日本には国民皆保険制度があるため、全員が公的な医療保険(健康保険)に加入しています。一方で、生命保険会社が販売する民間の医療保険も存在します。
医療保険の制度にあまり詳しくない方は、それぞれの違いが分からず、民間の医療保険に加入すべきなのか判断できないケースもめずらしくありません。
そこで本記事では、公的な医療保険(健康保険)と民間の医療保険の違いを詳しく解説します。民間の医療保険に加入すべき方に向けて、保険商品の選び方も紹介するので役立ててください。
結論:公的な健康保険と民間の医療保険は、保障内容などが異なる
日本ですべての人が加入することになっている公的医療保険(健康保険)と、任意で加入する民間の医療保険は保障内容などが異なります。
したがって、民間の医療保険に加入する前に、両者の違いを理解しておくことが大切です。
それぞれの保険の特徴を押さえておくことで、ムダな保険料を支払わずにすむなどのメリットがあります。
まずは、公的医療保険(健康保険)と民間の医療保険の概要を確認し、2つの保険の違いを具体的に比較していきましょう。
公的医療保険(健康保険)とは
公的医療保険(健康保険)とは、病気やケガで医療保険を利用した際に発生する医療費を一部負担してくれる保険です。
日本では、すべての人が公的医療保険(健康保険)に加入する「国民皆保険制度」が導入されています。
したがって、日本人であれば何らかの公的医療保険(健康保険)に加入していることになります。
公的医療保険は患者が自由に医療機関を選択でき、保険金が現物給付されるのが大きな特徴です。
主な種類
公的医療保険(健康保険)は、大きく以下の4種類に分けられます。
公的医療保険の種類 | 保険者 | 被保険者 |
---|---|---|
健康保険 | 健康保険組合、全国健康保険協会 | 民間企業で働く人 |
国民健康保険 | 国民健康保険組合、市町村 | 健康保険、船員保険、共済組合等に加入していない人 |
船員保険 | 全国健康保険協会 | 船舶所有者に船員として使用されている人 |
共済組合等の短期給付 | 国家公務員・地方公務員→各共済組合 私学教職員→私立学校教職員共済 | 国家公務員、地方公務員、私学教職員 |
出典:https://www.ajha.or.jp/guide/4.html
民間の医療保険とは
民間の医療保険とは、生命保険会社が販売している医療保険のことです。
公的医療保険(健康保険)と違って加入は任意で、必要な保険を自由に選択できます。
ただし、契約には審査があります。健康状態などに何らかの問題がある場合は、審査に落ちてしまうケースもめずらしくありません。
なお、保険金は生命保険会社が設定している支払事由に該当した場合に支払われます。
保険金を受け取るには、被保険者もしくは受取人が請求手続きを完了させる必要があります。
2つの保険の違いを比較しよう
では、公的医療保険(健康保険)と民間の健康保険にはどのような違いがあるのでしょうか。
この章では、両者の加入対象者や保険料負担、主な保障内容を確認します。
加入対象者
公的医療保険(健康保険)の加入対象者は、民間企業の勤労者や国家公務員・地方公務員などです。
民間の医療保険も企業で働く方や公務員の方でも加入できますが、契約は任意です。
保険料負担
公的医療保険(健康保険)の保険料は、年齢と所得をもとに自己負担割合が決まる仕組みです。
下表に自己負担金の割合をまとめたので、確認してみましょう。
区分 | 自己負担割合 |
---|---|
義務教育就学前 | 2割 |
義務教育就学前~70歳未満 | 3割 |
70歳~74歳 | 2割 ※現役並み所得者:3割 |
75歳以上 | 1割 ※現役並み所得者:3割 |
出典:https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/dl/info02d-37.pdf
民間の医療保険の保険料は、保障内容によって異なります。一般に、保障内容が手厚くなるほど保険料が高くなる仕組みです。
また、被保険者の健康状態も影響します。
健康状態が悪いと、その分、保険金の支払事由に該当する可能性が高まると判断されるため、保険料は高くなりやすいです。
一方、健康状態が良い場合、悪い方と比較すると保険料がお手頃になります。
年齢が上がるほど健康上のリスクが高いと判断されるので、年齢が低いほど保険料が抑えられます。
主な保障内容
続いて、保障内容を比較してみましょう。下表に公的医療保険(健康保険)と民間の医療保険の主な保障内容をまとめました。
公的医療保険 | 民間の医療保険 | |
---|---|---|
主な保障内容 | ・療養の給付 ・傷病手当金 ・出産育児一時金 ・出産手当金 ・高額療養費 ・埋葬料・埋葬費の支給 など | ・通院保険金 ・入院保険金 ・手術保険金 ・先進医療給付 など |
上表から公的医療保険と民間の医療保険とでは、保障内容に違いがあることが分かります。
したがって、それぞれの保障内容を把握したうえで、加入する民間の医療保険を選択することが大切です。
ここでは、各保障内容を簡単に紹介します。
療養の給付(公的)
ケガや病気で医療保険にて治療を受けた場合に適用されます。
窓口で健康保険証を提示するだけで、医療費の1~3割の支払いで診療を受けられます。
傷病手当金(公的)
ケガや病気によって、被保険者が仕事を3日以上連続して休業しなければいけない場合に適用されます。
給付金は4日目以降の休業日に対して支払われる仕組みです。
1日あたりの給付金額は、「支給開始日の以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3」でもとめられます。
なお、傷病手当金は事業主から十分な報酬を受けられない場合に適用される制度です。
出産育児一時金(公的)
妊娠85日以後に出産すると支給されるのが、出産育児一時金です。通常、一児につき42万円支給されます。
出産手当金(公的)
出産のために仕事を休み、その期間(出産の日以前42日目~出産日の翌日以後56日目までの範囲内)に給与が支払われない場合に支給されます。
1日あたりの給付金額は、「支給開始日の以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3」でもとめられます。
高額療養費(公的)
ひと月における医療費が一定の水準に達した際に、超過分の払い戻しを受けられる制度です。
自己負担額の上限は、年齢と所得区分をもとに決められています。
埋葬料・埋葬費の支給(公的)
死亡した被保険者を埋葬する場合に支給されます。
通院保険金(民間)
ケガや病気を治療するために医療機関へ通院した場合に、支払われる保険金です。
支払限度日数が設定されていることが多く、保険金額は1日あたりの日額をもとに決まります。
入院保険金(民間)
ケガや病気を治療するために入院すると支払われるのが入院保険金です。
1日あたりの給付金額はあらかじめ指定されており、医療機関での入院日数に応じた保険金を受け取れます。
手術保険金(民間)
ケガや病気を治療するために手術を受けると支払われます。
入院給付金に所定の倍率をかけた金額が手術保険金として支払われるのが一般的です。
先進医療給付(民間)
生命保険会社指定の先進医療を受けた場合に支払われます。
基本保障ではなく、特約に分類されるためプラスで保険料が発生することが多いです。
なお、特約には先進医療のほかにもがん特約や女性疾病特約、三大疾病特約などの種類があります。
公的な健康保険と民間保険を使い分ける方法とは
前述のとおり、公的医療保険(健康保険)は強制加入ですが、民間の医療保険の加入は任意です。
そのため、ライフステージや家族構成などをもとに、公的医療保険(健康保険)でフォローできない部分を民間の医療保険で保障するのがおすすめです。
民間の医療保険は、公的医療保険(健康保険)で補えない部分、つまり自己負担する医療費に対する備えとして加入しましょう。
したがって、預貯金が十分にある方、自己負担する医療費の割合が少ない高齢者などにとっては、生命保険会社が販売している医療保険の必要性は低いといえます。
民間の医療保険の選び方を解説
公的医療保険(健康保険)にプラスして民間の保険を契約する場合は、次のような項目をしっかり比較検討することをおすすめします。
- 保険期間…定期タイプ、終身タイプ
- 保障内容…通院保障、入院保障、手術保障、各種特約
- 給付タイプ…一時金タイプ、日額タイプ
民間の医療保険は自分や家族のライフステージや家計の状況、想定されるリスクなどを踏まえて、必要な保障が備わったものを選ぶことが大切です。
いらない保障が多くついた医療保険を契約しても、保険料をムダに払ってしまうことになるので、加入する医療保険は慎重に選ぶようにしましょう。
まとめ
公的医療保険(健康保険)と民間の医療保険は、保障内容や保険料などに違いがあります。
基本的には、公的医療保険(健康保険)でカバーできない自己負担分を民間の医療保険でカバーするという考え方がおすすめです。
また、民間の医療保険を選ぶ際は保険代理店に相談することをおすすめします。保険代理店であれば、複数の保険会社から自身にぴったりの保険商品を選ぶことが可能です。
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