介護保険には、公的保険と、民間の介護保険があります。このうち、公的介護保険は、介護サービスの現物給付が原則であり、本人以外の方が受取人になることはできません。
一方、民間の介護保険は、給付金や、死亡時の保険金が保障内容です。そして、受取人については、本人以外の方が受取人になれる場合があります。
それでは、一体どういった人が介護保険の受取人になれるのでしょうか?もしもの場合に備えて、知っておきたいところですよね。また、保険料の控除についても手続きなどをおさえておきたいところです。
そこで、本記事では介護保険の受取人に関して、以下のポイントを解説しました。
- 介護保険の受取人の原則
- 本人以外が介護保険の受取人となれるパターン
- 介護保険の税務上の取り扱い
介護保険の受取人についてお調べの方は、ぜひ続く内容をご覧ください。
介護保険には、公的保険・民間保険がある

冒頭でも述べましたが、介護保険には公的介護保険と民間の介護保険があります。公的介護保険は、保険者が市区町村=自治体であり、民間の介護保険は、私企業である保険会社です。
このうち、公的介護保険は、現物給付が原則であり、本人が在宅や、施設での介護サービスを直接受けることになりますので、本人以外の方が受取人になることはできません。
そもそも、お金で給付が行われる民間の介護保険と違い、「受取人」という言葉も使わないのです。
公的保険のあらまし

公的介護保険は、40歳以上65歳未満の第2号被保険者が、保険料を支払い、65歳以上になると介護保険による介護サービスを利用することができる制度です。
40歳以上、65歳未満の被保険者は、原則として介護サービスを受けることができませんが、特定疾患※といって、老化と関係が深いとされる病気で要介護状態になった場合は、介護サービスを受けることができます。
民間の介護保険のように、介護費用をお金で支払われるものではありません。
※公的介護保険の特定疾患に関しては、こちらをご覧ください。
民間保険のあらまし・老後の備えに年金と一時金

民間介護保険の保障内容は、約款によって、自由に設定可能です。給付金による保障は、次の3パターンです。
- 年金型
- 一時金型
- 双方がある形
その他保険会社の設定している特約を付することができます。また、一般的に重い要介護状態になった場合や死亡時の保険金がついています。後述しますが、受取人はパターンによって設定できる対象が違います。
比較的に少ない掛け金で将来の要介護状態になった場合の出費に備えることができる点が、この保険の特徴です。
民間介護保険に入る必要性とは?
民間介護保険の必要性をかんたんに言いますと、下記の3つが挙げられます。
- 公的介護保険は、サービスの内容・法令で決められ、必要なサービスが介護保険のサービスでカバーされるとは限らない
- 要介護状態になったときの家族の出費や、施設での雑費・家族の休業補償は、介護保険で備えられない
- 公的介護保険には現金給付がない
この民間介護保険の必要性については別記事にて詳しく解説してあります。もし、「そもそも介護保険って必要かな?」と疑問をお持ちであれば、ぜひそちらの記事を参考にしてみてください。
公的介護保険を補う?民間保険の必要性について・メリットデメリットは?
民間介護保険、給付金・保険金の受取人になれるのは、契約者本人が原則

民間介護保険は、給付金と保険金それぞれに受取人が定められています。
給付金・・・要介護状態になった場合に支給される一時金です。本人が受取人です。
要介護認定で一時金受給可能ですが、保険会社により、基準が異なり、また、給付金の受け取りに要介護認定が必須ではありません。
保険金・・・重い要介護状態・死亡の際に支払われるお金です。
本人が契約者であれば、本人が受取人になります。ただし、死亡の場合は指定された受取人(家族を指定できる)に保険金が支払われます。
家族が契約者である場合は、受取人を家族とすることができます。
本人が契約者の場合の保険契約では、給付金を指定請求代理人が請求、受け取ることができる
本人が契約者の時の受取人は、本人であることを原則としています。
しかし、本人契約の、給付金については、本人が請求できない場合があるので、指定請求代理人という制度で、本人以外が受け取れます。
本人が例えば身体が不自由な状態で、請求ができないときに、指定請求代理人が給付金の請求手続きを行い、給付金の受取を行います。
死亡・重い要介護状態になった場合の保険金は、受取人として指定した方が請求、受け取ることができる
また、民間介護保険の死亡等の保険金は、受取人を指定することができます。
給付金の指定請求代理人と、保険金の受取人はおおむね以下の範囲で指定ができます。
- 配偶者
- 1親等(親・子)
- 2親等(祖父母・兄弟・姉妹・孫)
保険会社によっては、3親等・同性のパートナーにも死亡保険金等の受取人となることを認める場合があります。
そして、死亡時等には、本人が保険金を受け取り、受取人に移転する、という考え方をせず、受取人を契約で指定するようになっています。
ところが、税務上は後程もう少し詳しく説明しますが、保険金は死亡保険金の場合、相続税の対象となることに留意が必要です。
家族が契約者の場合の保険契約
これに対して、夫が介護保険契約者であり、被保険者が妻の場合など、家族が契約者となることは許されており、なおかつ、給付金の受取人を自分ではなく契約者とすることは可能です。
保険金も同様に、配偶者や子供などの家族を受取人とすることが可能です。
家族の介護保険契約も、指定請求代理人や、受取人が一定の範囲に限られているのと同様、一定の家族の範囲に限って契約することが可能です。
介護保険、受取人が本人以外の時の税務上の取り扱いを知っておきましょう

介護保険は、受取人が本人になる場合は、税金の取り扱いがポイントになります。保険料・受け取る給付金・保険金双方のポイントについて解説します。
保険料:保険会社発行の証明書を使い、年末調整・確定申告
保険料については、年末調整・確定申告の際に、介護医療保険料控除の一部として、介護保険料の控除を受けることができます。
控除には上限額がありますので、これに従う必要があります。
本人の契約、受取人が本人の場合
この場合は、本人の年末調整または確定申告の際に、介護医療保険料控除として保険料を控除額として、所得から控除することができます。
家族が契約者、受取人が家族の場合
この場合は、保険料の支払いを行っている家族の年末調整または確定申告の際に、介護医療保険料控除として、保険料を控除します。
受取人の所得からの控除はできません。
所得税・住民税の控除がそれぞれ可能ですが、他の保険料と合算しての控除上限額・各保険料の控除上限額が次の通り決まっています。
所得税 | 住民税 | |
一般生命保険料 | 40,000円 | 28,000円 |
介護医療保険料 | 40,000円 | 28,000円 |
個人年金保険料 | 40,000円 | 28,000円 |
合算適用限度額 | 120,000円 | 70,000円 |
年末調整・確定申告の際に保険会社から保険料を控除するために作られる書面である控除証明書が送付されますので、年末調整、または確定申告書に添付のうえ手続きを行います。
また、年末調整の時には、給与所得者の保険料控除申告書、確定申告の場合は、確定申告書の中に保険料控除につき記載する欄がありますので、それぞれ適切に記入して申告する必要があります。
保険金:相続税・贈与税が問題になる

一般的に個人で保険契約をし、給付金(疾病・入院・手術)を受け取った場合は税金がかかりません。本人が受取人の場合も、家族が受取人の場合も、非課税です。
ただし、無疾病お祝い金等の「お祝い金」が支給された場合には、課税所得となります。一応、医療保険などにも存在するお祝い金(ボーナス)ですが、実際のところ得するかどうかは微妙なところです。詳しくは別記事「医療保険でお祝い金/ボーナスありって得なの?実際に比較して計算!」まで。
これに対して、死亡保険金の場合には、相続税または贈与税、さらに、家族の契約の場合には、所得税の問題となることがあります。
それでは、一体受取人と契約者を誰にしておくと、税務上は有利と考えられるでしょうか。これについては、後々解説したいと思います。
死亡保険金が相続税の課税対象となる場合
死亡保険金は、いったん亡くなった方の「みなし相続財産」として、相続財産の一部として取り扱われます。
そこでさらに、受取人として指定された方の相続税の課税対象となります。
ただし、相続税は、一定の範囲で、税制上の優遇措置があるため、保険金が相続税の課税対象になっても、最終的に相続税を支払うかどうかは別の問題であり、多くの場合は結局死亡保険について無税になることが多いのです。
死亡保険金は、遺族の生活保障を守る意味のあるお金です。
そこで、一定の死亡保険金が非課税になることが税法上決められています。
死亡保険金は「500万円 X 法定相続人の人数」が非課税金額となります。
また、配偶者には、より大きな相続財産控除による非課税の扱いが認められていますので、多くの場合で、結果的に死亡保険金が非課税になります。
したがって、契約者が死亡の場合に、相続人である配偶者を介護保険の死亡保険金の受取人にすると、せっかく備えた保険金が税金で小さくなるという心配は大きくありません。
死亡保険金が所得税の課税対象となる場合
家族を被保険者にし、受取人が死亡保険金を受け取った場合は、死亡保険金が所得税の対象となります。
一時所得として課税されるので、相続税よりも大きな負担となる可能性が高いといえるでしょう。
死亡保険金が贈与税の課税対象となる場合
ところが、契約人と被保険者と受取人がすべて違う場合もあります。
契約者夫、配偶者である妻死亡の場合に、子供を受取人にすると、贈与税がかかる可能性があります。
相続税ではないか、と見えてもこのように考えるのは、いったん、契約者に入るべき保険金をさらに受取人に贈与としている、と考えるからです。
したがって、この場合夫を受取人にしておく方が税務上はより有利になります。
贈与税になる場合は税額が大きくなるので、受取人に注意

以上をまとめると、保険金にかかる税目は、所得税・相続税・贈与税の3種類がありうることとなります。
そして、死亡保険金について、契約と、受取人の関係から、適用される税目は以下の通りです。
契約者≠受取人 かつ、受取人=法定相続人 | 相続税 |
---|---|
契約者=受取人(家族が被保険者) | 所得税 |
契約者≠被保険者≠受取人 | 贈与税 |
贈与税は、税務上の取り扱いが最も不利です。
可能な限り、税目としては相続税がかかるようにしておくと、万が一の死亡保険金の受け取りの場合は、税務上の取り扱いが、ご遺族の生活保障の観点から有利になると考えられます。
まとめ
介護保険の保険金、特に死亡保険金の場合は医療保険・生命保険と同様、受取人が遺族の場合、相続税・贈与税・所得税のいずれかがかかることになります。
契約者が誰であるか、受取人と契約者が同じか、違うかによっても税目が変わりますので、契約時に注意が必要です。
契約者・被保険者・受取人が異なる場合、受取人にかかるのは贈与税です。
贈与税になる受取人指定は税務上の取り扱いが他の税目がかかる場合より、ご遺族には不利になりますので、留意しておきましょう。
保険金の税金についてわからない点が出てきたときには、保険金はまとまったお金となりますので、税務署またはお近くの税理士に相談されることをおすすめします。
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