保険は、ライフステージごと・年齢別にどんな保険に入るとよいか考えると適切に選べることが少なくありません。
実際に医療保険の加入率の統計は、年齢別とライフステージ別に傾向があることが推測され、その背景を分析して理解すると保険の選び方の参考になります。
また、性別ごとにも、年収別などでも同じで、こちらも加入率の数字の背景・保険加入の必要性を理解すると、適切な保険の選び方の参考になります。
そこで、加入率統計の分析を通じて、ここでは各年代・ライフステージごとの保険の選び方を解説します。
加入率統計から読みとれる社会的な背景と保険選びの問題点および加入時期やプランの選び方などでの対処法を解説します。民間医療保険加入の参考にしていただけますと幸いです。
年代別・男女別でみる、医療保険加入率・その背景
日本では、民間医療保険の加入率は、73.1%であることがわかっています。
これは、国民皆保険制度で、全員公的健康保険の加入があることを前提にすると、きわめて加入率は高いと考えてよいでしょう。
アジア諸国を見ると、民間医療保険でだけで医療保険のカバー率の単純な比較はできないものの、約95%の中国、約88%が加入しているといわれる韓国よりは低率、約71%が加入しているといわれるベトナムとほぼ同水準の加入率です。中国の加入率が突出しています。
一方、世界に目を移してコロナウイルス感染症で大きな被害を出した米国は、民間と、低所得者向け公的保険メディケア・メディエイドを合わせ、医療保険加入率が80%台後半程度といわれています。
原則として公的健康保険のない事情はありますが、世界一お金持ちの国・リスク管理も非常に盛んなアメリカでの加入率としては低いとみていいかもしれません。
ちなみに、かつて米国の植民地であったフィリピンはさらに医療保険が手薄、公的医療保険フィルヘルスがコロナ禍の中破綻、医療を賄うお金が不足しています。
民間医療保険も20%未満の加入率であり、かかりたくても医療にかかれない人が多く生じる危機があります。
フィリピンはコロナウイルス感染者数も、東南アジアの中では多いほう、その中で起きた医療危機です。
コロナ禍で医療保険に改めて注目が集まるなか、全年代で、日本人の医療保険加入率は73.1%であるのに対し、女性の40代では8割を少し超える高い加入率です。
年代別・男女別に加入率を見ておくと、保険に対する考え方、医療保険商品の特性が数字から見えてくるようです。
加入率は何をきっかけに高く・低くなる?
加入率には、年代別・性別で違いがあります。男性の年代別の医療保険の加入率は、次のとおりです。
年代 | 医療保険への加入率 |
---|---|
20代 | 44.9% |
30代 | 69.3% |
40代 | 77.7% |
50代 | 77.1% |
60代 | 71.7% |
(生命保険文化センター令和元年度「生活保障に関する調査(疾病入院給付金の有無・全生保)」からまとめ)
男性の場合、世帯主としてバリバリ働く40~50歳代の加入率が高率です。
この加入率から推測すると、40歳代は特にお子さんに出費も多い時期でもあるので、まさかの時の医療の出費や、生活保障に関心がありそうです。
これに対して、女性は次の通りです。
年代 | 医療保険への加入率 |
---|---|
20代 | 51.3% |
30代 | 74.2% |
40代 | 81.9% |
50代 | 80.4% |
60代 | 78.8% |
(生命保険文化センター令和元年度「生活保障に関する調査(疾病入院給付金の有無・全生保)」からまとめ)
なお、この数字は、医療保険・生命保険の中での疾病入院給付金について調べたものです。がん保険のみに絞ると、50%前後の数字で各年代とも推移し、60歳以降になると加入率が低下する傾向も共通しています。
この統計から、女性のほうが加入率が高いことが比較的にはっきりしています。特に20代、30代では、それぞれ6.5ポイント、4.9ポイントの差がつき、男性よりも加入率が高い結果になっています。
この医療保険の加入率の背景には、妊娠出産の可能性がある女性が、異常分娩や、女性特有の病気に婚姻年齢のあたりを中心に備えておこうという意識があるようです。
また、40代・50代でも8割の加入率を超えていることも目を引きます。女性特有のがんに、女性専用保険やがん保険を使う方が多いと思われますが、何らかの形で医療保険により対応したいという意識の表れと考えられます。
また、60歳以上になると、医療保険加入率が低下している傾向が男女ともにあります。別の調査によると、80歳以上では、加入率が60%程度に急激に下がることもわかっています。
年齢が高いほど病気やケガのリスクは大きくなるとはいえ、医療保険には60歳以降になると年齢制限で加入できなくなる医療保険商品もあります。
健康状態も問題になる可能性があります。医療保険は、告知事項といって、一定の病気や、健康診断などで判明した体の異常を申告して入ることが加入条件になるからです。
もっとも、今は引受条件緩和型、といって持病がある人・過去に既往症がある人も入りやすい保険が登場していますが、保険料は少し高めのようです。
さらに、65歳を保証期間の終期とする保険もあります。65歳以降も入りやすい医療保険があるものの、その後は定年退職もあり、高額医療費制度もあるため、少し保険から遠ざかるひとが少数ながら出てくることも要因として考えられます。
これらの年齢別加入率の数字から、40歳代くらいまでの健康なうちに抑えた保険料で一生続くタイプの民間医療保険を用意して対策しておくことは検討してよいことと思われます。
世帯年収別にみる医療保険加入率
では、2人以上の「世帯」ですと、医療保険加入率はどうなっているでしょうか。実は、2人以上の世帯では、単身者より医療保険の加入率が高いことがわかっています。88%もの世帯が医療保険に加入しているのです。
世帯年収200万円未満 | 81.9% |
---|---|
200〜300万円未満 | 82.8% |
300〜400万円未満 | 84.5% |
400〜500万円未満 | 90.9% |
500〜600万円未満 | 91.3% |
600〜700万円未満 | 92.0% |
700〜1,000万円未満 | 90.4% |
1,000万円以上 | 92.8% |
(生命保険文化センター平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」からまとめ)
まとめた数字を見ると、年収400万から500万のレンジから、医療保険加入率が90%以上に上がります。
このあたりの世帯年収は国民の年収の平均値になりますが、そのあとは自治体により若干の差があるものの、高額医療費の自己負担分などが上昇していく傾向にあります。
加入率もこれに連動しているように見えています。医療保険の加入率から推測すると、そのあたりから備えを強化していく様子が推測されます。
また、医療保険に加入する余裕は、所得の上昇とともに出てくる傾向にもありますので、加入率の比較(特に所得層200万円未満~400万円までの比較や、700万円~1000万円未満の層とそれ以上の層との比較)からみても、もう少し余裕が出たら、医療保険に入りたい、とお考えの方もいそうです。
なお、この調査では、世帯主が若年層(29歳以下)の民間生命保険全体(医療・生命保険など、生命保険全体を含む)の世帯加入率は72.2%と前回調査から8.4ポイント増加しているという結果も出ていて、注目されました。
若年層も家庭を持つことなどをきっかけとして医療保険などによる健康の備え・生命保険などによるまさかの時の備えに関心が高くなっているため、加入率が上がったことがうかがえます。
年代別・ライフステージごとのリスクの別で考える、保険の選び方
医療保険の加入率が高い・加入率が低い年代をそれぞれよく考えると、その年代の方々が、リスクをどのようにとらえているかがわかります。
つまり、加入率から逆算思考でリスクを考えると、医療保険選びの根拠になるといってよいのです。
先ほども統計の背景として挙げましたが、女性のリスクが高い年代の加入率と、男性のリスクの高い年代の加入率には違いがありそうです。
20代で加入率に有意な差があるのはそういうことと考えられます。
加入率の高い年代・ライフステージごとのリスクを理解しよう
さらにリスクの中身を見ると、20代~30代の女性には妊娠・出産のイベントが考えられます。
これに対して、40代の男性だと、働く人が万が一倒れたら家族の生活が危機に陥るので、その備えするようになります。
このように、加入率が上がる年代にはそれ相応のリスクがある、と思ってよいのです。
ライフステージとは、おおむね年代別に起こる生活状況の変化ですが、完全に年代とは一致しないものです。
そこで、年代別の加入率・リスクだけに限らず、もう少し細かくライフステージごとのリスクと、医療保険の選び方を考えると次のようにまとめられます。
年代別医療保険の選び方
20代・・・最も安く、広く医療保険を選べる
20代から医療保険を選ぶことは、加入率からみてもなかなか元気で健康な男性には必要性がわかりくいことかもしれません。
しかし、20代は最も安く、そして広く医療保険を選べる時期です。リスクの低い間に、将来に備えるという考え方は手堅く、他のことにお金を使うよりも有意義かもしれません。
終身型の医療保険では、月々の掛け金が1000円台で、保障が充実した保険を選ぶことができます。
これに対して、男性と比べると医療保険の加入率が高い女性は妊娠出産の準備を始める方に、女性向けの保険・がん保険を早めに備えることがおすすめです。
30代・・・女性の場合は早めに加入
女性疾患のリスクが上がる女性の場合は、リスクに応じて、女性専用保険などの保険料が少し上がってきます。女性の場合は、30代も妊娠出産前に加入するのがベストです。
40代・・・働き盛りの医療保険、生命保険との関係もあり保険料はできるだけお得に
働き盛りの年代、特に男性では、医療保険も生命保険も加入率がぐっと上がります。
ところが、生命保険との関係でも、保険料が少し悩ましい年代でもあります。
責任が重くなり、医療保険もがんや先進医療特約の加入がなかった場合、入院日額・先進医療の一時金を少し厚めにすることを検討してもよいでしょう。
定期型に絞って働き盛りの間だけ掛け増しをしておき、後で整理できるようにすることも検討してよいことです。
50代・・・そろそろ保険は介護をにらんでシフト
50代で、お子さんが成人した・仕事の仕方に変化が出た、という時には保険の見直しを考えるとよいでしょう。
高齢になったら加入年齢の制限が出てくる保険の加入を検討しておくとよい時期でもあります。
介護に備える、医療に備える、あるいは遺族の保障に備えるのどれを重視するかに応じて、保険料を無理のない範囲で配分してみていいかもしれません。
60代以降・・・引受条件緩和型保険などの活用で、高齢者の病気・老後のお金の心配に備える
60代以降の方では、病気の不安から、高齢者でもはいれる保険・引受条件緩和型の、持病があっても入れる保険などが人気です。
生命保険の定期型の満期も来るかたもいるかもしれませんので、それまでの年代と違った保険選びを生涯保障が続く終身型を中心に考えてみましょう。実は保険の考え方では、長生きもリスクと考えます。
長生きをした場合、どこまで手持ちの貯蓄での補填が可能か、そして不足補う意味で、合理的な医療保険に加入しておく必要があるのか、ないのか、見極めをしておきましょう。
ライフステージのリスクに合わせた医療保険の選び方
妊娠・出産・女性のがんに備える場合
女性専用保険は、女性のリスクに合わせて設計してあるので、20代でしたら特にお得に加入できます。
妊娠・出産のリスクが一巡した50代での加入も実はお得という場合も多いのです。
がんのリスクに備えて置く場合には、高度先進医療特約がおすすめです。治療技術料は全額補填できる医療保険が多いのです。
子供の保険は不要?必要?
子供に手厚い医療費の助成があるので必要がない、と考える人も昨今は多くいらっしゃいます。
ただし、見逃せないポイントがあります。
医療費助成は自治体によって大きな差があるケースがあるので、医療保険加入の必要性は自治体ごとに違うと思っていいことです。お住いのエリアの助成との見合いで医療保険は考えておきましょう。
一般的に女性の手厚い自治体では、加入者が子供となる傷害保険、各種の「こども保険」などはけがの後遺障害保障を厚めにしておくといいでしょう。
がんのリスクはがん保険で備えるべき?
そうとは限らないという結論になります。
40歳くらいから真剣にがん保険を考える人も多いですが、新規加入をするなら、無理にがん保険に保険料を使う必要はありません。
医療保険でも、入院給付金に重きを置くか、一時金に重きを置くかを考えておきましょう。
がんを意識するなら、特約を付けて入院給付金を厚めにし、先進医療特約も付けておくなどして、既存の医療保険を生かしてお得に掛け増しをすることもおすすめです。
高齢者の医療保険は?介護保険は必要?
民間介護保険は、安くて一つ安心をプラスできる保険がおすすめです。
医療保険の中にも、介護特約が付いているものがあるので、ここで掛け増しをすることや、年金でも払いやすい1000円代からの民間保険に加入することも考えましょう。
家族の負担を軽減することを考える場合や、身寄りがない場合に、手伝ってくれる方を頼む費用を考えた場合など、介護の費用は一定程度かかるものと考えた方がよいのです。
家事ヘルパーさんの費用などは、公的介護保険ではカバーされないことから、認知症のお年寄りの支援・ご家族の支援のためには、貯金が不安な場合民間介護保険で備えることも検討しましょう。
まとめ
年代別の医療保険の加入率統計を見ると、各年代での抱えているリスク・ライフステージごとのリスクを理解できます。
加入率から推測される、ライフステージごとのリスクに合わせて、医療保険選びは、ご自身にあったもの、また保険料が無理のない選択しましょう。
各エリアに「保険市場」「ほけんの窓口」などの無料相談窓口もありますので、迷ったら活用することをおすすめします。