公的な医療保険制度が日本には整備されているため、保険会社が販売する医療保険の必要性に疑問を感じている人もいることでしょう。
結論から述べると、現代の日本においては公的医療保険だけでは物足りず、民間医療保険には大いに必要性があります。
今回はなぜ民間医療保険が必要なのか、公的な医療保険制度について紹介しながら、民間の医療保険の保障内容や仕組みなどと併せて詳しく解説していきます。
この記事を参考に民間の医療保険の必要性について考えてみましょう。
医療保険はケガや病気への備え
テレビのCMや街中の広告でも、医療保険は頻繁に取り上げられています。それだけ医療保険への関心やニーズが高いことを表しているものの、医療保険の内容を正しく理解できている方は意外と少ないです。必要性を感じないからとこれまで検討したことがないという人も多いのではないでしょうか。
基本的に、医療保険はケガや病気になった際の入院や手術費用を補填してくれるものです。医療保険に加入していると、例えば入院や手術時に給付金を受け取ることができます。
最近は、医療が高度化している影響もあり、入院が以前よりも短期化している傾向にあります。そのため、これまでのように日額での給付ではなく、まとまった入院費用を受け取る必要性も高まっています。
また、先進医療に備える必要性も高まり、先進医療に対応する特約を付加できるなど、保障範囲も広がっています。通院特約や女性特約も充実し、医療保険は年を追うごとに進化しています。
ちなみに、30代以降の医療保険への加入率は約70%以上と高い数値を誇ります。年代別の医療保険加入率などは別記事をご覧ください。
公的医療保障の内容
民間の生命保険や医療保険への加入を検討する場合、公的医療保障について必ず考慮しておかなければなりません。民間の保障とは違い、公的医療保障は全ての国民が等しく受けられるサービスです。
まずは保障のベースとなる公的医療保障の内容について、健康保険と高額療養費に大別し解説します。
健康保険
公的医療保障を考えるにあたり、真っ先に頭に浮かぶのはこの健康保険ではないでしょうか。健康保険は公的医療保障の制度の一部であり、この保険のおかげで医療機関での自己負担額は原則3割となっています。
民間の保険とは違い、健康保険は国民全員が加入するものです。会社員と自営業者では加入する健康保険が異なるものの、治療費の自己負担額に違いはありません。
公的な健康保険がなければ、毎回の医療機関受診時に支払う金額は非常に大きなものになり、受診をためらう人が出てくる可能性もあるでしょう。
民間で保険に加入していなくとも、最低限の医療保障を国民全員が持っていることになります。
高額療養費制度
公的な医療保障の中には、高額療養費制度も含まれています。これは、高額医療に対する払い戻し制度で、高額な医療費に負担上限を設けるものです。
そして、高額療養費制度における自己負担額は、年齢と所得によって算出されます。どの年代でも高額療養費制度は利用できますが、基本的に①所得が低い②70歳以上の方は自己負担額が低く抑えられます。
ここで、高額療養費制度について簡単に例を挙げてみましょう。
例)自己負担額15万円の場合、1ヶ月の医療費が30万円だとしても、30万ー15万=超過分15万円の払い戻しを受けることができる
この例を見ると、「公的医療保険があれば高額な医療費は支払わなくて済みそうだから、民間の医療保険も必要ないんじゃないか」と思われるかもしれません。
しかし、実際には公的医療保険では物足りない場面は多くあります。また、過去に制度変更による自己負担額の引き上げがあったことや、先進医療など全額自己負担となる医療費の存在があることも注意が必要です。
これらをふまえて、民間医療保険の必要性について、続く内容で一緒に確認していきましょう。
民間の医療保険の必要性は?
国の保障である公的医療保障があるから、民間の生命保険には必要性を感じないというのも無理はありません。一見、国の保障だけでも医療費をカバーしているようにも思えますが、やはり国の保障だけでは不足が生じています。
この不足を補うために存在するのが、民間医療保険です。ここでは民間医療保険の必要性について、以下の4つの側面から解説します。
- 長期入院費
- 公的医療保障の対象外となる費用
- 貯蓄・資産
- 制度変更の可能性(大)
長期入院費用の負担が小さくなる
入院は短期化しているとはいえ、ガンや脳卒中を含む3大疾病等の入院は長くなります。特に60代以降の高齢者の入院はさらに長く、長期の入院の金銭的な負担はおのずと大きくなります。
そのため、長期入院の負担を軽くするために医療保険は必要と言えます。会社員の多くは、退職するとたいてい年金で暮らすことになるため、老後の備えとして終身タイプの医療保険に加入するケースもあります。
40代、50代といった働き盛りの世代は、家のローンや子供の教育費の負担が大きいタイミングです。医療保険に加入し、できるだけ治療費の負担を軽くすることが大切です。
公的医療保障の対象外となる場合に備える
公的医療保障によって、入院や手術費用の負担も軽くなりますが、保障の対象外となる費用も少なからず存在します。
日本は、国民皆保険としてみんなで助け合うことを前提としていますが、あらゆるものを公的医療保障の対象としてしまうと社会保障費がひっ迫します。社会保障を存続させるためにも一定の制限が設けられていることを理解しましょう。
公的医療保障の対象外となる費用の例として、以下のものがあります。
- 差額ベッド代
- 入院時の食事代
- 美容整形手術
- 見舞いの交通費や雑費
これらの費用に対しては、国からの保障はなく、全て自分で負担する必要があります。場合によっては非常に高額になることもあるため、医療保険に加入することによって負担を軽くすることが大切です。
貯蓄を守るため
想像してみてください。
ある日突然がんとなり、治療には先進医療技術である陽子線治療が必要となりました。治療費には約270万円かかります。これは先進医療なので、公的医療保険は使えません。
これまでコツコツと貯めてきた貯蓄が一気に減りますね。また、治療中は当然働けないので、もちろん収入も減ります。
「こんなの稀な話だろう」と考える方もいらっしゃると思いますが、ガンにかかる人は年々増えている*のが現状です。大切な貯蓄を守るという意味でも医療保険は必要です。
別記事では、医療保険に入らないで後悔したケースなどを紹介しています。ご興味のある方は、ぜひそちらもご覧になってください。
資産形成の一つとして
また、医療保険を資産形成の手段として利用する事もできます。掛け捨てタイプでなければ、保険満期にこれまで支払った分の保険料に応じた解約返戻金を受け取れます。
この性質を生かせば、老後資金の貯蓄手段として医療保険に加入することも可能です。
単に銀行に預けておくよりも、医療保障を受けながら貯金したほうがいいですよね。こういった側面からも、医療保険の必要性は高まっています。
社会保障の変化に対応する
先述のように、現在の日本は「国民皆保険制度」が導入されているため、健康保険のおかげで自己負担額は原則3割となっています。健康保険の他にも、介護保障や公的年金などの社会保障によって、私たちの暮らしは支えられています。
しかし、社会保障の内容も時代と共に変遷していきます。数十年後には社会保障が大きく変わっている可能性は十分に大きいです。高齢化が進むに日本において、このまま高齢者に対する手厚い保障が続くとは誰も思えませんよね。
その点、医療保険であれば加入時の契約内容に基づいた保障が保険期間は続くことになります。終身保険であれば一生涯、保障内容が変わりません。
変化する可能性のある社会保障に対応するため、自助努力の1つとして医療保険が必要なのです。
医療保険の必要性が高い人の4つの特徴
公的医療保障でカバーできない部分を補うためにも医療保険の必要性は高く、さまざまな世代の人が加入しています。ここでは特に医療保険の必要性が高い人の特徴を4つ解説します。
女性である
女性の方は、男性と比べて特に医療保険の必要性が高いです。なぜなら、若いうちから女性特有の疾病にかかるリスクを抱えているからです。
リスクが有るということは、医療保険を活用する機会が多いということでもあります。支払った保険料以上の保険金を受け取ることが十分に見込めるので、女性の方は医療保険に加入することをおすすめします。
女性におすすめの医療保険はなにか、つけるべき保障・特約はどんなものがあるか、など女性の医療保険に関しては、別記事にて詳しく解説してあります。なので、女性の方は、ぜひそちらの記事へとお進みください。
健康不安がある
例えばガン家系に生まれた人や、過去に入院したことがあるなど健康面に不安を感じている人は医療保険の必要性は必然的に高くなります。
持病があっても加入できる医療保険は増えていますが、保険料の割り増しや特定の部位が不担保となるような条件を承諾した上での加入となります。
将来、入院や手術を受ける可能性が高いと自覚している人は、早めに医療保険に加入しておくことをおすすめします。
貯蓄額が少ない
20代、30代の若年層は、まだまだ収入が安定せず、貯蓄額も他の世代に比べると低い傾向があります。貯蓄が少ないと、万が一のケガや病気による大きな支出をカバーすることができません。
医療保険は毎月わずかな金額で加入することができます。医療保険の保険料と、多額の医療費であれば、保険料の負担のほうが小さく済みます。
ある程度まとまった金額の貯蓄ができるまでは、万が一のときに貯蓄額を極力減らさないためにも医療保険を活用しましょう。
守るべき家族がいる
結婚や出産といったライフイベントを迎えると、医療保険の必要性も自然と高まります。家族がいると、自分に万が一のことがあった場合に金銭面での負担を強いることになりかねません。
小さな子供がいる場合は、子供が成人を迎えるまでの間だけでも医療保険を持っておくことをおすすめします。
また、「専業主婦だから保険は不要」と考えているご家族もありますが、女性や専業主婦だからといって入院や手術のリスクが低くなるわけではありません。
家族に変化があるタイミングで夫婦それぞれの医療保険を検討することが大切です。
先進医療に備えたい
先進医療は健康保険の適用から外れるため、費用は全額自己負担となります。仮にあなたが先進医療にかかった場合、その費用は数十万円から高額なものになると数百万円にもなることも。
しかし、医療保険に加入しており、先進医療特約を付けておけば先進医療にかかる費用負担0円で治療を受けることも可能です。
したがって、健康保険適用外である先進医療に備えたいのであれば医療保険に加入しておくことが必須と言えます。
先進医療特約の必要性については、別個で特別に記事を用意しているので、ご興味のある方はぜひそちらをご覧になってください。
必要性を感じてからでは遅い!?加入のタイミング
では、医療保険にはいつ加入すれば良いのでしょうか。家族ができたり、増えたタイミングは絶好のタイミングですが、それ以外にも加入のきっかけとなるタイミングがあります。
「保険に入りたい」と保険の必要性を感じたのに、健康状態が原因で加入できなかったという事態だけは避けなければなりません。
ここでは世間ではなかなか知られていない医療保険加入のタイミングを解説します。
妊娠前
子供が生まれたため保険に入りたいという方は多いものの、本来の加入のタイミングは「子供が生まれる前」ということはあまり知られていません。女性は、妊娠する前に医療保険に入っておくことが非常に大切です。
妊娠中の医療保険加入は不可能ではないものの、母子手帳のコピーを提出したりと手続きが煩雑になります。
ただでさえ体調の変化が大きい妊娠中ですから、意図せず妊娠高血圧症や妊娠糖尿病を患い、保険加入が遠のくことも想定されます。
予め医療保険に加入しておくと、帝王切開は給付対象になりますし、その他の異常分娩時にも給付金がもらえるかもしれません。
子宮がんや乳がんのリスクもある女性は入院するリスクも高く、医療保険と同時にがん保険も検討しておくと安心です。
また、赤ちゃんや幼児がいる中での保険検討は時間を確保することも難しくなるため、妊娠前に加入し、落ち着いた頃に保険を見直しましょう。
健康診断前
会社員や公務員の多くは、定期的に健康診断を受診します。その結果が芳しくなかったり、要再検査を求められるような数値であった場合は、医療保険に加入することが途端に難しくなります。
健康診断結果が出る前であれば、加入できることもあります。万が一の入院や手術に備えるためにも、積極的に医療保険を検討しておきましょう。
健康なとき
「保険に加入したい」と保険の必要性を感じるということは、何かしら体調面で不安を覚えているのかもしれません。医療保険に加入する際には、健康状態の告知が必要です。告知内容次第では、加入を断られる可能性もあります。
「健康」なときしか、保険には加入できません。「まだ保険は不要」などと加入を先送りせず、入院や手術の予定もなく、不要だと思えるほど体調が良いときに加入しておくと良いでしょう。
民間医療保険の必要性を感じたら...
ここまでの解説を読んで民間医療保険の必要性を感じたら、次はぜひ実際に医療保険を選んでみましょう。
いきなり契約する気で選ぶ必要はありませんが、自分がどんな医療保険を選ぶべきなのかを把握しておくことは非常に大切です。
次の記事では、保険のプロという立場で医療保険の正しい選び方をご紹介しています。年代別にどんな医療保険を選ぶべきなのか、できるだけわかりやすく解説してあるので、ぜひご覧になってください。
【年代別】失敗しない医療保険の選び方をプロのFPが徹底解説!
まとめ
ここまで医療保険の必要性についてお話をさせていただきました。公的保障制度は国民全員が加入しているため、それだけで保障は十分だと感じる人もいます。
しかし、公的保障だけでは補い切れない部分もあり、健康や貯蓄の不安を取り除くためには、民間医療保険の利用が必要不可欠です。
今回紹介したおすすめの医療保険などを参考に、さまざまな商品を比較しながら、自分に合う医療保険をぜひ探してみてください。