医療保険と生命保険(死亡保障)は混同されることの多い保険ですが、実際には様々な違いがあります。
この記事では、医療保険の中でも「がん保険」に着目し、生命保険との保障内容の違いや選び方を解説。
がん保険と生命保険のそれぞれで適用できる特約の違いについても紹介しているので、保険選びでお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
がん保険と生命保険の違いを解説
まずは、がん保険と生命保険の主な違いについて詳しく見ていきましょう。
保険金が下りるタイミング・受取人
がん保険と生命保険は、保険金が給付されるタイミングや保険金を受け取る人に以下のような違いがあります。
がん保険 | 生命保険 | |
保険金の給付タイミング | がんと診断されたとき・がん治療を受けたとき・がん治療のために入院や手術をしたとき | 被保険者が死亡した、また高度障害になったとき・一定期間生存していたとき |
保険金受取人 | 契約者(本人)・配偶者・二親等以内の親族 | 配偶者・二親等以内の親族 |
要するに、がん保険と生命保険の大きな違いは、「保険金の給付タイミング」と「保険金受取人」です。
ちなみに、近年では、上記の他にも婚約者・内縁(事実婚)のパートナー・同性パートナーなどが保険金の受取人として認められるケースも増えています。
これらの条件は保険会社によって違いがあるため、利用をお考えの場合は事前に保険会社へ相談しておくと良いでしょう。それでは、ここからがん保険と生命保険の保障内容について軽く触れていきます。
がん保険の保障内容
がん保険は、病気の中でも「がん」に対する保障に特化した保険商品のこと。がん保険に加入すると、以下のような保障を受けることができます。
診断給付金(一時金) | がんと診断された場合に支払われる一時金。治療を行う前であっても、診断された時点で受給できます。最近は条件を満たすことで複数回給付される保険商品も増えています。 |
通院給付金 | がんの治療のために通院した場合に支払われる給付金。がんを患っても入院せず、通院治療を行うケースが増えたことで近年重要度が高まってきています。 |
入院給付金 | がんの治療のために入院した場合に支払われる給付金。入院日数に応じて支払われ、入院日数の限度は設けられていないのが特徴。 |
手術給付金 | がんによる手術を行った場合に支払われる給付金。手術の種類に応じて一定額が支払われます。 |
なおがん保険については、契約の公平性を維持するために90日間(3か月間)の免責期間が設けられています。
中には加入後すぐ保障を受けられるがん保険もありますが、この場合は一時金が少額であったり、通院給付金が支払われなかったりといった違いもあるので注意しましょう。
生命保険の保障内容
生命保険は、被保険者が死亡した場合や高度障害を患った場合に保障を受けられる保険商品のことです。
医療保険やがん保険なども大枠では生命保険の一種ですが、ここでは生命保険の基本型である「死亡保険」「生存保険」「生死混合保険」の3種類の違いをご紹介します。
死亡保険 | 保障期間中に被保険者が死亡または高度障害になった場合に給付金が支払われます。被保険者に万が一のことがあったときに備え、遺された家族のために加入する保険商品です。 |
生存保険 | 満期日まで被保険者が生存していた場合に給付金が支払われます。老後の生活資金の準備や貯蓄を目的として加入することが多いです。 |
生死混合保険 | 死亡保険と生存保険をセットにした保険商品。被保険者が死亡または高度障害になった場合には死亡保険金が、満期日まで生存していた場合は満期保険金が支払われます。 |
医療保険と生命保険の違いは?
医療保険は被保険者の病気・ケガに備える保険、生命保険は被保険者の死亡に備える保険というのというのが大きな違いです。
冒頭で紹介した通り、がん保険は「医療保険」の一種です。病気やケガなどで入院・手術の費用が必要となる場合に備えて加入しておく保険商品で、がん保険の他にも女性特有の病気を保証する女性保険などがあります。
また保険金の受取人が被保険者自身であるか、その配偶者や親族であるかといった点も医療保険と生命保険の違いと言えるでしょう。
それぞれの特徴を比較しよう
ここまで紹介したがん保険と生命保険の違いをまとめると、以下のようになります。
がん保険 | 生命保険 | |
保障対象の違い | がん | 死亡・高度障害 |
保障内容の違い | 診断給付金・通院給付金・入院給付金・手術給付金 など | 死亡保険金・満期保険金 など |
保険金が支払われるタイミングの違い | がんと診断されたとき・がん治療を受けたとき・がん治療のために入院や手術をしたとき | 被保険者が死亡した、また高度障害になったとき・一定期間生存していたとき |
保険金受取人の違い | 契約者(本人)・配偶者・二親等以内の親族 | 配偶者・二親等以内の親族 |
免責期間の違い | 90日間(3か月) ※例外あり | なし ※例外あり |
がん保険と生存保険では、保障対象や保障内容にも様々な違いがあることが分かりますよね。
また上記のような違いから、がん保険は“自分のため”の保険、生命保険(死亡保険)は“家族のため”の保険とも言い換えられるでしょう。
がん保険と生命保険はどっちを選べばいい?必要な保険の選び方
さて、ここまでがん保険と生命保険の違いを解説してきましたが、どちらを選べばいいのかという疑問についてもお答えしておきましょう。結論としては、以下の3つのポイントを確認することでどちらを選べばよいのかを確認することができます。
- 遺したい相手がいるかどうか
- 老後資金を貯めたい
- 自身のがんリスク
それでは、順に見ていきましょう。
遺したい相手がいるかどうか
遺したい相手がいる場合は生命保険加入がおすすめです。生命保険(死亡保険)は、自分自身が死亡した場合に、遺族の生活が困窮しないように備えるための保険。
扶養する家族がいる方、万が一のための貯蓄ができていない方などは加入を検討した方が良いでしょう。
一方で、独身の方や夫婦共働き(子どもなし)でそれぞれに収入がある方、十分な貯蓄がある方は無理に加入する必要はありません。
老後資金を貯めておきたいなら生命保険加入もアリ
老後資金を貯めておきたい場合にも生命保険はおすすめです。生命保険(生存保険)の場合、保険が満期となる時点で生存していれば満期保険金を受け取ることができます。
保険料という形で一定期間の貯蓄ができるため、「貯蓄をしたいけど、手元にお金があると使ってしまう」という方は活用してみるのも1つです。
自身にがんのリスクがあるかどうか
がんのリスクが高い方はがん保険の加入がおすすめです。がんの発症につながるリスク要因としては、以下のようなものが挙げられます。
喫煙 | 肺がん など |
飲酒 | 口腔がん・咽頭がん・喉頭がん・食道がん・大腸がん・肝臓がん・乳がん など |
肥満 | 食道がん・膵臓がん・肝臓がん・大腸がん・乳がん・子宮がん・腎臓がん など |
感染症 | 胃がん(ヘリコバクターピロリ)・肝臓がん(B型・C型肝炎ウイルス) など |
遺伝 | 大腸がん・乳がん・皮膚がん・泌尿器がん など |
普段から喫煙や飲酒をしている方、また肥満体型の方などはがんを発症するリスクが高いと言えます。
更に女性の場合は乳がんや子宮がんなど、女性特有のがんを発症するリスクもあるため、上記の要因を持っている方は特にがん保険の加入を検討してみると良いでしょう。
下記の記事では、年齢別にがん保険の選び方のパターンを解説しています。どんながん保険を選べばいいのか、チラッとでも確認しておきたい方はぜひご覧ください。
がん保険の正しい選び方をプロが解説!自分に合った保険選びの最高の手順
基本的には生命保険のほうが優先順位は高め
上記3つのポイントを解説しましたが、基本的には生命保険のほうが優先順位は高め。なぜなら、生命保険のほうが保険料に対しての保障額が比較的大きいからです。
先に解説したとおり、扶養家族が多いなど遺したい相手がいる場合などは生命保険へ加入する必要性が高いでしょう。生命保険の必要性については、下記の記事でも深く解説してあるのでぜひご一読ください。
必要であれば、入院時や通院での治療に対応した特約などを付けられる
がん保険と生命保険には様々な違いがあるものの、いずれも特約を付けることで内容の調整が可能です。
例えば、がん保険に死亡特約を付けた場合、がんによって被保険者が死亡した際に遺族へ保険金が支払われます。
また、生命保険にがん特約を付けた場合、がん治療のための入院・手術や先進医療などにも保険金が支払われます。
このように、特約を活用することでどちらも同じような保障内容に調整できますが、特約の場合は保障額が少ないなどのデメリットもあるため注意が必要です。
メインに備えたい保障が何かをじっくり検討し、前述した違いなどを踏まえて自分に合う保険商品を選ぶようにしましょう。
がん保険と生命保険の違いまとめ
- がん保険はがん治療にかかる通院・入院・手術費用などを保障するための保険商品
- 生命保険は被保険者が死亡・高度障害になった場合に遺族の生活を保障するための保険商品
- 特約によって保険内容を調整する場合は、メインにしたい保障を主契約とするのがおすすめ
がん保険と生命保険は保障対象や内容に違いがあるため、自分にとってどの保障が必要なのかを見極めることが大切です。