のどちらが適用されるかは医療保険によって異なるため、あらかじめ約款などを確認しておきましょう。
通院給付金
通院給付金は、ケガや病気の治療のために通院したときに支給されるお金のことです。
多くの医療保険では「入院後の通院」を対象としているため、通院のみで治療を終えた場合は支給されない点に注意が必要です。
民間医療保険に加入する際は、通院給付金の支給条件についてもあらかじめ確認しておきましょう。
先進医療給付金
先進医療給付金は「先進医療」に該当する治療を受けた場合に支給されるお金のことです。
先進医療とは、厚生労働大臣が定める高度な医療技術を必要とする医療行為のことを指します。
公的医療保険制度では、先進医療の技術料は保障の対象外です。
先進医療は場合によっては数十万円〜数百万円かかるケースもありますが、それらすべてが自己負担となってしまいます。
民間医療保険の先進医療給付金では、高額になりやすい先進医療の技術料を保障します。
万が一のときに治療の選択肢が増え、安心して治療に専念できるようになるためおすすめです。
対象外となってしまうケース
公的医療保険制度では、以下のようなケースに該当すると給付を受けることができません。
- 業務中・通勤中のケガや病気
- 病気とみなされないもの
- 治療を目的としていないもの
- 国が認めていない特殊な治療
業務中・通勤中のケガや病気は「労災保険」の対象となり、公的医療保険の保障対象外です。
また自然分娩や美容整形、予防注射などは病気の治療とみなされないため、公的医療保険で支給されません。
トラブルを避けるためにも、あらかじめ医療保険の対象外となるケースを把握しておきましょう。
受け取り方法と請求期限を把握
公的医療保険の現金給付を受けるためには、それぞれ所定の手続きが必要となります。
主な現金給付の請求手続きの方法は、以下の表の通りです。
出産手当金 | 健康保険組合に「出産手当金請求書」を提出する。 |
---|---|
出産育児一時金 | 健康保険組合に「出産育児一時金支給申請書」を提出する。 |
傷病手当金 | 健康保険組合に「傷病手当金申請書」を提出する。 |
高額療養費 | 健康保険組合に「高額療養費支給申請書」を提出する。または「限度額適用認定証」の交付を事前に受ける。 |
埋葬料(費) ・家族埋葬料 |
健康保険組合に「健康保険埋葬料(費)・家族埋葬料支給申請書」を提出する。 |
場合によってはほかの書類の添付が必要となるケースもあります。
事前に加入している保険組合に確認しておくと良いでしょう。
現金給付は2年で時効?時効起算日
公的医療保険制度による現金給付は2年で時効を迎え、受け取る権利が消滅してしまいます。
「いつから時効が始まるのか」という起算日を把握し、なるべく早く手続きを進めることが大切です。
医療保険の現金給付の時効起算日は、以下の表の通りです。
出産手当金 | 労務に服さなくなった日ごとに翌日 |
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出産育児一時金 | 出産の日の翌日 |
傷病手当金 | 労務不能であった日ごとに翌日 |
高額療養費 | 診療を受けた翌月初日 |
埋葬料(費) ・家族埋葬料 |
死亡した日の翌日 |
上記の起算日より2年が経過してしまうと、時効によって受給の権利が消滅してしまいます。
公的医療保険制度の現金給付を受けられる場合は、早めに請求手続きを進めておきましょう。
まとめ
公的医療保険制度には、出産手当金や傷病手当金などの現金給付があります。
現物給付と違って比較的自由に使える一方で、支給対象が限定されていたり、対象外になるケースがあったりするため事前に確認しておくことが大切>です。
また、民間の医療保険でも入院や手術、通院の際に給付金を受け取ることができます。
公的医療保険制度の不足分をカバーする役割を持っているため、それぞれの特徴を理解した上で経済的なリスクに備えておきましょう。