「公的介護保険と、民間の介護保険、双方に加入しておいた方が安心」
介護の負担を考えて、民間の保険会社の介護保険にも加入する方が増えています。
一時金で、老人ホームの入居費用を賄う、あるいはヘルパーさんを十分家事にも使えるようにして、ご両親の面倒を見たい、そんな計画をされている方もいらっしゃるでしょう。
こうした計画で、民間の生命保険会社などから発売されている保険商品を活用し方もいらっしゃることと思います。
ただ、気になるのは、保険料の負担です。2つの保険に加入すると、公的介護保険料と、民間の介護保険料の負担はどうしても二重になります。
本当に加入する必要があるのでしょうか。また、2つの保険に入った場合の、保険料の負担を減らす工夫について解説します。
公的保険と、生命保険会社の介護保険はどこが違う?その関係は?
公的介護保険は、40歳以上の方が保険料を支払い、65歳以上になると保険料は支払い続けますが、介護サービスが現物給付される制度です。
サービスの内容は、要支援度・要介護度により、内容が異なり、上限となる額も違います。
これに対して生命保険会社を中心とする民間保険会社の介護保険は、介護保険ではカバーしないサービスを補うために加入したり、あるいは、介護保険制度がカバーしない雑費をカバーするために加入します。
金銭給付が基本です。ただし、その内容は、約款で自由に定めることができますし、加入年齢も一律40歳ではありません。約款によります。
このように、公的保険と、生命保険会社その他の民間保険会社の介護保険では保障・給付内容が違います。
さらに、公的介護保険と生命保険会社の介護保険では、給付を受ける要件となる「要介護状態」が異なります。
生命保険会社の介護保険の要介護状態は、独自の基準が約款で定められています。
どの要介護度から給付されるかは商品により異なり、公的保険の要介護認定と連動しているものもみられます。
加入年齢も自由に定められます。
これらが一般的に言われている差ですが、公的介護保険をサービスの面からもう少し細かく考えると、
- 上限・内容が決められているので、本人の欲しいサービスがある。
- 介護保険サービスだと、家事に関するヘルパーなどの給付はないので、家族の負担が減らしにくい面がある
- 食費・交通費・諸雑費はカバーしないので、費用面で心配になることがある
そこで、民間の介護保険の必要性がありますが、これらの費用を貯金や、年金保険などで賄えるのでしたら、民間の介護保険は金銭給付であるだけに、あまり必要性が認められないかもしれません。
そのご家族、ご本人の状況次第、という面があります。
このことから、保険料が現在ある備えに、さらに貯蓄で補うこととと比較して、合理的と判断できる範囲で双方に加入する、ということになるでしょう。
より具体的には、
- 少し貯金が不安
- 介護サービスに特に希望があり、お金で実現させたい
- 介護で働けなくなることが不安
といった場合は生命保険会社等の介護保険にメリットがあります。
こうした観点から、FPなどにご自身の状況と合わせて相談してみるのもよいでしょう。また、保険商品も多種多彩で、選ぶのが大変、という方も相談をうまく利用してみましょう。
生命保険会社等の保険には、どんな保障と種類がある?
生命保険会社等の介護保険には、約款で自由に保障内容・保険料など、条件を設定できるだけに多種多彩な商品があります。
日本生命・ソニー生命・アフラックなど、主要な生命保険会社の商品に、多くのプラン・タイプの介護保険があります。また、米国ドル建ての商品と、円建ての商品を扱う、外資系の保険会社などもあります。
ポイントとしては、貯蓄性・給付金の受け取り方法といった保障の内容と、保険料の支払い方によって分類できるので、どれを選ぶか大きくはこれらの分類から考えるとうまく選べます。
加入に際しては、将来の介護にどう備えたいと思っているのか、そして、どの保険ならカバーできるかを考えることとなります。
貯蓄性…「掛け捨て型」「貯蓄型」に分かれるほか、保険料や解約返戻金の有無などに違いが見られます。
給付金の受取方法…「一時金」「年金」「一時金・年金の併用」など利用者の希望に合わせた選び方が可能です。
また、介護度が高いとき・死亡時に受け取る保険金と、給付金と双方受け取れるプラン、給付金だけのものがあります。
保険期間…「終身型」「定期型」から選べるなど、強制加入の公的介護保険と異なります。
そのうえで、生命保険会社等の介護保険には次のようなリスクがあることを考えて選ぶと納得できます。
要介護認定になっても、一時金が下りるとは限らない
これは生命保険会社等が約款で自由に受取の条件を設定できるためです。
公的介護保険は、法律の要件にあてはまれば、給付が受けられますので、つい確認が不足しがちになりますが、注意したほうが良い点です。
将来、受け取る年金・一時金で介護のニーズがカバーできるとは限らない
現在日本ではインフレが抑えられおり、むしろデフレが問題になったので、あまり意識しませんが、これはどんな保険でも注意すべきポイントです。
介護保険、保険料を減らす工夫とは?検討の視点
保険料を減らす方法として、いくつかの手段が考えられます。
- 保険料の安い民間介護保険を選ぶ
- 社会保険料控除
- 介護生命保険料控除
- 負担限度額認定証
それぞれご説明します。
お得な介護保険、どう選ぶ?
保険会社の安くて保障の厚い保険に入って、介護保険の不足を補うのはいかがでしょうか。
都道府県民共済、インターネット専門の保険会社など、介護保険料が月々数百円で、保障が手厚いもの、また20代の方でも入れる終身保障型でも月々の負担が少ない商品が発売されています。
安い介護保険を探しているならこれがおすすめ!保障も充実な保険を紹介
社会保険料控除
公的介護保険料については、年末調整・確定申告の際に、社会保険料控除の一部として、介護保険料の控除を受けることができます。
サラリーマンの方であれば、会社で手続きができる年末調整で給与所得者の扶養控除等申告書を使い、給与から天引きされている介護保険料全額が控除できます。扶養家族分も合算の対象になります。
実は、転職をされた方などは、前勤務先の社会保険料が合算できるとともに、それまでに支払っていた国民年金保険料・国民健康保険料なども合算できます。
控除証明書が国民年金・国民健康保険料の場合は必要になりますので、自治体に年末調整の前(10月ごろまで)に問い合わせておきましょう。
年金からの天引きの方は、確定申告で社会保険料控除を行うことができます。
介護生命保険料控除・本人の契約、受取人が本人の場合
この場合は、本人の年末調整または確定申告の際に、介護医療保険料控除として保険料を控除額として、所得から控除することができます。
介護生命保険料控除・家族が契約者、受取人が家族の場合
この場合は、保険料の支払いを行っている家族の年末調整または確定申告の際に、介護医療保険料控除として、保険料を控除します。
受取人の所得からの控除はできません。
所得税・住民税の控除がそれぞれ可能ですが、他の保険料と合算しての控除上限額・各保険料の控除上限額が次の通り決まっています。
所得税 | 住民税 | |
---|---|---|
一般生命保険料 | 40,000円 | 28,000円 |
介護医療保険料 | 40,000円 | 28,000円 |
個人年金保険料 | 40,000円 | 28,000円 |
合算適用限度額 | 120,000円 | 70,000円 |
年末調整・確定申告の際に保険会社から保険料を控除するために作られる書面である控除証明書が送付されますので、年末調整、または確定申告書に添付のうえ手続きを行います。
また、年末調整の時には、給与所得者の保険料控除申告書、確定申告の場合は、確定申告書の中に保険料控除につき記載する欄がありますので、それぞれ適切に記入して申告する必要があります。
介護負担限度額認定証
介護保険のサービスを受ける場合は、介護保険も、健康保険の高額医療費制度と同様に、介護負担限度額認定証を取得すると、介護費用の負担を最小限に抑えることができます。
保険料の節約に直接になるものではありませんが、こうした制度をもとに保険プランを考えることにより、月々の保険料を押さえたプランに加入することもよい考え方です。
まとめ
公的介護保険と、民間の生命保険会社等の介護保険は、併用でより大きな安心が得られる一方で、双方に入ると、保険料がかさんでしまうデメリットがあります。
年金型、一時金型その金額など欲しい保障内容に合わせたプランを選び、保険料を合理的な範囲にとどめておく他、控除の制度・負担限度額認定証なども使って、負担を押さえましょう。