公的介護保険を運用していくために制定された「介護保険法」は定期的に改正されます。
改正によって保険料が上がったり、介護サービスの内容が変更されたりするため、しっかりと最新情報を把握しておくことが大切です。
この記事では介護保険法の最新情報として、2021年改正の重要なポイントや介護保険の基本的な内容について解説します。
本記事を参考に介護保険の最新情報を把握していきましょう。
介護保険法の最新情報
介護保険法は2020年に改正され、2021年の4月から施行されています。
厚労省の発表によると、以下の5つのポイントが大きく改正されました。
- 地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する市町村の包括的な支援体制の構築の支援
- 地域の特性に応じた認知症施策や介護サービス提供体制の整備等の推進
- 医療・介護のデータ基盤の整備の推進
- 介護人材確保及び業務効率化の取組の強化
- 社会福祉連携推進法人制度の創設
出典:厚生労働省「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律(令和2年法律第52号)の概要」
次に、改正によって変更された重要なポイントを解説していきます。
2021年改正の重要ポイントを解説
2021年に改正された介護保険法の重要なポイントとして、以下の3つが挙げられます。
- 高額介護サービス費制度の上限見直し
- 地域包括ケアシステムの推進支援
- 介護サービスの利用料値上げ
それぞれ確認していきましょう。
高額介護サービス費制度の上限見直し
高額介護サービス費とは、介護にかかる月額の自己負担額が一定の上限額を超えた場合に、上回った部分の払い戻しを受けられる制度のことです。
2021年の介護保険法改正によって、年収に応じた上限額を一部引き上げることに変更されました。
対象者の区分 | 改正前の上限額 | 改正後の上限額 |
---|---|---|
年収約1,160万円以上 | 44,000円(世帯) | 140,100円(世帯 |
年収約770万円〜1,160万円 | 44,000円(世帯) | 93,000円(世帯) |
住民税課税〜年収約770万円 | 44,000円(世帯) | 変更なし |
前年の公的年金等収入額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下 | 24,600円(世帯)、15,000円(個人) | 変更なし |
生活保護を受給している人 | 15,000円(世帯) | 変更なし |
今回の改正では、年収が高い人の上限額が見直されました。
一定以上の年収がある人は払い戻しが適用される上限額が高くなったということになります。
地域包括ケアシステムの推進支援
地域包括ケアシステムとは、地域で医療や介護、住まい、生活支援を一体的に提供する体制です。
「住み慣れた地域で過ごしたい」「病院ではなく自宅で最期を迎えたい」という高齢者の想いを尊重するために、地域包括ケアシステムの推進が進められています。
従来、「高齢分野」「障害分野」「子ども分野」「生活困窮分野」の相談は別々の窓口で対応していました。
しかし、属性や年代を問わずに相談できる支援体制を推進していく施策が進められています。
これからはそれぞれの自治体が包括的な支援体制を整え、国が交付金などで支援していく仕組みへと変わっていくでしょう。
介護サービスの利用料値上げ
2021年の介護保険法改正では、介護報酬改定も行われました。
介護事業者の経営を守り、安定的な介護サービスを提供することを目指して介護報酬が引き上げられています。
しかし、介護報酬が引き上げられるということは、利用者の介護サービス利用料も値上げされるということです。
2021年の改正によって全体で0.7%(うち0.05%は新型コロナウイルス対策費)が引き上げられ、2021年4月〜9月までの半年間は新型コロナウイルス対策として0.1%が上乗せされました。
介護サービスの利用に影響を与える部分であるため、しっかりと把握しておきましょう。
介護保険法とは?
介護保険法の最新情報と改正の重要なポイントを理解したところで、「そもそも介護保険法とは?」という内容についても確認していきましょう。
ここでは、介護保険法の基本的な内容を解説していきます。
介護保険制度を運用するための法律
介護保険法とは、介護が必要な高齢者やその家族を社会全体で支える「介護保険制度」を運用していくために制定された法律です。
1997年12月に発布され、状況に応じて法改正をしながら運用されています。
介護保険制度では介護が必要な人にサービスが行き渡るように、国民が負担する介護保険料や税金を財源としています。
制度のバランスをしっかりと保つために、保険料の負担割合や介護施設運用の基準などのルールを細かく定めているのが介護保険法です。
3年ごとに改正されている
1997年に発布された介護保険は、2000年4月から施行されました。
施行されてから現在に至るまでの間にも高齢化が進んでおり、介護を取り巻く環境は変化しています。
こうした変化に対応するために3年ごとに介護保険法の内容が見直され、改正されています。
介護保険法の最新情報を把握しておこう
介護にまつわる環境は少しずつ変化しており、変化に対応するために介護保険法も3年ごとに見直されています。
法改正が行われると、介護サービスの費用が値上がりになったり、高額介護サービス費などの制度が見直されたりと実生活に影響が出る場合があります。
そのため、介護保険法の最新情報について把握しておくことが大切です。
次は、2024年に介護保険法の改正が行われます。
少子高齢化による財源不足や介護人材の不足などは引き続き課題となるため、次の法改正についても確認しなければなりません。
生活に影響がある介護保険法の法改正に今後も注目していきましょう。
まとめ
2021年の介護保険法改正では、高額介護サービス費の上限見直しや介護サービス料金の値上げなどが重要なポイントとなりました。
介護保険法は時代の変化に合わせるために3年ごとに改正が行われており、少しずつ内容が変化してきています。
私たちの生活に影響を及ぼす可能性があるため、今後の介護保険法の最新情報に注目していきましょう。