「介護保険制度はいつから始まったのか」
「いつから介護保険制度によるサービス利用ができ、保険料支払いが始まるのか」
そんな疑問や思いをお持ちではありませんか?
本記事では、介護保険制度の歴史や変遷、概要について解説します。
介護保険制度の仕組みがいつから、どのような経緯でできたのか、早速本記事の内容を確認していきましょう。
介護保険制度設立の背景
介護保険制度が始まった背景には、「高齢など何らかの理由で支援が必要になった場合でも、できるだけ住み慣れた市町村で生活を続けられるような社会に」という願いがあります。
介護保険制度がいつから始まったのかを解説する前に、制定背景や当時日本が抱えていた問題を確認しましょう。
高齢化に伴う介護負担の増加
介護保険制度制定の背景として大きいのは、急速に進んだ高齢化です。
いつから高齢化が問題視されるようになったかというと、日本が諸外国と比較して、人口に対する65歳以上の割合が増加した西暦1990年代以降。
厚生労働省老健局によると、1990年の総人口1憶2,361万人中、65歳以上の人口は全体の約12%。
これは、65歳以上の人口:20~64歳の人口=1人:5.1人であることを意味します。
そして、20年後の2010年には総人口が1憶2,806万人になり、65歳以上の高齢者は全体の約23%にも達しました。
65歳以上の人口:20~64歳の人口=1人:2.6人となり、若い世代に対して介護保険制度の被保険者である高齢者が、かなり増えていたのです。
以上のデータから、要介護者が今後さらに増えることが予想されました。
高齢化の進行により、要介護高齢者の増加や介護期間の長期化等、それまでの老人福祉・医療制度だけでは補えない介護ニーズが、ますます増えていったのです。
平均寿命の延伸
医療技術の発達が進み、全体的に寿命が延びたことで、介護期間が長期化していることも介護保険制度が成立した背景の一つ。
こうした問題を解決するために、従来は老人医療無料化という別の制度が存在しました。
しかし、財政が圧迫されてとん挫する事態になったのです。
国の制度によってすべての課題を解消するべく、国民全員で高齢者を支える介護保険制度が生まれました。
老人医療無料化
現在の介護保険制度が制定される前に、高齢者の方に向けた福祉施策として老人医療無料化という制度が存在しました。
老人医療無料化は、1960年代に始まった制度で、高齢者であれば医療費が全額無料になるシステムでした。
岩手県の一部地域で始まった取り組みで、東北地方、全国へと徐々に広がっていきます。
しかし、1973年に始まった老人医療無料化は財政負担により1982年に終了。
1990年代にはゴールドプラン・新ゴールドプランなどの高齢者福祉施策が始まったものの、財源や人材などの課題は解消されませんでした。
参考:ゴールドプラン・新ゴールドプランとは
ゴールドプラン・新ゴールドプランとは、健康な生活を安心して遅れる環境を整えるために政府が作った制度です。
具体的な内容としては、ホームヘルパーやデイサービス施設・在宅介護支援センターなどの目標値を設定しました。
その他、市町村における体制整備や健康教室の開催目標の設定なども行われましたが、1999年に終了しています。
核家族化の進行による老々介護問題
高度経済成長期から現在に至るまで、核家族化が進行しています。
その中で65歳以上の子どもが、親を介護するという老々介護が増加し、家族内での介護負担がかなり大きくなっていたという問題がありました。
また、老々介護は精神的な負担だけではなく、経済的な負担も大きいのです。
この状況を改善するためにも、地域で協力体制を引き、適切な介護サービスを利用できるように介護保険制度の制定が急務でした。
従来の制度の課題をふまえて介護保険制度が開始
上記の問題点をふまえて、下記のような基本的な考え方のもと、介護保険制度が始まったのです。
1.自立支援
単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするということを 超えて、高齢者の自立を支援することを理念とする。
2.利用者本位
利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービス、 福祉サービスを総合的に受けられる制度。
3.社会保険方式
給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用。
以上が、公的介護保険制度が制定された背景についてです。
それではいつから介護保険制度が施行され、どんな改正がされてきたのか確認していきましょう。
介護保険制度はいつから始まった?歴史と変遷
それでは、いつから介護保険制度は始まったのでしょうか。
介護保険制度は、1996年(平成8年)11月に国会へ介護保険法案が提出され、介護保険は、2000年(平成12年)4月に始まりました。
。
法案が国会に提出された後、約1年にわたって審議され、1999年(平成11年)の12月に可決されたことで、介護保険制度が始まったのです。
介護保険制度の施行後、約3年毎に見直しが行われ、2022年(令和4年)までに実施された改正は全部で6回にも及びます。
この章では、これまでの介護保険制度の改正内容について解説します。
2005年(平成17年)|1回目の改正
2005年(平成17年)介護保険制度の1回目の改正では、介護保険制度の対象となる施設給付サービスが見直され、予防給付サービスが新設されることに。
施設給付サービスの見直しでは、施設利用によって発生する食費や居住費がサービスの対象外になりました。
そのため、介護保険施設などを利用する場合は、食費や居住費を全額自己負担。
また、要支援者に対する給付サービスを「予防給付」とするようになりました。
あわせて、地域包括支援センター(介護予防支援事業所)で要支援者のケアマネジメントを行うことになったり、地域支援事業を実施するようになりました。
2008年(平成20年)|2回目の改正
2008年(平成20年)介護保険制度の2回目の改正では、介護事業・サービスの運営を適正化するために業務管理体制の整備などが義務付けられました。
介護事業者本部への立ち入り検査も可能になり、不正事案の再発防止策が強化されたのです。
2011年(平成23年)|3回目の改正
2011年(平成23年)当時の問題点として、単身高齢者の増加がありました。
これに伴い介護サービスの提供会社では、人材確保が急務となります。
こうした背景から、市町村判断による主体的な介護事業の取り組みが推進されました。
また、定期巡回や随時対応型訪問介護看護など、医療と介護の連携を強化する内容に介護保険制度が改正されたのです。
2014年(平成26年)|4回目の改正
2014年(平成26年)には、介護保険事業計画の作成に関する内容が改正されたり、放射線技能法が見直されました。
これにより、効率的な地域包括ケアシステムの構築や高品質な医療提供体制の構築が実現。
2015年(平成26年)には、特別養護老人ホームの重点化や予防給付サービスの見直しなどが行われました。
2017年(平成29年)|5回目の改正
2017年(平成29年)の介護保険制度5回目の改正では、公的介護保険制度の持続可能性を確保するための取り組みが加えられました。
そして、要介護認定された方の重度化防止や高齢者の自立サポートなどを目的とした取り組み・サービスも追加されたのです。
具体的には、ケアマネジャーやリハビリ職の連携・支援導入などを行うことで、要介護認定された方の重度化を防止しようとしています。
2020年(令和2年)|6回目の改正
2020年の介護保険制度の改正では、地域の介護サービスにおける支援・提供体制の整備や認知症施策の推進、介護人材確保及び業務効率化の取り組みの強化等がされています。
以下の記事にて詳しく紹介していますので、ぜひ参考になさってください。
関連:「介護保険法の最新情報を紹介!2021年改正のポイントを解説」
介護保険制度で給付されるサービスの概要
ここまで「介護保険制度はいつから始まったのか」について解説しました。
それでは、介護保険制度で給付されるサービスの内容について、「いつから保険料の支払いが始まるのか。」「いつからサービス利用ができるのか。」という疑問にお答えしていきます。
介護保険制度について、押さえておきたいポイントは以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
保険者 | 市町村・特別区 |
被保険者 | ・第一号被保険者:65歳以上 ・第二号被保険者:40歳以上65歳未満の医療保険の加入者 |
保険料 | ・第一号被保険者:市町村が徴収する ・第二号被保険者:医療保険者が保険料を徴収し、一括納付する |
サービス利用条件 | ・第一号被保険者:要支援・要介護認定を受けていること ・第二号被保険者:老化に起因する病気(特定疾病)によって 要支援・要介護認定を受けていること |
介護保険制度の保険料支払いやサービス利用が始まるのは、40歳以上の上記の条件を満たした方です。
しかし、加入したからといって介護保険制度内のサービスを利用できるわけではありません。
介護保険料支払いが始まる年齢や納付方法
介護保険料の支払いがいつから始まるのかというと、加入年齢である40歳からです。
ただ、前述した通り第一号被保険者と第二号被保険者で納付方法が異なりますので注意が必要。
また、第二号被保険者の場合は勤務先によって保険料も違いますので、以下の記事で確認してみてください。
関連:介護保険料はいつまで払う?仕組みを知って不安を取り除きましょう | RAKUYA
介護サービスを利用したい場合の条件とは?
介護保険制度のサービスを利用できるようになるのはいつからかというと、「原則」第一号被保険者となる65歳以上からです。
介護保険制度のサービスを利用するためには、要支援・要介護認定を受けていることが必須。
要支援・要介護認定とは日常生活の中で、どれくらいの介護を必要とするかの指標のことです。
要支援・要介護認定は、居住している市町村に申請することで受けることができ、認定調査員が状況を判断し、利用できるサービスや負担割合が決まります。
介護サービス利用後は、国民健康保険団体連合会に請求すると保険金が支払われるというのが介護保険制度の仕組みです。
要支援は2段階、要介護は5段階に分けられ、該当した段階によって利用できるサービスや負担限度額が異なります。
第二号被保険者が介護保険制度のサービスを利用したい場合には、特定疾病に罹患したことが原因で、要支援・要介護認定をされる必要があるのです。
特定疾病や要支援・要介護認定の診断基準を知りたい場合は、以下のページで詳しく解説していますので、参考になさってください。
関連:介護保険制度の特定疾病とは?診断基準を一覧にしてわかりやすく解説! | RAKUYA
意外と知らない、民間介護保険はいつから始まったのか
介護保険制度は、前述の通り2000年(平成12年)4月から施行されましたが、民間の介護保険はいつから販売されていたのでしょうか。
実は民間介護保険は、介護保険制度よりも古くから存在しました。
JA共済総合研究所の「民間介護保険の現状」によると、民間の介護保険は1985年(昭和60年)頃から販売されていたそうです。
介護保険制度は、民間に15年ほど遅れをとって、始まった制度だと言えます。
ただ、現在の民間の介護保険は、介護保険制度に準じた給付条件を設定していることがほとんど。
介護保険制度の保障内容が比較的充実しているということもあり、民間介護保険への加入の必要性を感じていらっしゃらない方も多いことかと思います。
ただ、ライフステージやご自身の健康状態によって一人一人支援の必要性は違いますので、一概に民間の介護保険は必要ないとは言い切れません。
民間介護保険で備える必要性
介護保険制度は、要支援・要介護認定の度合いによって負担限度額や利用できるサービスの種類が異なり、時間や回数にも制限があるのです。
また、要支援・要介護認定を受けても、自分や家族が納得する要支援・要介護度の判断をされるとは限りません。
そのため介護保険制度だけでは、十分なサービスを受けることができない方もいらっしゃいます。
介護保険制度で利用できるサービスは、自費でも利用することが可能。
ただ、自費となると予想以上に経済的な負担が大きくなってしまいます。そこで民間の介護保険を利用することで、金銭的な負担を減らし、充実したサービスを利用することが可能になるのです。
民間介護保険の保障内容やいつから加入すべきなのかなど、以下の記事で詳しく説明していますので、ぜひ参考になさってください。
関連:民間介護保険は必要?公的保険との違いや加入のメリット・デメリットを解説
困ったらファイナンシャルプランナーに相談がおすすめ
介護保険制度がいつから始まったのかやサービスの概要について、知ることができたかと思います。
民間介護保険への加入を検討されていたり、不安・疑問がある場合は、保険選びのプロに相談しましょう。
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まとめ
日本は、将来的にさらなる高齢者の増加が見込まれており、医療技術の進歩によって平均寿命も延びることが予想されます。
介護保険制度は、2000年(平成12年)4月から始まった制度で、これまで複数回の改正を重ねています。
社会情勢の変化に応じて介護保険制度も改正がされていくため、変更内容を随時確認していくことが必要です。
介護保険制度の内容をきちんと把握して、介護保険をうまく活用できるようにしておきましょう。
また、介護保険制度だけでなく民間の介護保険に加入して将来の介護に備える人も増えています。
老後の備えをお考えの方は、これを機会にぜひ民間の介護保険も検討してみましょう。